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異世界23日目 4月23日(火) ②子ドラゴン入園!


「……父上と母上の間」


 園長室のソファーに腰掛けて貰ったドラゴン一家さんにお茶を出している時に子ドラゴンちゃんが二人の親御さんの間にもそもそと割り込んでいる姿が目に映った。

 そうか、この子はご両親を父上、母上と呼んでいるのか。それにしても随分と照れ屋さんのようだ。


 しかし流石はレッドドラゴンの人化と言うべきであろうか。髪の毛も赤く、瞳の色も赤い。でも父上殿の瞳は特に深い色をしている。深紅とはこの色の事を指すのだろうな。

 父上は完全に王者の風格を放っているし、母上も口調は軽いものの気品漂う優雅さがある。


 親御さんの間に座って落ち着いた子ドラゴンちゃんも類に漏れず赤い髪と瞳の風貌である。ただ、この子は父上譲りの深く紅い色をしているので父上似だな。


 アメリアちゃんの方はさっきの動揺も取れたのか、子ドラゴンちゃんをじっと見てケモミミをひょこひょこさせてる。どうやら歳が近いので興味があるようだ。


「すみません、お待たせしました!」


 お茶を出し終わり、席に着いたと同時にルーミィさんも園長室に入って来たのだが、服装がスカートからズボンに変わっている。


 やはり……いや、この事は触れてはならない、墓まで持って行こう。


「えっと、まずはお名前とお歳を教えてくれるかな?」


 子ドラゴンちゃんに向かって話しかけてみた、何よりこの子を知るところからだ。


「……ソフィ……五歳」


 細々とした声で淡々と答えてくれた。これまたアメリアちゃんと正反対の性格の子ですな、相当恥ずかしがり屋さんでもあるようだ。


「改めまして、私はロール、そして番は古龍のバストラと申します~! 実は白銀狼さんのシルフさんから娘さんを保育園という施設に通わせてるって聞きまして! うちのソフィは同世代の子が周りに居なくてちょっと人見知り気味なんですよ。でも同年代の子も居るならきっとソフィも打ち解けられて活発になるかなと思ってまして。あ、シルフさんと私は昔からのお茶のみ友達なんですぅ~。最近は子育てで忙しくて中々会えなかったんですけどこの前久しぶりに会った時にお話を聞いたんです~」


 おお……お子さんと違って母上殿は活発ですね。マシンガントークじゃないですか。それと白銀狼ママのお知り合いでございましたか。運動場に現れた時もアメリアちゃんを知ってる話し振りでしたものね。

 と、なればこのドラゴン夫婦も神以上のモンスター様で確定ですね。えっと、ルーミィさんの様子はどんな感じだろう?


「こ、こ、こぉぉ……」


 うん、了解。白銀狼さんの時と同じ反応ですね。まるでしりとりで行き詰ったみたいになってますね。


「お子さんが毎日楽しく保育園の話をしてくれて家族の会話も弾むって聞いてまして。そうそう、先日は手作りのクッキーを持って帰って来たのでそれを秘宝にするって念話で言ってましたし!」


 よし、アメリアちゃんには口頭で伝えたが、今日のお便り帳にもしっかりと記載しておこう。アメリアちゃんの押しだけではクッキーが秘宝になってしまうかも知れない。しかし昨日の今日で情報が回るとは……しかも念話って何よ、SNSツールなんて要らないんですね、ママ友ネットワーク恐るべし。


「カズヤさんは異世界から来て神ブックの試練中とも聞いてますし、シルフさんは娘を任せられる方って太鼓判押してましたよ!」


 いやはや、シルフさんからは絶大な信用を得たものだ。まあ、最初の出会いで殺されそうになったんですけどね。


 それにしても娘さんと違い随分と活発な母上殿だ、ほんとよく喋る……。見た目は超が付くほどの美人さんだけども。尚、父上殿も同じく超男前ですけどね。

 なんだろう、神以上の実力のあるモンスター様は人化したらイケメン、イケジョになる設定でもあるんだろうか。でも父上殿、母上殿に押されて最初の登場の一言以来、全く喋っていないと思うんですけど。


「我が娘をこの保育園に入れて貰えないだろうか?」


 おお、心配してたのが通じたのか、ここでねじ込んで来ましたか! 父上殿の表情が達成感に満ち溢れているのは気のせいではない筈。


「もちろん歓迎致します。至らぬ所もありますが精一杯努めさせて頂きます!」


「良かったわね、ソフィ! お友達も出来るわよ!」


「ソフィ、いっしょにあそぼ~! アメリアはね、アメリアっていうの!」


 早速笑顔いっぱいで手を伸ばしてお誘いしている。なんという社交性! 子供に学ぶとはこの事である。俺も習わねばならないな。


「……うん、アメリア」


 そのまま二人はソファーから降りて手を繋いで園長室を出て行ってしまったので、慌ててルーミィさんが親御さんに会釈した後を追ってくれた。

 女神様、ナイスアシストです。お世話宜しくお願いいたしますね。


 アメリアちゃんもお友達が出来て嬉しそうだ。あの尻尾を見れば分かる。ルーミィさんも一緒について行ってくれたので安心出来るし、俺は園の説明をさせてもら――


「見て、あなた! ソフィが自分からお友達と!」


「うむ、このような光景が見られようとは……我が命、ここで散っても惜しくはない!」


 物騒ですよ父上殿! 園長室で命散らさないで下さい!


 心の中で盛大にツッコんだ後、改めて園の説明をさせて頂いた。尚、保育費に関してもシルフさんから伺っていた模様で前もって10万Gも用意してくれていた。


 ただ、母上殿、ロールさんからドラゴン族総出で探したと言うのが心の底から引っかかった。銀狼の皆様と同じく他のドラゴンさん達も協力したのだろう、すみません、ドラゴンの皆様……。


 また、園の備品や服などに関しては既にアメリアちゃんの時にイメージが出来ていたので、その場で神力を使い具現化させてロールさんにお渡ししておいた。すでに神ブックの試練も知っていたし神力の事も既に聞いているだろうから問題無いだろう。


 その後、アメリアちゃん用のゲートの事をお話すると隣にソフィちゃん用のゲートも設置させて欲しいと申し出られた。

 もちろん即OKである。神越えのモンスター様は、特別待遇にしておかないと事故が起きるからむしろこちらからお願いさせて頂いた。

 登園の度に上空から現われて踏み潰されては堪らないもんな……しかし何故園児が登園するだけなのに命の心配をしなければならないのだろうか……。




 一通りの保育園の内容を親御さんに説明した後も、ソフィちゃんはアメリアちゃんと楽しく遊んでいたので、ここで水を差すのも可哀そうかと思い、今日はそのまま一緒に遊んでてもらう事にした。

 俗に言う体験保育という形でお預かりする旨をお話し、ゲートも設置してくれたのでご夫妻は一足先に帰宅して頂く事にしたのだが……。


「ソフィ、母上は先に帰るからね! 先生達の言う事ちゃんと聞くのよ~、アメリアちゃんと仲良くね~! 帰る時はゲート用意したからそこから帰るのよ~! 帰ったらいっぱいお話聞かせてね~!」


「ソフィよ、しばしの別れだ。安心せよ、父はいつもお前の中に居る」


 母上殿、ほんっとよく喋りますね、そして父上殿、死に急ぎ過ぎてはいませんか? 


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