【第零話】誰もが忘れていく、黒いプロムナード。
ーー何がなんだかわからない。
黒霧から脱出した男、膳所凛太郎はいきなり目の前に現れた屈強な男達ーー否。いきなり男達の前に転移し、走っていたため男達にぶつかり反動で倒れこんだ。こんな事、あるはずがない。尻もちのダメージを軽減しようと、反射的に出した両手の掌が、ジンジンと熱い痛みを覚えた。「…… ア゛!?」と、あきらかにキレた声を発しながら振り返る男達。男達の顔は、ホラーゲームのクリーチャーみたいにゴロゴロと眼球が顔面に敷き詰められていた。あまりにも非現実的な出来事なのに、更に現実味が遠ざかる。
「…… !ヒィ!」
咄嗟に出た声は、かなり裏返ってしまった。ーー落ち着け、俺、落ち着くんだ。
一度大きな深呼吸をし、怖いので、というか気持ち悪いので男達から目をそらす。状況を把握しようと辺りをキョロキョロと見渡す。今俺がいる場所は何処かの路地裏だ。壁には、訳のわからないグラフィッティが描いてあり、そこを縫うように太めのパイプが張り巡らされている。左右の建物のでかさから、何かのビルなのではないのかと推測した。
「なァ、兄ちゃん。俺の背中がい痛ぇんだが…… 、死んで償えや。」
鬼の形相で俺を睨む。ぶちゃけますと、かなり怖い。早くお家でぬくぬくしたい。今日だけでも早く帰りたい。
すると、男達は腰につけていた鉄パイプや、金属バット、ベコベコのバリトンサックス、を持って今度は勢員が睨んできた。
ーーバリトンサックス!?武器じゃないだろそれ!
「やっちまえ!!」
金属バットを持った男が叫ぶ。
ーーヤバい、こんなのくらったら一溜りもないぞ!死ぬ!
「気づくのが遅いぞ、青年!」
刹那、目の前に現れた黒い影の正体は、電話ボックスを背負った少女だった。考えが追いつかないくらいの速さで、少女のパーカーのポケットから、複数体の藁人形と、五寸釘を出して、左手に持つ藁人形めがけて五寸釘を打った。
その時、グシャリ、と、音をたてながら周りにいた男達は心臓部が破裂し、血飛沫をあげながらバタっと、倒れた。
ーー何が…… 、どうなっているんだ!?
「魔法を使っただけさ。ちょっとしたね。」
頬に付着した血液を手で拭いながら言う。
「お前、心が読めるのか?」
呼吸が荒くなる。俺も殺されてしまうのではないだろうか。
「読めるよ、心。あと殺さないから、君は依頼されてないし。」
血でベトベトになった白い紙マスクを、新しい紙マスクに交換する。
ーー殺し屋か何かか?…… 物騒だな。
「大体あってる。でもこの事は内緒ね。言ったら君も殺すよ。」
はにかんで笑いながら、両手で握ったカランビットナイフを此方に向けてきた。
ーー危ないです。怖いです。やめてくださいお願いします。
ふぅ…… 、とため息をつきながらナイフを腰にしまう。
「それはそうと、なぜ喋らん。なんだ?遊んでいるのか?」
ーーうん。珍しいからな。
「私の魔法で遊ぶな!」
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