第12話
さて。レベッカに近付く方法を考えましょう。
あの子はキアノの婚約者候補ではあるけど、王族ではない。だから城に忍び込むよりも難易度は低いけど、他国っていうのがネックよね。
今の私はどこにも属さない身だし、万が一にも死んだベルが生きてたってなると面倒くさい。
他国と問題起こしてシャルに迷惑をかけるのも嫌だものね。まずは様子見かしら。
「がうっ」
「なぁに、ノヴァ」
「がう、がう!」
「なになに、何があるの」
ノヴァが袖を引っ張ってくるので、崖の奥へと進んでいった。
案内された場所には可愛らしいハンカチが落ちていた。これはこれは、分かりやすい証拠品を置いていってくれたわね。
「ノヴァ、この匂いを覚えてて」
「がう!」
なんていうか、都合のいい展開ね。
明らかに女物。私がレベッカのことを調べているところにこんなものが落ちてるとか、もう疑ってくださいって言ってるようなものじゃない。
「……なーんか、怪しいわね」
やっぱり、私の読みが合っていたのかもしれない。
この世界はベルの代わりにシャルを狙う者がいる。バッドエンドへの帳尻を合わせるための、誰かが。
「ここがバッドエンドの世界なんて、最悪ね」
ハンカチを胸ポケットに仕舞い、今日は一旦家に帰ることにした。
家に帰宅し、私はベッドへ倒れ込んだ。
ここ最近はシャルを見張ることが多いから、魔力を常に使ってて余計に疲れちゃう。
それにしても、一難去ってまた一難とはこのことね。
仮にあのハンカチがレベッカの持ち物だったとして、あれを私に拾わせようとした者がいるはず。
そもそも、岩が落とされたのは二人が出逢う前よ。さすがにレベッカが嫉妬するのは早すぎる。誰かがレベッカに入れ知恵をして、狙わせたとしか思えない。
なんかこう、この国に来る姫が王子のことを拐かすつもりですよ、みたいな。
気の短いレベッカだし、そんな風に言われたら即行動に出るかもしれない。
ゲーム内のレベッカもそんな感じだったものね。ベルに適当なこと言われて、それを鵜呑みにしてシャルに嫉妬して犯罪スレスレの嫌がらせをしていた。
言ってしまえば、素直な子なのよ。だから人の言うことを信じてしまう。
でもどうしたらいいのかしら。
ノヴァの鼻を頼りに、レベッカがなにかする前に先回りして阻止するしかないのかな。
でも私が言って聞いてくれるかしら。レベッカって一度こうだと信じたものをド直球に信用してしまうキャラだったし、難しいのかな。
「……これしかないわね」
最短でキアノルートに進めようと思ったけど仕方ない。ここはレベッカにキアノを攻略させるしかないわね。
大丈夫。シャルには他にも素敵な王子様がいるわ。ゲーム的にあと四人もいるんだから、どっかのルートに向かえばいいのよ。
てゆうか、私が攻略対象にならなければいいわ。
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