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異世界98日目 7月7日(日) ③突進、突進、また突進!


 改めてルーミィに溺れてしまった理由を聞いてみた所、どうやら誤って髪留めを川に落としてしまったらしく、拾う際に足を滑らせてしまい深い場所に滑り込んでしまったとの事だった。


 助ける時には気付かなかったけど意識が無くなってもずっと離さずに握っていたのか……今もずっと髪留めを握りしめてるし。そんなに気に入ってくれているのか……。


「大事にしてくれてありがとうございます。その髪留め」


 ここで怒っても仕方無い。最優先するのは心のケアだ。大分落ち着いてきてはいるが、まだ小刻みに震えており、時折嗚咽も漏らしている。


「かず――」


 また飛び込むモーションになってるから! だめぇぇ、おっさんまたふっ飛ばされて気を失っちゃうからぁ!


「はい、ストップだ」


「ぐふぉっ!?」


 ナイスキャッチですイリアさん! タイミング良くラッシュガードの襟を持ち突進を阻止してくれた。ってルーミィ、一瞬首締まってませんでしたか?


「はは、あまり揺さぶらないで下さいね。まだふらふらしまうので」


「けほ、けほ……ごめんなさい……」


「もう謝らなくてもいいですからね。それにしても中に着ている水着も可愛らしいですね、とってもお似合いですよ」




 あれ? 確かルーミィと喋っていたような気がするんだけど……空が見えるな……また寝転がってる? おっかしいなぁ……。


 再びゆっくりと体を起こすととルーミィは正座させられており、イリアさんに怒られていた。


「分かったか!? もう絶対にするなよ! 命に関わってくるんだからな!?」


「は、はい……ごめんなさい」


 あ、そうだった。水着を誉めたら両手で思いっきり突き飛ばされたんだった。おっさん、何回意識飛ばしてるんだか……。


「あ、あのお……」


「お、気付いたか。カズヤ、もうそこでじっとしてろ。ほら、ルーミィ、片付けるぞ」


 そう言って二人はBBQの後片付けをし始めた。そうそう、楽しんだ後はちゃんとお片付けしないとね。でもなんか申し訳無いな、おっさんが寝っ転がって女性が片付けしてるなんて……。


「すみません、イリアさん。なんか迷惑ばかりかけてしまって。この埋め合わせは必ず致しますので」


「気にするなって。それよりもその傷、そこそこ深い上に広く切れているんだ。応急処置はしてあるが、ちゃんと手当をしないとダメだぞ」


 確かに。手に縛り付けられたタオルは血で真っ赤に染まっており、傷の深さが伺える。


「片付けが終わったらあたしも保育園に行って手当をしてやるよ。この前大量に救急用品買ってただろ? あれで何とかなる」


 そういえばサラちゃん用に切り傷、擦り傷、火傷、打ち身などに使うものを全種類揃えたんだっけ。その中に包帯もあった筈。まさか最初に使うのが俺とは……スライム経口補水液同様、俺って運が無いのかな……。


「ありがとうございます。でも神力使って治しますよ? 多分怪我は治せる筈なので」


 すぐ傍に置いてあった荷物に手を伸ばし、神ブックを掴もうとした所、またルーミィが泣きそうな顔をしながら俺の手から神ブックを取り上げてきた。


「私のせいでしちゃった怪我なのに、和也が頑張って貯めたポイント使わせる訳にはいかないよ! そんなのダメ!」


「で、でもこの手では保育園の仕事も料理も出来ませんし……」


「保育園は私、頑張るから! り、料理も作るから!」


 いや、マジでやめて欲しい。お気持ちは嬉しいが絶対的に後者を。園児達の命が危うくなる。


「やっぱりルーミィは強いな……ほんと強敵だよ……」


 イリアさんがルーミィには聞こえない程の小さな声で俺に囁いて来た。まあ、無駄な神ポイントを使わないようにさせてくれているのは助かるし、その為になら自分への労力を厭わない点は本当に感心するレベルである。


「それなら早くカズヤの手当をしないとな。さあ、早く保育園に行くよ」


 うう……でもですねイリアさんはルーミィの料理の実力を知らないからですよ。本当は神力で治した方がいいんですけども……下手したら死人が出ますよ。


「大丈夫か? 馬車まで抱いて行こうか?」


 イリアさんからの気を利かせてくれたお申し出を受けたんのだが、丁重にお断りさせて頂いた。おっさんがお姫様抱っこされるのは恥ずかしいを通り越して屈辱の領域に入りますので。頑張って歩きます……。



≪≪≪



 川から保育園まではそれほど距離はない。イリアさんの馬車の荷台にルーミィと一緒に乗り、保育園に向かっているのだが……目の前のルーミィの状態が問題だ。すけすけ状態なのである。


 何度見ても尊い。しかし……。


「あ、あんまり水着を見ないで……欲しい……」


 両手で水着のブラとパンツを懸命に隠している。ルーミィは恥ずかしがり屋さんなのであまり見ないようにしてあげないといけない。


「す、すみません……ですがそのラッシュガードと水着、私の血で汚れてしまいましたね。多分、洗っても落ちないですね」


 ラッシュガードは至る所に血が付着している。ここからでは見えないが、お尻も触ったからパンツにも付いている筈だ。おっさんの血を浴びて紅白の女神様となってしまってる。ちなみに赤の女神様も血だらけだ。あちらは更にパワーアップして真紅の女神様と化している。


「ううん、そんなの全然構わないよ。だって私のせいだから……」


「そんなに気負わないで下さい。そしてこれはその髪留めを大切にしてくれているお礼です。怒らないで下さいね?」


「えっ? な、何をするつも――」


 そっと左手で手もとの神ブックに触れ、イメージした。


 ――真っ白なラッシュガードと水着に戻れ。


 神力が発動しルーミィのラッシュガードと水着が白い光に包まれると汚れが落ち、透ける前の元の白色に戻った。


 今回イメージしたのはクリーニングだ。これなら神ポイントの消費は少なくて済む筈である。


「ダ、ダメだよ! こんな事に神ポイント使ったら!」


「怒らないで下さいって言ったでしょ? やっぱり透けた状態では恥ずかしいでしょうし、何よりそのラッシュガードと水着は似合ってますので。捨てるのは忍びないですからね」


「ううぅ、でも……あ、ありがとう。この水着も大事にするね……」


 はい、大事にして下さいね。夏はまだ始まったばかりなのですから。


「ほ~、随分と優しいじゃないか……ここから歩いてくれても構わないんだぞ?」


 場所の運転席から鋭利な視線を向けられた。あの目、完全に人を殺している目だ。そんなイリアさんに対して二人揃って本気で謝った……返り血がより凄味を出している真紅の女神様、いや鬼神様に。


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