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異世界83日目 6月22日(土) ①サマーフェス ~すんなり出発は出来ない~


 園の外に出るとじりじりと照りつける日差しを感じる。まだ朝の早い時間であるが中々の日差しであり、今日は一段と暑くなる事が予想される。

 どうやら夏がやって来たようだ、そして……。


 絶好のサマーフェス日和だ!


 おっと、浮かれている場合では無いな、朝でこれだけの気温と日差しは体調にも気を付けないといけない。熱中症にならないよう、十分な水分補給を心がけなければ。

 園児達には特に気を払う必要があるな。子供は沢山汗をかくから目を離せない。


 ちなみに今日はさくら保育園始まって以来の休日保育としている。サマーフェスの開催日が土曜日だからこうしないと園児達に参加して貰えない。もちろん親御さんにも了承済みだ。


 材料や仕込んだ食材などはアレクが昨日の内に全て運んでくれてるおり、手ぶらで村へと向かえる。園児達が登園次第、イベント広場に向かう予定ではあるのだが、今日は長時間屋外に居る事になるもんな……日差し対策しておかないとな。

 よし、アレを用意しておくか。


 ホルスターから神ブックを取り出して左手に持ち構え、半身になり右手を開き構えて目を閉じた。


 神力を使用するのにポーズを取る必要は無く、別に目を閉じなくてもいい。集中力を高める為にその動作を取ってはいるが、その気になればあくびしながらでも神力は使える。

 ただイメージしてトリガーを引けば発動してくれる優れ物だ。


 神力も何度か使い、勝手も分かってきたので新しいパターンで発動させようと思っている。


 いつもは地面に向かって神力使っており、拾う動作が発生してしまっている。なので今回は自分の手の上に出すイメージを追加してみようと思う。


 後、おっさんだけどもちょっと格好付けてみたい気持ちになったのもある。ほら、折角特殊な力が使えるようになった訳だし……お、男の子ってそんなものだし。



 ――サイズは園児用と大人用の二種で園児二名分、大人二名分だ。仕様は一つは普通でもう三つは……よし右手に具現化させる!


 イメージが完了し、具現化のトリガーを引くと白い光が構えた右手から現れ、揺らめきながら大きく発光して徐々に形を成型していった。

 

 おおっ!! 手から溢れる白い光がなんか恰好いいぞ!? 魔法使ってる感がパネぇ!


 興奮冷めやらぬまま光が消えると、知らずの内に右手には『麦わら帽子』を掴んでいた。実験は成功だ! 

 夏の日差し除けと言えばやはり麦わら帽子である。ちなみに麦わら帽子は、一個はどこにでもある普通の麦わら帽子であるが、残りの三個はレインコートのネコミミフードのコンセプトをそのまま麦わら帽子に使ってみた。

 つまり、ネコミミ麦わら帽子である。この前のルーミィさんの物欲しそうな顔が尾を引いていたので今回は用意してあげることにした。


 ……うん、我ながら良い出来だ。ちょ、ちょっとかぶらせて貰おっかな? えっと、鏡はと。うんダメだ。おっさんがかぶっていいものじゃない。見れたものじゃないな。全く酷い……にゃん♪


「おあひょう~……」


「ぶひぃぃ!?」


 背後から気の抜けた声が聞こえ、思わずネコさんからブタさんの泣き声に変化してしまったが、そんな事を気にする余裕など無い。マッハで反転し、ルーミィさんの死角になるように麦わら帽子をマッハで背に隠した。


「どうしたのぉ、変な声出してぇ……ふあぁぁ……ねむぅ……」


 危うくネコミミ麦わら帽子をかぶったおっさんがネコポーズしてる所を見られる所だった。人生にピリオドを打つ寸前だったな……今のは。

 とりあえず、カニ歩きで麦わら帽子をソファーに置いてと……。


 ふぅ……危ないところであった。しかし、何ですか? そのあくびとだらけた挨拶は。さては興奮して寝れませんでしたね? このお子様女神様め。


「おはようございます、さあ早く支度して――」


 ネコポーズと麦わら帽子を隠すのに必死だった為、気付かなかったが、大変な状況を目の当たりにした為、放った言葉が途中で止まった。

 

 最近めっきり暑くなってきたので服装も薄着になってきている。当然パジャマもだ。寝ぼけて気付いていないのだろう。はだけるというより、ボタンが外れてもはや羽織ってるような状況になってる……。とりあえずブラと控えめな谷間 は丸見えだ。

 ブラカラーは安定のピンクですか……。


 ルーミィさんは俺の慌てた様子と目線の先を確認した瞬間、顔を真っ赤にしながら悲鳴と共に一気に距離を詰め、容赦の無いフルスイングの平手打ちを放って来た。


 RPG風に言うなれば会心の一撃だった。頬に強烈な痛みを感じながら足は地を離れ、ラグの方へと吹っ飛んだ。


 これって俺が悪いの? おかしく無いですか……やっぱ理不尽の神だわ……。



≪≪≪



「かずやせんせ~、またこけたの?」


「……足腰の鍛錬が必要」


 この世界では貴重な資源であるティッシュを鼻に詰めた俺の顔を見ての園児達の感想である。一応この世界にも紙はあるのだが、いかんせん……硬い。とはいっても消耗品なのでいつかは在庫が切れる。

 幸いトイレはウォシュレットなので少々質の悪い紙でも問題は無い。ほんと現代設備に感謝である。


 ちなみに片鼻にティッシュを詰めた間抜けなおっさんの姿だが、どうやら床に倒れた時の打ち所が悪かったのか、それともあの一撃が強かったのかは分からないが、起き上った時には鼻血が出てしまっていたのだ。


 そんな流血している俺を見てルーミィさんも焦って駆け寄って来たのだが、今度は至近距離で可愛らしい下着&ほぼ無い谷間を拝む事になり、一瞬時間が止まった後、再度突き飛ばされて後頭部を強打し、更に鼻血を床に撒き散らしたのは悲しい事件だ。


 流石は女神様である、二回攻撃がデフォなんだろう。


 ルーミィさんには平謝りされたのだが気にしていないと伝えてある。むしろ感謝だ。一緒に住んでいればそんなハプニングもあるさ。


「はは、そうなんだよ。二人といっぱい遊んで鍛えなくちゃね」


 だが園児達に事の真相をぼやくほど野暮では無い。隣でしゅんとなっているルーミィさんが超可愛かったりするし。


「さて、今から村に行くけど今日はとっても暑いからね、これをかぶっていこうね」


 麦わら帽子を二人に渡すと大変喜んでいる様子で、にゃあにゃあ言いながらじゃれあっている。やはり夏には麦わら帽子が良く似合う。天使夏ver(バージョン)の完成だ。


 その様子をまたもや羨ましそうに眺めているルーミィさんだがご安心を。今回はちゃんと用意してますから。


「はい、ルーミィ先生にもありますよ。どうぞ」


「えっ!? やったぁ! ありがとう~!」


 よっぽど嬉しかったのであろう、園児と変わらぬテンションで喜んでいる。


 やはりルーミィさんも良く似合う。普通の麦わら帽子だったら清楚な感じが出るだろうが、いかんせんネコミミだからなぁ……綺麗というより可愛い路線に振ってる感が否めない。

 ま、似合う時点でそんなものは関係無いけどね。俺は絶望的だったし。なにはともあれ女神様夏ver(バージョン)も同時降臨されましたね。


 夏天使二人と夏女神、そしてただの夏のおっさんは和気あいあいと園を後にしたのだが、この素敵な三人に囲まれてると俺、場違い感が半端無いな……。


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