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異世界98日目 7月7日(日) ①赤の女神と白の女神


 保育園と村のちょうど中間地点辺りには綺麗に澄んだ川が流れており、川底が見え、小さな魚が群れて泳いでいる姿が映った。今日はここにBBQと水遊びに来ている。いつも通る道ではあるが、こうまじまじと眺めるのは初めてかも知れない。

 何故かこの川には夜に来る事が多いので、明るい内から何かをするのは新鮮ではあるな。


「う~ん! いい天気だ! 絶好のBBQ日和だな」


「和也~! お肉焼いてぇ~」


 川を前にして精一杯伸びをしてるイリアさんに、目を輝かせていきなりお食事をご所望するルーミィ。女神様、もう少し景色を堪能しません? 風情もへったくれもありませんね。


「はいはい、分りました。すぐに準備致しますね」


 食材の方はイリアさんが手配してくれており、確認させて頂いたところ、十分な量があった。ふふ、腕が鳴るじゃないか。


 この前も牧場で体験したがやっぱり外で料理を作るのは気持ちがいい。もちろん衛生面は普段以上に気を付けておく必要はあるが。


 でもこれは保育園の行事にも組み込めそうだ。よ~し、園に帰ったらプランを練って……いや、待てよ、先にこっちをしておくべきか……。いやあ、今日はアイデアが良く出てくる! この開放感がそうさせてくれるのだろう。


「カズヤ、何をニヤニヤしてるんだ? も、もしかして昨日の事を思い出し――」


「だぁぁぁあ!? 違いますぅ!」


 そこまでです。それ以上喋ると俺の命が危ない。楽しいBBQが出来無くなりますよ?


「へえぇ~。何を思い出していたのかなぁ~?」


 よし、ルーミィ、とりあえず包丁を置こうか? そしてなんですか、その会心の笑顔は。行動と表情が完全に乖離してますよ?


「保育園での新しい行事を思い付いただけです、お二人とも落ち着いて下さい!」


 全く、命がいくつあっても足りない。おっさんは楽しく料理したいだけなのに……。


「なあんだ、そうなのか。さあてルーミィ、早速水着になるぞ!」


「え、ま、まだこのままでいいんじゃないですか? ほ、ほら自然を満喫して深呼吸なんかを楽しみましょう!」


 あの、女神様? さっきと言ってる事が違いません? 大自然の空気と炭と肉の焼ける匂いを比べて後者に軍配を上げていた筈ですが?


「ダメだ。約束したろう? それとも園に帰るかい? あたしは構わないよ? カズヤと二人っきりで……ふふっ♪」


「ダ、ダメですっ! わ、分かりましたよぉ……」


 イリアさんがルーミィの扱いに慣れてきている……もともと駆け引きに長けた人だしな。残念だがこれが大人の世界なのだ。これも勉強だぞ、ルーミィ。


 二人が着替えている間に料理の下ごしらえを済ませておこう。お肉に野菜と……お、海鮮なんかもあるじゃないか。これはパエリアにでもしてみようかな?


 それにしても綺麗な川だ。この辺りには特殊なスライムとかは居ないのかな? 普通のスライムはその辺りに居るけど……。

 下ごしらえを終わらしたら探してみようかな。よし、それじゃあさっさとやっちゃいますかね!



≪≪≪



「カズヤ~、どうだ~!?」


 テンポ良く包丁を下ろし、野菜の下ごしらえをしているとイリアさんから声がかかった。さて一体どんな水着に――


 俺の前で水着を披露してくれたイリアさんは、くるりと一回転して全貌を見せてくれた。あまりの衝動につい包丁を持つ手が疎かになってしまい、左手をかすめてしまい出血してしまった。


「いいっっ!? イ、イリアさん!? それはちょっと大胆過ぎやしませんか!?」


 おうっ……イリアさんの水着に驚いた衝撃で手を切っちゃった。幸い浅いから大丈夫だけど……。


「おい、カズヤ! 血が出てるぞ!」


「だ、大丈夫です。ちょっと止血しておきますね……」


 しかし……な、なんて水着なんだ。赤色の超ビキニだ、布面積が極限まで削がれている。胸なんてもうこぼれ落そうになってるし、お尻もほぼ出てるじゃないですか。それ、Tバックってやつですか? もはや歩く凶器ですよ?


「おいおい、大丈夫か? あたしがやってやるよ」


 これまた当然ではあるがこの世界に絆創膏などという便利グッズは無い。清潔な布を当てて包帯で結ぶのが関の山である。神力で出しても良いのだけど折角イリアさんが処置してくれるというのでここはお言葉に甘えようと思うのだが……。


 至近距離での傷の手当……眼前に迫るお胸が凄いのなんの。屈まれると破壊力が更に三割増しになってますよ? イリアさんの容姿は女神様になれるクラスの美女ですね。赤の女神様と名付けさせてもらいます。


「あ、ありがとうございます。すみません、私の不注意で――」


「二人で何をしているのかなぁ……?」


 ルーミィの声を潜めた怒声に振り向いたのだが……おお……眩しい、眩し過ぎる。思わず手を合わせたくなる程の光景だ。もう後光とか出ててもおかしく無い。


 少々、いやかなりご立腹の様子だが、同じく至近距離でのルーミィの水着姿にもうおっさんはパンチドランカー状態です。


 長めの白いラッシュガードに束ねた髪、スレンダーなボディに対し、真っ赤な超ビキニを隠す事無く晒し出された豊満なボディ。まさに対極に位置する関係であり、それぞれの頂点に君臨するお方達だ。


「ちょ、ちょっと手を切ってしまいまして。イリアさんに手当をして貰ってたんですよ」


 ルーミィの方に向け、包帯を見せて指を動かす動作をしてみた。決してイリアさんの水着に見とれてやってしまったとは言ってはいけない。


「だ、大丈夫なの!?」


 駆け寄って俺の手を覗き込んで心配してくれた。はい、大丈夫ですよ、白の女神様。ほんとお美しゅうございますな。


「少し切っただけですから。さあ、準備は出来てますので早速始めるとしましょう!」




 炭の匂いと肉の焼ける匂いが混ざり、BBQ独特の匂いが辺りを漂う。肉や野菜の焼ける音も合わさり最高のシチュエーションが完成している。この匂いと音に食欲を掻き立てられない人は少ないと思う。


「はい、出来ましたよ~! どんどん食べて下さいね!」


「おいひい~!」


「やっぱりBBQはいいな! 開放感に満ち溢れる!」


 白と赤の女神様もご満悦だ。ただそこの白の女神様、口の中に頬張り過ぎではないでしょうか。越冬前のリス状態ですよ? しっかり噛んでね?

 それに赤の女神様はそれ以上解放しないで下さい。もはや裸になっちゃいますので。


「おにぎりもありますので合わせてどうぞ。今からパエリアも作りますので」


 お肉を口に入れ、おにぎりを食べながら調理台に向かう。やっぱBBQのお肉&おにぎりは最高だ! お米持って来て良かった~!


「酒も進むなあ!」


 赤の女神様、ほどほどでお願いしますよ? 貴女が酔うと誰も止めれませんからね?


「ヒック……このおしゃけも美味しい~」


 ……白の女神様は出来れば飲まない方が良いのでは。酔い潰れても知りませんよ?


「二人ともお酒はほどほどにして下さいよ。特にルーミィは」


 楽しそうに食事を楽しむ二人を眺めながら料理をしているのだが、目のやり場に大変困る。


 イリアさんに関しては視界に入った時点でアウトだ。ルーミィは辛うじて大丈夫だが唯一露出している綺麗な脚につい目が行ってしまう。しかしイリアさん、凄いな……今まで見てきたグラビアアイドルなんか目じゃないもんな。


「和也ぁ! イリアしゃん見過ぎ~だよぉ!?」


「なんだ? それならルーミィも見せてやれよ。うりうり~!」


「ちょ、ラメれすぅ! イリアしゃん、引っ張らないでぇ~!」


 どうやら俺は今、天国という名の調理場に居るようだ……おっと、お肉焦げちゃう、焦げちゃう!



≪≪≪



 女性陣はひとしきりBBQを堪能したようであり、お腹も膨れたようだ。ちなみにおっさんはコンロの中の炭をひと山にまとめ、ちびちび食べているところである。いつでも調理人の食事は最後になるのはお約束である。

 だがこれも悪く無い。だって川の方で涼んでいる二人を眺めながらのBBQである。最高のシチュだな。


「折角川が目の前にあるんだ、カズヤもちょっと入らないか? 気持ちいいぞ?」


 イリアさんは足首まで浸かり、川の水を蹴って水しぶきを立てている。確かに昼も過ぎ、気温も高くなってきて暑くなってきた上、ずっと隅の前で肉焼き係りだったので汗だくである。


 っていうか俺はずっと料理していたからまだ水着じゃないんですけど。まだスライムも探してないし……。


「はあぁ~。冷たくて気持ちいい~♪ もうちょっと奥の方に行ってみる~!」


 ルーミィも足首だけ水に付けているんだけど……なんかサラちゃんみたいになってるよ?


「ルーミィ~! 川は急激に深くなる場所があるから気を付けて下さいね! 特に緑色が濃くなってる場所には近づかないように!」


 声を張り、川辺のルーミィに声をかけておいた。神界って川とかも無さそうだし知識として無いだろうからな。注意しておかないと。


「は~い!」


 返事が返って来た。とりあえずこれで大丈夫だろう。




「ふう、気持ち良かったぜ!」


 相変わらずまったり飲み喰いしていたらしばらくしてイリアさんが帰って来た。髪は水に濡れオールバックとなっており、全身に水滴が付いている、潜ってきたんですね。なんかさっぱりして気持ちよさそうですね。


 水も滴るいい女……だな、只でさえ色っぽいのに更に艶やかになっちゃてますね。マンガの世界だともはや鼻血ブーものですよ。


「もうメシは食い終わったか? 火の番はあたしが代わってやるから川に入ってきなよ。えっと、タオルはっと」


 確かに炭の番や料理をしたりで汗だくである。おっさん、今、超汗臭いので近づかないでね?


「そうですね、私も少し入るとしますかね」 


 そういえばルーミィは何処に行ったのだろう。さっきまでその辺りに居たはずなんだけど。とりあえず水着に着替え――


 川の方から視界を外そうとした瞬間、下流の方で白い布と手が見えて沈んだのが見えた……。


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