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異世界275日目 12月31日(火) ②ほんと、お餅つきは危険だから!


「い、如何でございますか、カズヤ様……」


「あ、はい。とっても心地良いです……痛みも引きました。ありがとうございます」


 頬を赤らめておっさんを抱きしめながら様子を伺ってくれるレイン。もちろん、意味も無く抱きしめられているのではなく、回復魔法施工による絶賛治療中である。

 誤解が生まれないように後程弁明しておかなければならないが、決してレインの超お胸ちゃんの感触が気持ちいい訳ではなく、回復魔法による効果が心地良いのだ。


 先程、ルーミィによる蒸したての餅米スプラッシュの直撃を受けて顔面を軽く火傷してしまい、治療の為、餅つきは一時中断中である。


「ルーミィ! レインに回復魔法を使わすな! 毎回あんなに抱きしめられた姿を見なきゃならないんだぞ!?」


「ご、ごめんなさい……」


 無事回復魔法のおかげで痛みも無くなったので再開しようとしたのだが、ある程度餅米がまとまるまでは俺が行う事にしようと思う……実際は怖くて任せられないのが本心だ。


「レイン、ありがとうございます。大分痛みも引いて来ましたので……その、離れて頂いても……」


「も、もうよろしいのですか? もう少し治療された方が――」


「レイン、もう十分だ。なあ? カズヤ?」


「は、はい! もう完全に治りましたぁ!」


 もう治って無くても治ったと言うしかない。レインは妙に名残惜しそうな顔をしていたが、イリアさんの眼光が鋭いせいか渋々俺から離れてくれた。ありがとう、超お胸ちゃん!


 餅つきを再開し、餅米の粒感も無くってひと塊になってきたところで選手交代をするとした。


「それでは私はお餅を返す係をしますので、ゆっくり軽くついて下さいね。これ、結構危険ですから」


「任せておきな! あたしはルーミィみたいなへまはしないよ!」


 軽々と杵を担ぐイリアさん。あの人の繰り出すパワーで手を撃ち抜かれたら……考えるのはよそう。


「いいですね、私が合図をしたらついて下さいね! 合図をしたらですよ!? ほんとお願いしますからね!?」


「分かってるって。任せときな!」


 念には念を入れて二回同じ事を言わせてもらったが……イリアさん、信じてますよ?


「ほっ!」

「はい!」

「ほっ!」

「はい!」


 イリアさんとは息ぴったりで餅をつけている。いやあ、心配したけど完璧じゃないですか! 臼の中の餅も程よくまとまってきているようだ。でも後もうちょっとかな? よく見るとまだ粒状の状態の物が見え隠れしているな。


「折角ですのでレインもやってみますか?」


「はい! ありがとうございます!」


 臼を構えるお姫様。まるで大剣、バスタードソードを持っているかの如く姿勢が良い。物凄く様になっており、杵でモンスターをやっつけられそうだ。


「では行きますよ、合図をしたらついて下さいね」


「分かりました!」


「はい!」

「せいっ!」

「はい!」

「せいっ!」


 なんか掛け声が剣の素振りみたいになっているけど、レインとの息はバッチリだ。さて、次はそこで目をキラキラさせている女神様の番だな……。


「……それではルーミィもどうぞ」


 臼から三歩離れてルーミィについてもらうようにお願いした。


「なんでそんなに離れるの?」


「怖いからです」


 即答してあげた。お餅の方はほぼ仕上がっているので先程のもち米スプラッシュを受ける事は無いのだが、杵でやられる可能性がある。一回一回距離を取ってお餅を返しに行く作戦だ。

 下手したら手では無く、脳天をかち割られる可能性もある。俺は異世界に来て、餅つきで死にたくなんぞ無い。あまりに間抜け過ぎる。


「大丈夫だよ! 私もレインやイリアさんみたいに和也に掛声かけてもらって、リズミカルにペタンペタンしたいよ!」


 正直に言おう。嫌だ。だって確実に寿命を縮める思いしなきゃいけないじゃん……でもルーミィだけ除け者にする訳にはいかないか。仕方無い、腹をくくろう……。


「分かりました、でも本当に気を付けて下さいよ?」


「うん!」


 はあぁ……可愛らしい笑顔でございますね。そんな表情を頂けたのなら右手の一本ぐらい差し出さねばなるまい……と、あくまで気持の問題ですからね! 痛いのは嫌ですからね!?


「はいっ!」

「よいしょ~!」

「はいっ!」

「んしょお~」

「はいっ!」

「ううっんしょ!」


 萌えるな……とっても女の子女の子してる。非力な女の子が一生懸命に力を振るっているのってなんかぐっとくるものがあるな。


「カズヤ、なんだかルーミィの方を見つめ過ぎじゃないか?」


 イリアさんがジト目で質問してきた……そ、そんな事無いですよ?


「こ、これはですね、しっかり見ておかないと危な――ぎゃああっ!!!!?」


「きゃああ!! ご、ごめん!! 和也! 大丈夫!?」


 俺の右手が杵で撃ち抜かれた……まだ合図してなかったでしょ……。



 俺は今、暖かな光と柔らかい肌に包まれている。再び絶賛治療中である。ちなみに即レインが飛びついて来てくれた。


「今日は二回もカズヤ様を抱きしめられて……幸せの限りでございます……」


 叫び声をあげた時は焦った様子だったが、回復魔法をかけながら俺の痛みが引いた事を察したのか、今はご満悦の表情のレインである……またまたお世話になります、超お胸ちゃん……。


「イ、イリアさんが急に和也に声をかけるから!」


「そ、それはだな、カズヤがルーミィの事をじっと見ていたから注意をだな……」


 その言葉に回復魔法の光は止んだ。抱きしめられたままではあるが……治療完了かな? でもまだちょっとだけ痛いんですけど……。


「そうなのですか? カズヤ様?」


 目が笑っていない……えっと、怒らせると治療してくれないんですね。すみません、後で正座しますから先に怪我を治して頂けないでしょうか?




 右往左往あったが、なんとか手の怪我は完治してもらった。相変わらずの密着具合にイリアさんは歯ぎしりしていたが、ルーミィは少し照れている様子を覗かせていた。どうやら見てくれていた事が嬉しかったようだ。


「さて、折角ですからつきたてのお餅を食べてみましょうか」


 いろいろな困難があったがとりあえず完成したので試食といきたい。それにつきたてはこのタイミングでしか食べれないので貴重である。


 用意したのはシンプルに醤油ときな粉にしてみた。王道であるが、どちらかと言うと俺は醤油派だ。女性陣はきな粉の方が人気あるかな? やはり甘い物が好きなんでしょうね。特にレインは。


「う~ん! 美味しい~!」


「はい、初めての食感ですし、この粉がとっても味わい深いですぅ!」


「やっぱり出来たては美味いもんだな! この伸びと柔らかさは堪らないねえ!」


「みなさん、喉に詰まらせないように小さくちぎって食べて下さいね」


 お餅は小分けにしておけば、焼き餅にも出来るし、雑煮の具ともなる。更にあんこと合わせればぜんざいなんかも可能だ! さて、じゃんじゃんお餅のストックを作るとしますか!


「じゃあ皆さん、一口サイズにお餅を丸めてくれますか? 私はもう一度餅米を蒸して来ますので。お昼ごはんがてら、今度は焼き餅もしましょうかね」


「やったあ~! でもその前に、もうちょっと食べよ~っと!」


 えっと、試食のつもりだったんですが……どんどんついたお餅が減って行くんですが? これ……足りるかな? 


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