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異世界1日目 4月1日(月) ⑨いざ、お買い物へ

 

「おっ来たな、お二人さん! 金は工面出来たかい?」


 再び足を運んだ雑貨店に着くと同時に威勢の良い声が飛んで来た。セクシー店長ことイリアさんのお出迎えだ。


「ええ、なんとか。この通りです」


 先ほど神力で出した10000G硬貨を一枚見せてみた。だ、大丈夫ですよね?


「そうかい。でもどうやって用意したんだい?」


「クレイドさんの方に顔を出しまして。ちょっと物々交換してもらって」


 嘘も方便である。『神様の力使って出しました! てへっ!』とは言う訳にはいかない。まあ、どの道、おっさんがそんなお茶目な事をほぼ初対面の人にしたらドン引きされるから絶対言わないけど。


「なんだ、クレイドとも既に顔見知りだったのかい。それじゃあ遠慮無く見ていってくれ。大概の物は置いてあるからさ」


 どうやら硬貨の方も問題無いようだ。それにクレイドさんの名前を出したのも良かったみたいだ。かなり警戒された感はあったが。しかし、これで安心してお買い物が出来るぞ。


 改めて店内を見渡すとそのラインナップに驚いた。元の世界のスーパーなんかより品揃えがいいかも知れない。異世界の雑貨店って一体……。


 だが品揃えが良くて困る事など無い。まずは調理の基本の調味料から見ていこうかな。


 調味料コーナーに足を運ぶと塩や砂糖、油などがずらりと並んでいた。今の園には何一つ無いのでどんどん買い物かごに入れていくのだが、やはりは醤油や味噌などは陳列されていなかった。

 流石に異世界で日本独特の物を求めるのは酷というものか……少し残念であるけど仕方無い。続いて日用品のコーナーに行ってみるか。


 キッチン周りの備品としては器具はあるものの、消耗品などの洗剤なども買っておかねばならない。後は持ち運びのバッグなんかも必要だな。


 んっ? ルーミィさんは服のコーナーに行っているのか。やっぱ女の子ですね……あ、大切な事を忘れていた。あれも買っておかないとな……。


「イリアさん、申し訳無いのですが……」


 レジ的な場所に立っているイリアさんに声をかけて色々と相談させてもらった。しかし経費がかかるな……10万Gなんて一瞬で無くなりそうだ……。


 その後も生活必需品をメインにじゃんじゃん買い物籠に入れていった。尚、ルーミィさんは店内を一回りした後、今はある場所でビタ止まり中である。


「じゃあこれだけお願します」


 大量の商品をイリアさんに渡した所で、ルーミィさんの視線に気付いた。


 目を潤ませ悲し気な表情であり、口も少しへの字になっている……特に目が完全に捨て犬や捨て猫のそれだ……そんな目で見ないでもらえます?

 おっさん女の子に弱いの。イヤらしい意味じゃなくて女性と縁が一切無かったのは知ってるでしょ? その表情はズルいですよ!? そんなの断れないじゃないですか……。


「……好きな物を選んで下さって構いませんよ」


 ルーミィさんが立ち止まっていた場所は、コンビニのレジ横には必ずあるホットコーナーだ。異世界の雑貨店も類に漏れず設置してあった。これってイリアさんが仕込んでいるんだろうか。


「やったあ! じゃあ、これとあれと。あっ、それも!」


 もう水を得た魚の如く、的確に狙いを定めて商品を両手に溢れんばかりに抱え出した……いや、別にいいんですけど、その量を一人で食べるんですか? 


「優しい所あるねえ、カズヤ」


 ルーミィさんの暴挙に呆気に取られていた所、商品を布袋に詰め込んでくれながらイリアさんからお声がかかった。


 あら、もうお名前覚えて頂けたんですね。光栄の極みであります、お姉様。でもちょっとその服装とボディは俺には刺激が強過ぎますけどね。


 セクシーな服装と大きな谷間に目を奪われそうになった時、再び視線を感じ取った。またルーミィさんがこちらを見ていたのだ。『胸ばかり見てるんじゃないの!』と言わんばかりの目で。

 でもこれを見るなと言うのは……人の視野的にも無理な話ではないでしょうか。強制的に視覚に入って来ますので。


「さ、さあ、そろそろ行きましょうか? イリアさん、ありがとうございました」


「おう、また来てくれよな! カズヤ! ルーミィ!」


 なんだろう、名前で呼ばれると少し恥ずかしいのだが親近感が湧く。ルーミィさんもホットコーナーの商品を受け取りご機嫌な様子だ。

 今は名前を覚えてもらった事よりも、念願の食べ物を手に入れた事の方が勝っているんですね。



≪≪≪



「はあぁ~美味しかったぁ!」


 ルーミィさんはよっぽどお腹が空いていたのか、村から出るや歩きながら先程購入した商品達を食べており、保育園に着く前に食べ尽くしていた。


 ご満足して頂けましたかね? から揚げ棒二本にハンバーガーが二個、じゃがバターも同じく二個も食べたんですから。


 二個ずつ買ってくれていたので、てっきり俺の分もあると思っていたのだが、俺には一口もくれずに全て完食された……酷い話である。


 その食料を見越して今日の夕食は買ってないんですよ……。


 そんな心の中で泣きながら園に戻る帰り道の途中に日はすっかり落ちてしまい、今は先ほど購入したランタンを照らして歩いている。

 園に戻れば電気があるが、基本この異世界の明かりはランタンが基本のようだ。


 というか荷物が重い……女神様、お食事が終わったのならせめてランタンだけでも持ってくれませんかね……。


「おや、またスライムですね」


 ランタンの光に照らされて道の端に居るスライムが目に映った。だが妙な違和感を感じた。闇夜にランタンの暖色の光の影響もあるのだろうけどなんだろう、いつもの水色ではないような……。


 スライムに近づき更にランタンをかかげ観察すると薄い桃色をしている事が分かった。


「スライムにも種類があるんですね。ひょっとしたら味に変化があるかも知れませんね」


「くしゅんっ」


 可愛らしいくしゃみが聞こえ、振り返ると寒そうに両腕を抱えるルーミィさんの姿があった。確かに夜はまだ冷えるし、俺もルーミィさんもシャツ一枚だし、ルーミィさんはスカートで足も出てるもんな。


「そうそう、ルーミィさん。これを」


 購入した布袋から取り出し渡したのは白いケープ。雑貨屋でお買い物中にルーミィさんが衣服コーナーで見とれていた物だった。


 このケープ、神界で着ていた服になんとなく似ている上、じっと眺めていたのが気になっていたので、イリアさんに頼んで用意してもらっていたのだ。


 まあ、お会計の時に気付くかと思ったのだが、食べ物に夢中になってましたからね……。


「夜や朝は冷えますからね。宜しければお使い下さい」


「わあ……これ。買っててくれたんだぁ」


 ケープを受け取ると早速羽織ってくれた。清楚な白がよりルーミィさんの魅力を引き上げている。うん、やっぱり似合う。流石は女神様である。


「ありがとう、和也! すごく暖かいよ!」


 ケープに頬ずりして笑顔をくれた。そんな一回り以上年下の女の子の仕草に内心ドキドキしている。しかしなんだろう、そんな心境にも関わらず見ているだけで心が安らぐ笑顔だ。この矛盾は一体……。 


「い、いえ。風邪引かないようにして下さいね。さ、早く園に戻りましょう」


「うん!」


 くぅぅ……その笑顔の為なら頑張れる気がします! でも異世界初日、まさかのマイナス1000ポイントスタートとは。俺、ちゃんと帰れるだろうか……。

 後、ルーミィさんではないが、お腹空いたなぁ……今日はメシ抜きかぁ……。


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