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運が悪かったので、異世界転生する事になりました

異世界転生(肉体はそのまま)です!

今回は説明とか、イチャイチャしますけど。重要な所なので(イチャイチャが)飛ばすと訳わかめになりますよ?


ではどうぞ、お楽しみ下さい!

 死、それは唐突に訪れる。


 ニュースを見ればやっていない日の方が少ないであろう、犠牲者を出した事件の数々。


 だが、そうでない者も居る。


「短い人生お疲れ様です、坂城(さかしろ) 彩人(あやと)さん……」


 ここにも一人、"そうでない者"が居た。


 白い部屋に悲しそうな女性の声"のみ"が響く。

 姿はない……いや、光が人間の形をしているように見えるだろうか。


「彩人さんは産まれた時から病気がちで、高校生となってすぐに悪化。わずか17歳という若さで病死。……なんて可哀想な人」


 女性(?)曰く不幸な人生を送った少年は、


「はぁ? 死ぬ時まで幸せ過ぎるくらいだったわ。多少病弱だったからって、多少死ぬのが早かったからって、そんな風に言われる筋合いはない」


 勝手に不幸だと決めつけるな。


 そう言い返す少年――彩人。

 彩人は自分が不幸だとは思っておらず、恵まれているとすら思っていたのだ。


 死ぬと分かっているからこそ、家族の愛情をこれ以上ない程に注いで貰えた。


 死を恐れていたからこそ、生きるという事の大切さを学べた。


「う……ごめんなさい。事実だけを見たら、すごく悲しくなってしまって……」


「こちらこそすみません。目が覚めていきなりだったので、過剰に反応してしまいました……」


 お互いに頭(光の方は恐らく)を下げる。

 その様子を見て、やはりお互いにくすっと笑った。……最初のやり取りでは分からないだろうが、どちらもかなり真面目である。


 その直後、綾人は当然の疑問を抱いた。


(いやいや、そうじゃないだろ。この……人? は誰だ。俺、さっき死んだんだが……)


「あ、自己紹介がまだでした。私、桜と言います。職業は……俗に言う女神ですね」


「……まあ、死んだのは覚えてますし、この真っ白な部屋もそれっぽいので有り得なくはないですけど……」


 有り得なくは無い。

 彩人は持て余した時間を勉強、読書、ゲーム等に使っていたが、読書の中にはライトノベルも含まれている。

 だから、"女神"という存在も受け入れられた。


(とは言え、ただの光なんだよなぁ……)


「ええ。この見た目だと人間じゃないとすぐに理解して貰えるので、最初はこの姿をお見せしてるんです」


「なるほど、確かに人間だとは思わな――って、さっきも思ったんですけど、俺の心の声まで聞こえてません?」


「はい、女神ですから!」


 見事なドヤ顔である。

 何故ドヤ顔だと分かったのかと言えば、その姿が人に変わっていたからだ。……ただの光が絶世の美女に早変わりしたにも関わらず、彩人は一切動揺していない。


(貫頭衣みたいな服、恥ずかしくないのか……?)


 気にするのはその一点。

 勿論、『綺麗な人だな』とは思っているのだが、ラノベでは女神=美人なので驚く要素が無い。


「あんなのと一緒にしないで下さい。これが女神の正装ですし、肌触りだって良いんですからね! ほら、触ってみれば分かるでしょう?」


 ふにゅっと指が沈む。

 ……女性だけが持つ二つのマシュマロに。


「ちょっ!?」


 触ってみれば、の辺りで彩人の手を取り、自分の胸に押し当てた桜。当然ながら意識してのことでは無い。

 意識してなら痴女と呼ぶことになっただろう。


 あと、彩人もこれには動揺するらしい。


(柔らかっ……というか、その下何も付けてないのかよ!)


 谷間も見えている。ならば付けているはずが無い。


「へ!? は、はわわっ……えと、その、」


「恥ずかしいのは分かるが手を離そう。俺の力が弱過ぎて、自分じゃ引き剥がせないんだ」


「そ、そうですよね、ごめんなさいっ!」


(……勿体ない事をしたな)


 彼女が出来たことの無い――否、正確に言うならば作るつもりの無かった彩人にとって、その感触は初めてのものだった。


 なお、顔は母親似で中性的だが整っている。……だが、その事を本人は理解していない。


「……さっきはうっかりだったので慌ててしまいましたけど、少しくらいはいいですよ? 減るものでもありませんし……(彩人さんは結構好みですし?)」


(最後、小声で何を言ったんだろうか)


「い、いや、さすがにそれはハードルが高いです。どうせ心を読まれるので先に言って置きますけど、女性経験皆無の俺にそんな度胸はありません」


「そうですか……仕方ありませんよね。 それなら、敬語をやめる、というのはどうですか? 名前も呼び捨てで」


 女神様、非常に残念そうである。

 そもそも、ここに彩人が居るのは桜が理由なのだ。なので、いつでもウェルカムだったりする。


「あー、分かりま……分かった。それで、俺はどうしてここに居るんだ? さ、桜……が知ってるんだろ?」


 照れつつも名前を呼ぶ彩人。

 同学年の女子ですら呼び捨てにするのが恥ずかしいと言うのに、それを自分より年上(実年齢ではなく見た目)の美女にするのだ。

 若干顔が赤くなるのも仕方ない事ではある。


(か、可愛い……! キュン死しそうです……)


 女神様は歳下好きの様子。

 しかし、表情には一切出ていない。伊達に神様やっていない、という事だろうか。


「知っているというか、私が呼びました。彩人さんが物凄く危ない世界に転生させられるみたいなので」


「……物凄く危ない世界」


 "転生させられる"というファンタジーな展開よりも、そっちが気になるだろう。

 女神が"物凄く危ない"と言うのだから。


「はい、危険がいっぱいです。具体的には……地上が魔物パラダイスで、地下都市では法律とかほとんど機能しません。何も知らずに行ったら一日で死んじゃうかもです」


「怖っ……地下都市って事は、地上に人が居たりはしないのか?」


「いえ、居るには居るんですよ? エルフとかドワーフみたいな、ファンタジー小説に出てくる種族がいっぱい……」


「じゃあ、そこ行けばいいんじゃ?」


「最初はやめた方が……ただの人間は基本弱いので、見下されます。地下都市よりも危険ですね」


 残念ながら人間は最弱。

 それも、臆病でダメダメな種族らしい。


(……ん? "最初"は?)


「ふふっ、色々説明しますよー? 彩人さんには死んで欲しくありませんからっ!」


 桜、ここぞとばかりにアピール!

 だが彩人、『事情があるんだろ』と勘違い。友人と過ごす時間の少ない彩人は鈍いのである。


「ありがとう、正直助かる」


「あ、はい、どういたしまして…」


「?」


 二人の漫才はともかく、ここからが本題だ。


 まず、彩人が転生する理由。


 これは様々な不幸(運が悪いという意味)が原因だったりする。


 ・母親の病弱な部分を引き継いで産まれた。

 ・本来は健康になる予定が特に変化なし。

 ・事故で母親が他界し、食生活が悪くなった。そのせいで元々病弱なのに悪化。

 ・複数の病気が同時発症。

 ・治るはずが、更なる病気に感染。

 ・17歳という若さで死亡。


 あまりにも運が悪い。

 だから、もう一度やり直すチャンスを与えよう。……つまりはそういうことなのだ。

 彩人以外にもこうして転生した者は居る。ただ、同じ世界ではなく様々な世界から抽選で選ばれるのだが。


「こうして考えると凄いな」


「彩人さん……うぅ……」


「えぇ……? 何で桜が泣くんだよ」


 無論、可哀想過ぎるからである。

 桜は"ほぼ全て"見ていたため、彩人の事は母親並みに知っている。ついでに涙脆いというのもあってこうなった。


「あやどざぁぁんっ!」


「うぉっ!?」


 女神様による突然の抱擁。

 彩人の顔はマシュマロのような胸にダイブし、再度その柔らかさを感じる事となった。

 そして、いつの間にか現れたベッドに倒れ込む。


(でも、なんか……家族以外の人に俺の死を悲しんで貰えるのって、不思議と嬉しいもんだな……)


 顔は真っ赤に染まっているが、優しさ100%の抱擁にそんな事を考える。ただ……桜、実は既にこの状況を把握して喜んでいたり。


(彩人さんが抵抗しない……しばらくこのままでいましょう。けど、転生したら会えないんですよね……何とかするしかありませんっ!)


 ここで再会を決意する。

 そう、桜のデレッデレ具合、他人が見れば即バレなのだ。彩人が鈍感を極めているだけなのだ!


「あ、あのさ……話の続き、頼む」


「あっ、分かりました」


 彩人は言外に『恥ずかしいからそろそろ離して』と伝えたつもりだったが、桜はそのまま続ける。


(……別に嫌な訳じゃないしな、うん)



「まず、このまま転生すると彩人さんが危険なのは言いましたよね? ですから、私からこんなものをお渡ししようと思うんです」


 そう言って指をパチンと鳴らすと、彩人の頭に"特殊能力一覧"という物の知識が送り込まれた。


「その中から六個選んで下さい。本当は好きなだけ渡したい所ですけど……周りがうるさいので」


 機嫌が悪くなった桜を見て眉を寄せる彩人。

 六個という制限に文句がある……


 のではなく、


「一個でも凄いぞこれ」


 例えば、殺されても死なない不老不死。


 例えば、魔法を使い放題にする魔力吸収。


 例えば、生き物から力を奪う能力強奪。


 例えば……



 1つあれば過剰戦力。

 ただし、その代償はあるようだ。


 不老不死であれば、感情を捨てる必要がある。


 魔力吸収であれば、空気中から魔力を補給出来る代わりに、負荷でじわじわと体がダメになる。


 能力強奪であれば、数を増やす事で肉体が変質し、最終的には化け物のような姿となる。



 特殊能力の中でも弱いものであれば、基本的には代償が必要無い。(本当は桜が無効化する。強力な物も、本来ならさらに酷い代償を伴う)



「俺が欲しいのは……」


 悩んだのは実に30分間。

 短いと捉えるか長いと捉えるかは人それぞれだろうが、桜にとっては短く感じていた。


 ……何故?


(ああ……お別れの時が刻一刻と迫って来ます……転生なんてしないで、ここに居て下さい!)


 こういう事である。


 既に決まっている事なので不可能だ。

 それでも気持ちは抑えられず、彩人の頭をぎゅっと抱え込む。彩人の顔はもっと沈む。


(弟、若しくは息子みたいな扱いなのか……? 普通に恥ずかしいけど、柔らかいんだよな……)


 鈍感過ぎて桜の心は折れかけていた。

 しかし、いくつかまだ話すべき事があるため、気を取り直して説明を再開。


「彩人さんの転生先では、ゲームのようなレベル、ステータス機能があります」


「おお……なんと言うか、それやった神様ヤバいな」


「はい、かなりヤバいですね。とは言っても、レベルが上がると急に強くなるなんてことは無く……先に見てもらった方が良いですね」


 先程と同じようにパチンと鳴らしたかと思えば、彩人の視界にガラスのような何かが浮かび上がる。

 顔は桜の胸に埋まっているのに、だ。


(おお、ゲーマーの血が騒ぐ……!)




 名前:坂城 彩人

 レベル:1

 体力:1/100

 魔力:1 /50

 筋力:1 /10

 敏捷:1 /10

 精神:1 /10

 器用:1 /10



 ~特殊能力~


【恐怖無効】【言語理解】

【技能測定】【無限収納】

【心意操作】【資質向上】




 斬新なパラメータ表示。

 すぐに彩人は首を傾げ、微笑みつつ桜が囁く。普通に話さないのはちょっとした悪戯心。


「パラメータの左は現在の数値、右は限界値ですよ」


「へ、へぇ……って、俺の限界値低過ぎっ!?」


 不意打ちに動揺しつつも、あまりに絶望的な数字に肩を落とした。実はなんの問題もないのだが。


「そのためのレベルですから。現在値は鍛錬によって増えますけど、限界値はレベルアップで増えます。あ、増加率はレベルアップまでの行動で変わりますね」


「なんだそういう……なら、すぐに強くなれるんじゃ? と思って選んだ資質向上は、その増加率が高くなるか現在値が上がりやすい?」


「どっちも正解です♪」


 ゲームのようにレベルアップで強くなる……という程甘くは無いが、地球より強くなるのが容易いのは確定である。


「……気になる事があるんだけどさ、ステータスと体その物の関係ってどうなるんだ?」


 彩人が気にしているのは、パラメータの数字が低くいと"筋肉は無駄"なのかという話だ。

 ラノベでは"物理法則より上位"や"相乗効果"というパターンがある。


 パラメータがそのまま見た目に反映されるというのは珍しいはずだ。


「筋力は数字通りの見た目になる人と、筋肉の密度が凄いことになる人が居ますね。ただ、全く筋肉が無いというのはありえません」


 細マッチョか普通のマッチョの二択 という事になる。


(筋肉隆々の自分とか想像したくねぇ……)


 ……彩人がマッチョになっても困るので、こっそり体質を変える女神様。それ知るのはまだ先のこと。


 その後も様々な事を桜から聞き(抱きしめられたまま)、一通り聞き終わった所で離れる。


(うぅ、彩人さんがぁ……)


 彩人大好き女神の桜は、ここでうっかりを発動。


(絶対、会いに行きますからね!)

「絶対、会いに行きますからね!」


 心の声がダダ漏れである。


「へ? りょ、了解……でいいのか?」


「はっ!? ……そそ、そのぉ……いいです」


 小さくなっていく声だったが、辛うじて彩人の耳にも届いた。ここまで接して感じた事は、"姉"のようであり、"母親"のようでもあり、全く違う……つまり、よく分からない存在。


 好意全開の相手であっても、女性経験無しの彩人には分からない。女友達もほぼ居なかったので分からない。


(こんな可愛い人から会いに来ると言われれば、弟みたいな扱いでも嬉しいに決まってる……うん?)


 ふと違和感を感じた彩人が自分の手を見る。

 向こう側が透けて見え、段々と意識が遠のいていく。それは、お別れの時間が来たという事。


「桜、色々ありがとう。実はまだ聞きたい事とかあったんだが……それはまた今度にする」


「……ちゃんと待ってて下さいね? 死んじゃったりしたら怒りますから」


 聞きたい事が気になる桜。しかし、それよりも何か言わなければと焦る気持ちがある様子。


「あの、あのっ……!」


「どうしたんだ?」


「私、彩人さんのこと好きです!」


(言っちゃった……ドキドキ……)


 女神である桜からすれば、人が死ぬ100年はあっという間の出来事。だから、恥ずかしがって好意を隠すような真似はしない。


「俺も、桜の事好きだよ」


「あ……」








 だがしかし、


(兄弟愛的なものには憧れてたんだよなぁ……)


 ……届くとは限らないのである。


「……言って良かった……」


 どうやら聞こえなかったらしい。あるいは、聞こえなかった事にしたのかもしれないが。


 ……桜が哀れである。

 ポロポロと涙を流しているが、事実を知ったら別の意味で涙を流すことになってしまう。


 ここで桜は動いた!

 転生する直前。彩人の頬に手を添え、チュッと額にキスをした。……本当は唇を狙っていたが、さすがにその勇気は出なかったようである。


「え……?」


 それでも十分だろう……彩人の反応や如何にッ!


 ……………………



 ………………



 ………。


(海外だと普通にするんだったか?)


 oh......残念無念ッ!!


(あれ? 日本でもしますよね……?)


 お互いに赤い顔で首を傾げる不思議な状況。

 ここだけ聞いても勘違いしていると気づけず、見事にすれ違ったまま彩人は転生。



 超絶鈍感な少年は、遂に異世界へ旅立ったのである。……許してあげて欲しい。彼は"まだ"恋愛感情を知らないのだから。

すれ違う二人(笑)

鈍感というか、仕方ない事です。

女神様の名前が桜なのは、一応意味があったりしますが……それはまだお話出来ません。


次回、『あのドラゴンいつか泣かす』

不幸属性発揮しますので、お楽しみに!

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