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異世界276日目 1月1日(水) ①トイレから始まる新年


 清々しい冬の朝。今日は雲一つ無い晴天であり、太陽の光が雪に反射し、まぶしいくらいに景色が輝いている。新年の始めとしては最高の天気である。


 そんな中、青白いゾンビのような顔色の美女並び美少女計三名が大掃除で塵一つ無くなった園長室に正座している。

 非常にレアな光景である。なにせ俺が立って女性陣が正座している光景なんて早々拝めるものでは無い。


 俺も昨日の強制アルコール摂取により頭が少々痛い。だが、やらねばならない。新年早々一発目のお説教を。


「三人とも……昨日の事は覚えていますか?」


 しゅんとした顔つきで下を向ている三人に問いかけた。無言は肯定、どうやら少しは意識があったようだ。


「あれは流石にやり過ぎです」


 あの後、一升瓶が空になるまで物理的に飲まされ続け、三人揃ってキッチンでぶっ倒れた。放っておく訳にいかず、意識も朦朧となりながらも三人をこたつまで運んだ。

 とてもじゃないが俺も飲まされ続けていたので、部屋まで運ぶ体力も気力も無かった。


 最後にルーミィを運び終わった所で力尽き、ソファーまで這うように向い、辿り着いたと同時に意識を飛ばすという事態になってしまった。


「す、すまない……つい日本酒の美味さに我を忘れてしまって……」


「私、カズヤ様にふしだらな事をしてしまいました……」


「ご、ごめんなさい……」


 全く、さて、これぐらいにしておくか。今日はお正月だし、十分反省してくれたようだもんな。


 三人の前に向かい合い、俺も同じく正座をしてそれぞれの顔を見た。不思議そうな顔をしているが、これは新年の挨拶を行う為だ。


「皆さん、明けましておめでとうございます。今年も一年、さくら保育園共々宜しくお願い致します」


 深く頭を下げた。その反動から少し気分が悪くなったが、これをしないと新年が始まらない。きっちりこなさせてもらおうではないか。


「あ、え、えっと! 宜しくお願い致します!?」


「こちらこそ、宜しくお願い致します!」


「こ、こうするのか!? よ、宜しく!」


 戸惑いながら三人も俺の真似をして頭を下げてくれた。よし、これでやっとお正月モードに移行出来――


「ううっ……ぅぷ!?」


 ルーミィの顔色が更に真っ青になってる!? ま、まさか!


「ルーミィ、まだダメですよ!? すぐにトイレに連れて行ってあげますから!」


 すかさず口を押さえ、頬を膨らましているルーミィをお姫様抱っこしてトイレに走った……新年早々バタバタだ……。




 なんとかトイレに間に合い、ルーミィはトイレに向かって二度目の『明けましておめでとうございます』をしている。小さな背中をさすってあげているのだが、先程からずっとオエオエしている状況だ。


「うぅ、気持ち悪いよぉ……うぷっ!?」


 日本酒は飲みやすいのだが、下手な飲み方をすると悪酔いするからなあ……俺にも経験がある。


「こんな……汚いよぉ……和也、ごめ――ぅぷ!?」


「大丈夫です、気にしないで下さい。それよりも我慢せずに全部吐いてすっきりして下さい。さあ」


 再び背中をさすりながら答えてあげた。何度かオエオエした後、顔色も幾分マシになったのでそのまま肩を貸してあげて洗面所に向かった。このボディータッチは止むを得ない。


「こんな汚い女の子やだよね……もう、恥ずかし過ぎて死にたいよ……」


 相当な自己嫌悪に陥っているいうようだ。しかしなってしまったものはどうしようもない。次回以降の教訓にしてもらえれば何よりだ。それにしても新年早々酔った美少女の介抱とは……こんな事滅多に出来ない体験だな。

 出来れば無いに越した事はないが……。


「そんな事は気にしなくていいですから。さあ、口をゆすいで下さい。気分が良くなったらお風呂に入ってさっぱりした方が良いかも知れませんね」


 洗面所でお口直しをして再びリビングへと帰ってきたのだが、ルーミィはすっかりとしょげてしまい、三角座りで顔を埋めてしまっている。


「だ、大丈夫か? ルーミィ」


「ご、ご気分は……い、如何でしょうか……」


 気遣っている二人だが、イリアさんはともかくレインの方も顔色が優れない様子だ。というよりちょっと悪化してる感もある。

 完全に悪酔いしてる二日酔いだな……おそらく気分は最悪の筈だ。


「レインも少し外の風に当たって酔いを醒ました方がいいですね。ルーミィは先にイリアさんと一緒にお風呂へどうぞ。イリアさん、ルーミィを宜しくお願いいたします」


「ああ、分かった。ほら立てるか?」


「う、うん……」


 さてと、次はレインか。折角のお正月だ、みんなの気分が整ってから始めるとしよう。




 冷たい新鮮な風が顔にあたり、気分をリフレッシュさせてくれる。レインと共に遊戯室の前に腰を下ろし、一面の雪景色を見ながら気分を落ち着けた。

 レインとはちょくちょく外で酔い覚ましをしてる気がする……おかげで俺も少しは楽になったけど。レインの方はどうだろうか。

 

「気持ちのいい風ですね、どうですか気分の方は?」


「は、はい、随分と良くなりました……」


 う~ん、まだ完全に顔色は戻っていないな。思ったよりも重症かも。もうしばらく休憩していれば良くなるだろうか……。もしくは一度、胃の中をリセットした方が回復は早いかも知れな――


「カズヤ様! この度の不祥事、大変申し訳ございません! どうか、罰をお与え下さい! 不貞の私に!」


 こともあろうか急激な動きで頭を深く下げて謝ってきた!? ダメ! そんな急に動いちゃ! それでルーミィもオエオエってなったんだから!


「おぷっ……んっぐ!?」


「ちょっとお! ダメです、すぐトイレに連れて行きますのでもう少しだけ我慢して下さいよぉ!?」


 ルーミィと同じくレインをお姫様抱っこしてトイレまで走った……完全に出デジャブなんですけど!

 火事場のクソ力ってやつかな? おっさん、正直力は無い方なんですけど、二人共、すっと持ち運べたよ……俺でも一応は女の子を持って走れるぐらいの潜在能力が合ったんだな……。


 なんとかトイレに間に合い、再びレインもトイレに二度目の『明けましておめでとうございます』をしながらオエオエタイムである。


「も、申し訳ございま――ぅ!?」


「気にしなくても大丈夫です。我慢せずに胃の中の物を全部吐いてしまって下さい。その方が楽になりますから」


「はぁはぁ……ううっ……く、苦しいですぅ、カズヤ様ぁ……カズヤ様ぁ……こんなの、初めてですぅ……」


 ……なんだろう、涙目で弱々しい横顔にちょっとドキっとした。くっ、ルーミィにしてもレインにしてもこんな弱々しい態度を見せられたらキュンとしちゃうじゃないか!


 しかし、再びレインの背中をさすり、オエオエの介抱を続けながら思った。二度と日本酒は飲ませないでおこうと。


 お正月は……まだ始まらない。



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