異世界87日目 6月26日(水) ②ドジっ娘サラちゃん
「ご飯美味しい~! カズヤ先生、魔法も上手だけどご飯作るのも上手~!」
サラちゃんから保育園で食べる初めての昼食にお褒めの言葉を頂いた。無邪気に食べるその姿は他の園児達同様に非常に愛らしいものを感じる。
「……いつも美味しいご飯作ってくれる」
どうもありがとうございます。ご贔屓にして頂けているようでなによりでございます。やっぱり美味しいと言ってもらえると心が弾む。特に純粋な子供からだとその感動は際立つな。
「今度はお野菜いっぱいにする~」
アメリアちゃんは好き嫌いなく食べてくれ、お残しもしない。ソフィちゃんよりも食欲に関してはあるほうだと思う。まあ、いつも走り回ってるから多めに食べてもカロリーは消費しているだろうから問題は無いだろう。
「私は~全部乗せ~! お肉を多めに……でもそれじゃあ大きくなり過ぎて食べにくくなっちゃうし……でももっと食べたいし、ううぅ、悩むぅ!」
女神様……貴女は食べ過ぎです。確かに園児達以上に愛らしい表情ではありますし、保育には体力を使いますが、それを差し引いても男性の食べる量以上に摂取してますからね?
しかしアメリアちゃん一人の時と比べれば、賑やかで楽しい昼食タイムだ。やっと保育園らしくなってきたな。
ちなみに今日のメニューはミニハンバーガーを作ってみた。だが普通に食べるだけではなく、それぞれが好きにトッピング出来るように材料を並べ、好きなハンバーガーを作れるようにしてみた。
自分で作るという事で子供心をくすぐるメニューではないかと思う。
「そうだ! バンズを三枚にすれば特大ハンバーガーになるし、お肉も野菜もいっぱい楽しめる!」
そしてルーミィ、貴女は少し遠慮して下さい。しかもその発想、元の世界で有名なハンバーガーチェーンの看板商品と一緒ですから。
≪≪≪
「……よしと。サラちゃんこれはお便り帳と言ってお家に帰ったらお父様とお母様に見せてね」
「はあ~い!」
保育終了時間も近くなってきたのでサラちゃんのお便り帳に今日の出来事を記載しておいた。すでに口頭ではお話してあるが、今日渡した備品について記載してある、ルーミィ特製の保育用品説明書も添えている。これがまた結構便利だったりする。
尚、アメリアちゃんとソフィちゃんのお便り帳には朝一番で全力投球してあるので問題無い……筈だ。
「みんな~気を付けてね~」
ルーミィが園児達を手を振って見送りるとアメリアちゃん、ソフィちゃんがゲートに入り帰宅して行く中、サラちゃんが何かを思い出したかのよう振り返って来た。
「あ、そうだ! お父様から渡してって言われてたの忘れてたぁ! カズヤ先生~!」
拙い足取りで180℃回転してからのダッシュ……走らなくていいから! 荷物も持ってるしそんな状態じゃ絶対こけるのが目に見えて――
「はい、どうぞ――」
俺の一歩手前でまた見えない何かにつまずいたのだろう、そのままダイブする形で突っ込んで来た。
「ちょっ!? 危なっ!」
体勢を一気に落として座り込むような態勢を取り、なんとかキャッチするものの、ドジっ娘エルフちゃんの体当たりが想像以上に勢いがあった為、そのまま後ろに倒れ込んでしまった。
結構痛いんですけど? なにこの子、マジで危ないよ?
「ってて……サラちゃん大丈夫!?」
「うん! 痛く無かったよ! カズヤ先生、ありがとう~、はいどうぞ!」
俺の上に乗ったまま袋を渡してくれた。どうやら中身は十万Gのようだ。流石、世界記憶様、全てお見通しのようだ。
「和也先生? 早く起き上がって下さい」
ルーミィの怒気を感じる。よく見ればサラちゃんを抱きしめるような姿勢になっており、当然の事ながら密着状態である。
そんなに睨まなくても……本人は多分笑顔のつもりなのでしょうけど、全然笑えてませんよ? サラちゃんも怖がるからやめた方がいいと思います。
「よ、よいっしょっと! サラちゃん気を付けてね。走ると危ないからね。急がなくてもいいからね」
「は~い! じゃあね~」
サラちゃんはかなりのドジっ娘であるが、アメリアちゃんと同じくムードメーカーのような存在だ。あの子一人で保育園が更に明るくなったな。
しかし、救急箱の充実を図らねば。もはや専用にしてもいいかも知れない。サラちゃんはお世話になる事が多くなりそうだ……。
≪≪≪
夕食も食べ終わり、お風呂に入りさっぱりして今日も恒例の神ポイントのチェックを行うとしよう。さて、今日はサラちゃんが入園したのでポイントの変動がある筈だ。早速確認してみよう。
――神ポイント――
・前日までのポイント 2370ポイント
・日常保育3人 6ポイント
・園児入園 500ポイント
・神力使用
内訳:服一式 -100ポイント
レインコート -30ポイント
麦わら帽子 -10ポイント
・現在のポイント 2736ポイント
よし、増えてる増えてる。神ポイントを増やす為の手段としては、神力を使用する場合としない場合の二つだな。
神力を使用すれば任意の初回ボーナスを狙いやすく、手間もかからない反面、神力使用のコストがかかるので得られるポイントはどうしても少なくなってしまう。
神力を使用しないのであれば、サマーフェスや保育参観などの行事に取り込む必要がある。これはコストがかからない反面、手間がかかる。
初回ボーナスは一度切りのものだ。とは言うもののまだまだデータが足りない。コストと手間、両方試しながらどれ程の差が出るか検証してみよう。期間が有限である事から場合によってはじゃんじゃん神力を使って行った方が効率が良いかも知れない。
「どほ? 神フォイントのふぁまりふあいふぁ?」
ルーミィさんはアイスを幸せそうな顔して食べている。でも食べながら喋るのはお行儀が悪いですよ? 何より何を言ってるのか分からないし。
それよりもアイスの消費量が激しい。出荷に支障をきたすほどまでに……。
「ルーミィ、それ、三個めですよね?」
「ち、ちがうもん!」
ほう、嘘を申しますか、この女神様は。すでに二個食べている姿を俺は目撃しているんですよ。この目でしっかりとね!
「さ、三個じゃないもん……四個目だもん!」
あ……そうですか。それ、お腹壊しますよ……。
「これからアイスは一日一個にして下さい。さもなければ今後は一切食べさせません」
スプーンが床に落ち、金属音が鳴り響いた。幾度か音を立てて鳴り止んだ時にはルーミィの表情は絶望にさいなまれていた。まるでこの世の終わりに直面したかのような形相だ。
そんな顔しなくても……どこまで食いしん坊なんだ……。
「そ、そんなの……酷いよ! どうして、どうしてなの!? そこまで……そこまでしなくてもいいじゃない! こんなの間違ってるよ!」
「間違っているのはルーミィです。冷たいもの取り過ぎはお腹を壊します。だから一日一個です。これはルールにしますからね。しっかり守って下さい」
間髪入れずに冷静にツッコんであげた。途端床に崩れ落ち、そのまま頭まで地面に付けて嗚咽を漏らし出した。
あのね……貴女は女神様であり、先生なんですよ? 園児達の前でそんなこと絶対にしないで下さいね……どちらが園児か分からなくなりますから。




