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間章:魔術結社ティマイオス

その一瞬まで誰もが予想などできなかった

空一面に浮かぶ奇怪な赤い紋様、その異様なまでの光景に誰もが空を見上げる

そして時間が止まったかのように思えた、空を覆う紋様が眩しく閃光したのだ

誰もがあまりの眩しさに目をつむり

何が起きているかも理解できないまま意識を途絶えていく


地面を揺るがすほどの轟音と共に、大地が、ビルが、人が、物が、何もかもが光へと呑み込まれていく

それから逃れる術はない、たとえ地下に潜っていようとも。厳重なセキュリティと対外衝撃に絶対的に耐えうるビルの中に隠れようとも

それから逃れることはできない

術式範囲内の物はすべて、一切の例外なくそれに呑み込まれて姿を変える

水結晶パワークリスタルへと


生贄の儀式の術隙完全起動から十五分という時間で東京二十三区は巨大な水結晶パワークリスタルへと変貌していた


千葉県と東京都の県境、そこで水結晶パワークリスタル化した東京二十三区を誠也は無言で見つめていた

そんな誠也の顔を樟葉は隣に立って見上げていた

誠也の顔からは悔しさがにじみ出ていた

誠也が救い出せたのは僅か数人、それも弟子の関係者だけだった

もっと手を尽くせばもっと多くの人を救えたかもしれない、それができなかったことが悔しいのだ

樟葉は師匠にどう声をかけていいかわからなかった

大好きな師匠が助けに来てくれたことはとても嬉しい、でもそのせいで少なくとも助けられたかもしれない人々を助けられなかったのだ

そう思うとこの嬉しさが後ろめたい気持ちになる

悔しい気持ちは自分にだってある

この惨状を生み出したのは魔術結社ティマイオス。この術式を行使したのはその構成員であり、樟葉のクラスメイトだった

止めようと思えば止められたのだ。しかし、できなかった

完敗だった

彼女と自分とでは力の差が歴然としていた。手も足も出ない、そのことが悔しかった


永遠にも感じた無言の時間を断ち切ったのは誠也でも樟葉でも、傷ついて寝かされている有紀たちでも、真紀でもなかった

道路の向こうからバイクが一台こちらへと向かってくる、それを運転している者が誠也へと声をかけたのだ


「誠也!樟葉ちゃんたちも無事?」


それは川本恵美だった

樟葉は川本恵美の姿を確認するとあからさまに嫌そうな顔を見せた


「なんだ、生きてたんだ」


樟葉の言葉に恵美は引きつった笑みを浮かべる

ブチっと何かが切れる音を鳴らして、恵美は敵意を持った笑顔で樟葉に近寄る


「あら~樟葉ちゃん?それが喉に物が通らないほど心配してあげた人に対する返事かしら?」


黒い笑顔の恵みに対し、樟葉も明らかな敵意ある笑みを浮かべて恵みに向かい合う

両者、不気味に笑いながら顔を近づけて対峙していると


「お~い!沖山!川本も一緒か?」


遠くから声が聞こえてきた


「あ、浦上君…なんで軽トラック?」


声の先、古臭い軽トラックの窓から顔を出してこちらに手を振っている浦上雅がいた

その姿を確認してようやく誠也は重たい口を開いた


「相変わらずお祭り野朗というか、こちらの予想の遥か斜め上を行くやつだなお前って」

「おう?沖山てめぇ!今のはどういう意味だ!?」

「無理に変なキャラ作るなよ。お前は芸人目指してるのか?」


溜息をついて誠也は軽トラックへと歩いていく

それを見て樟葉と恵美を目を会わせると慌てて誠也の後についていく


軽トラックまで誠也が来ると浦上雅は軽トラックから降りて大きく伸びをした


「う~ん!軽トラックはどうも狭苦しくて息がつまるわ……ったくこんなので仕事しろだなんてAMMも人使い荒いっての」

「なんだ?AMMの仕事だったのか?」


誠也は浦上の軽トラックを見て問いかけた、AMMの仕事にしては支給される物資がしょぼくはないか


「あぁ~まぁな、何せいきなりあんな術式が発動するもんだからよ。AMMも慌ててたんじゃね?」


その言葉に誠也は押し黙った、そんな誠也を無視して浦上は話を続ける


「しかし軽トラックで救護に回れなんて無理な難題押し付けやがるぜ」

「救護?」


その言葉に誠也が反応する


「あぁ、つってもこんな小さいと人数も限られるけどな。それに助けたのもAMM指定の魔術師だけだし」


その言葉に誠也は言葉を失った

AMMは自分に何も考えず東京から離脱せよと告げた。そして雅に下った指令は魔術師の救護

つまりはAMMはこの惨劇から魔法使いのみを助け出したかったということだ

東京にすむ何百万という人の命よりもごく少数の魔法使いの能力を優先したということだ


「ったく、苦労したぜ。脱出できる範囲内でしか助け出せなかったが…まぁ、都心の有力な所は幸い留守だったみたいだし、もとより東京に魔術師が数えるほどしかいないのがラッキーだったな」

「なにがラッキーだ」


誠也は浦上の胸倉を掴むと樟葉と恵美が驚くほどの怒声をあげる


「大勢の命を見捨てて、何がラッキーだ!ふざけるな!本来なら俺たちは逃げる立場じゃねー!助ける立場だろーが!」


誠也の怒声に樟葉と恵美はびくんと肩を震わせた

誠也の怒りに、しかし浦上は臆さず


「もっともな意見だが、これが助けられる現状か?」


言って浦上は軽トラックの荷台に被せてあったシートを剥ぎ取った

その光景に誠也は言葉を失った


「これでわかったろ?東京の魔術師はほぼ全滅だ」


浦上雅はAMMより東京にいる魔術師を可能な限り救出せよという指令を受けていた

しかし、実際救出できたのはごく少数、それも皆絶望的な深手を追った者ばかりだ

ティマイオスのAMM潰しは徹底していたと言っていい


「渋谷を拠点にしてた啓太なんかは政府要人と皇室関係の救助指令を受けてたみたいだが、あっちはどうだったんだろうな」


浦上雅はどこか遠くを見る目でかつて東京があった、今は巨大な水結晶となった場所を見る



AMM極東支部、それは異空間に浮かぶ目を疑うほどの科学力を保持した人工島にあった

本来なら科学と魔術は水と油の関係、正反対に位置するものであるが

皮肉にも魔術という科学側からすれば非科学のその居城が現科学よりも先をいった科学力を保持していた

しかし、これら一見未来の科学に見える人工島の稼動動力はやはり魔力であり

この人工島の設計者はこれを科学の結晶とは名言しておらず、巨大な魔道具と言っている

その巨大な魔道具を一望できる中心部に聳え立つ巨大なタワー

その中に日本の魔術師達に指令を送る指令室があった

その司令室では巨大な室内の壁一面に浮かび上がるモニターに東京二十三区の地図が映し出されていた

指令室内は慌しく、画面には刻々と被害状況が映し出され、室内は物々しい空気に包まれていた


戦場のように慌しい司令室の中でAMM極東支部長、山北琢斗はこの事態にはらわたを煮えくり返していた

奇妙な磁場異変と異常な呪力噴出が各地があったかと思うと二十三区を覆うように術式が組みあがったのだ

すぐにそれがマヤの生贄の儀式とわかったが、同時に都内各地の有力拠点が襲撃され壊滅

先手を封じられていた、慌てて無事な魔術師に警戒と救援要請という後手に回るはめとなった


「くそ、これほどまでの行為。一体どれだけの帰還潜伏して準備していたというのだ」


苛ついて机を叩く、その時山北琢斗に通信が入った

それはAMM統括総本部からのものだった

クラス1の緊急招集。世界もこれには危機を感じているということか

そう思い山北琢斗はAMM総括総本部へ向かうため移動デッキへと向かう


霊脈を利用した遠距離渡航によりAMM支部と総本部はわずか数秒で行き来が可能であった

そのため山北琢斗は思考を巡らす暇もなくAMMの総本山に到着し


「なっ…な、なんだこれは!?」


驚きの声を上げた


AMM中央情報解析センター

巨大なホールの中央に丸い輪のような電光掲示板があり、輪を情報がグルグルと流れていく

その下では人々が慌しく動いて様々な所にあるディスプレイには世界各国の状況が映し出されていた

そう日本ではなく、世界各国の状況が

当然、その中には東京も映し出されていた

もっとも大きな画面には欧州を中心とする世界地図が映し出されており、まるで埋め尽くすように各地が赤く輝き不快な警告音を発していた


「これは……」


山北琢斗は周囲を見回す、画面には各地の映像が映っている

ロンドンが、ワシントンD.Cが、モスクワが、パリが、ベルリンが、北京が

世界中の主要国の首都から数多の国の首都が東京と同じく水結晶パワークリスタル化していた

この光景に山北琢斗は身震いした


「一体…世界で今何が起きているといるのだ!?」



AMM総括総本部内のとある施設、巨大なホールに多くの人が集まっていた

国連の安保理事会というよりは、スターウォーズに出てきた元老院議会に近い形のそれはAMM緊急招集会議

世界各地の支部長が一同に会し、緊急事態に対処する場だ

その緊急招集会議で取り扱われる議題は言うまでもない


「生贄の儀式が発動したのは全世界同時だったそうですな。ゆえに互いに情報交換ができなかった。世界各地で起きたことで磁場が乱れたのも要員の一つでしょう」


ホールの中央に立つ老人が老人とは思えぬほど達者な口ぶりで話す

老人の言葉にホール内の誰かが質問する


「犯行声明は出ていないのか?これだけの規模で事を起こしたんだ。AMMへの宣戦布告があってもおかしくないだろう」

「世界各地のこの惨状事態が宣戦布告のような気もしますが、今だ犯行声明は届いてません…ただ」


老人はそこで言葉を区切り、チラっとホールの中の数名に視線を向ける


「これを引き起こした連中と接触、戦闘状態に陥った地域があります」


ホールの中が一斉にざわつきだす

老人は溜息をつくと語り始めた


「ひとつはロンドン。テムズ川から突如何者かが水流をまるで蛇のように操って現れ、ビッグベンの頭上に鎮座し生贄の儀式を起動させたようです。ウェスタミンスター寺院やロンドンタワーに在住していた屈強な魔術師達の攻撃も簡単に退け。術式発動後は突如姿を消したとか……報告から恐らくはスクライング使いかと」


ホールの中がより一層ざわつきだす。スクライングは近代西洋魔術では基礎基盤的な位置づけでしかないが

それに特化し強力に扱えるものは世界でも数えるほどしかいない


「もうひとつがワシントン。まるで合衆国を挑発するようにホワイトハウスの尖塔に魔術師が舞い降りて生贄の儀式を起動したとか…SP内の魔術部隊が挑むも壊滅。格好や術式からネイティブアメリカのシャーマンと推測されます。また仲間と思われるブードゥー魔術を扱う術者とも交戦。敗北しています」


イギリスが魔術の国でロンドンがその魔都だとすれば、アメリカは正反対の位置にある

新興国で世界を牛耳る立場に近い存在にいる圧倒的軍事力と経済力を誇る

まるで魔術と取って代わって世界を支配した科学そのもの

英国が魔術を象徴するならば米国は科学を象徴している

その米国の脳ともいうべきホワイトハウスで堂々と生贄の儀式を起動させるとは正気の沙汰とは思えない


「最後が東京。かの事件での英雄が重要人物と交戦しています」


沖山誠也は二年前の事件で魔術界では一躍有名となり、一部は彼を英雄と称する


「その英雄の弟子が、同じく重要人物の弟子と交戦。敗北したようです。生贄の儀式はその重要人物の弟子が起動させたとか」


重要人物。その言葉にホールの中が静まり返る


「その重要人物の名はロニキス・アンドレーエ」


ホールの中が一気にわざつく、その名に誰もが驚愕する

それは二年前までAMM側の人間だった男だ

元AMM欧州総括本部長。カバラにおいては右に出るものはいないとされ、欧州にその名を轟かせたグノーシス主義者

それが出てきたという事は


「魔術結社ティマイオス」


誰かが口にした

それは今までAMMがほぼノーマークだった団体だ

古くからその存在が確認されていたにも関わらず。規定違反集団のレッテルも貼られず、危険視されなかったのには理由がある

存在は確認されていても、一体何を目的とした団体なのか、誰が首領なのか、構成員の規模がどれほどのものなのか、AMMや魔術界にとって危険分子なのかすべてが謎だったからだ

謎というのは本拠地もわからず、これといった活動も見られないからだ

ようは名前はあっても実体がない集団だったわけだ

長い歴史の中でたまにその名が背後にあるのではないかと推測される大事件、事故はあったが

幽霊のように痕跡がないため確証がなかった

一種の都市伝説、空想の中の団体と言う者もいた

それでもティマイオスの噂が消えなかったのは有力な魔術師が魔術結社やAMMを抜けたり裏切った場合、必ずといっていいほどティマオスに渡ったという話が流れるからだった

世界の闇の更なる影。魔術界の暗部。それが魔術結社ティマイオスだった


「ティマイオスの規模。構成員。活動範囲は長く不明。ゆえに危険度も不明だった。それ以前にあるかどうかもわからない結社を潰すなど愚の骨頂ゆえに討伐隊も編成できなかった。強大な力を持つ魔術師がいると知りながらな」

「だが、これではっきりしたでしょう。ティマイオスは存在する。そして今ついに世界に牙を向いた。しかも魔術界のみならず全世界に」

「これだけの地域でこれだけの規模の大魔術を同時に行える。補佐役が術者の他に最低三名いると仮定して。水結晶パワークリスタル化した都市の数の三倍以上いるということになりますね」

「AMMの魔術師を戦闘に投下しても泥沼は確実ですね」


ホールの中は混沌に包まれた。突如世界に牙を向いた底知れぬ謎の結社に誰もが戸惑いを隠せない



千葉県と東京都との県境に一つのビルがあった、それはAMM極東支部が用意した東京から脱出した魔術師のための仮の監視施設だった

そのビルの八階の一室、そのベランダに誠也はいた

落下防止用の手すりに体を預けて水結晶パワークリスタルと化した東京を見る

後ろのベランダの窓からは部屋の中の喧騒が小さな音で漏れている

中では樟葉と有紀が真紀に魔法使いとしてのレクチャーをおこなっている

恵美の見立てでは霊媒師の素質があるようなので、この際霊媒師として覚醒させてしまえという魂胆らしい

今は一人でも仲間がほしい時、気持ちはわかるが、たとえ目覚めたとして実戦投入は無理だろうと誠也は考える

同じ魔法使いでも戦闘に特化したもの、占いに特化したもの、練金に特化したものでは使える要素が違ってくる

霊能力は霊や精霊獣、呪いには有効であっても魔術師という同じ人が相手では戦闘には繰り出せない

彼女が霊媒師として目覚めたところで自分たちと共に戦えはしないだろう


「考え事?」


ベランダの窓を開けて恵美がベランダに出てきた、窓が開いたことによって部屋の中の喧騒が漏れて聞こえたが、すぐに閉められたことによって静まる

恵美は誠也の横に立つと壁に背を預けて大きく伸びをした


「それにしても大変なことになったね……これからどうなるんだろう?」

「さぁな……ひとつ言えることは、これで連中の攻撃が終わるとは思えない。また何がしでかすに決まっている、そしてそれを止める」

「うん、そうだね……相手が誰であろうと私たちは勝たなくちゃいけない。皆を守るために」

「世界を守る。皆を救う、か……嫌でも思い出してしまうな」


誠也は自分で言って表情を暗くした。恵みも黙りこんでしまう

できることなら触れずにしておきたい記憶が蘇える

二年前のあの事件、でもそれは無理だろう

ロニキスが出てきた。その時点で過去と今は繋がってしまった


「樟葉ちゃん、大丈夫かな?あの時のこと思い出して」

「心配ないさ。樟葉は強い、そう信じてるから。樟葉が挫けないよう支えるのが俺たちの役目だしさ」

「俺たち……ね」


恵美は表情に暗い影を落とす、だがそれに誠也は気付かない


「それにしても魔術結社ティマイオス、か……一体何を考えてる集団なんだろうね?こんな都市をまるごとクリスタルにして」


さりげなく話題を変えた恵美だが、誠也は少し黙り込んで


「それなんだけどな、さっきまで考えてたんだけど」


そこまで言って言うか言うまいか悩んだのち


「なぁ川本。ティマイオスと聞いて何を連想する?」

「へ?何をってこれから戦うべき相手でしょ?」

「違う、そうじゃない。魔術結社としてのティマイオスは考えないでそれを聞いたときだ」

「えっと……」


恵美は考えてある一人の歴史上の人物に思い至る


「まさか…プラトン?」


哲学者プラトン

紀元前の古代ギリシアを生きた哲学者だ

ソタラテスの弁明などの著書を残し。イデア論などを展開した

人を肉体と魂とにわけて理論的に考えた初めての人物でもある

そんなプラトンが残した著書の中に魔術界や後の思想に大きく影響を及ぼすこととなるものがある

それこそが「ティマイオス」だ


ティマイオス、それは続編であるクリティアスとあわせて後に多くの思想や宗派に影響を与えている

アレクサンドリア学派にシャルトル学派、強いてはグノーシス主義までも影響下にある

そして今日に至る現代でもっとも影響を受けているのがオカルト分野だろう


ティマイオス、それはとある超古代文明について触れている

その超古代文明伝説を有名にしたのは後の世の小説であるが、原典はティマイオスである

そして、その超古代文明はその題材の良さから本日に至るまで小説や映画などで度々取り扱われてきた

そした仮定からプラトンのティマイオスに出てくるものと、本日認識されているものとでは大幅なズレが生じている

そんな現代の歪んだ超古代文明像を元に今でも世界各地で存在していた場所を調査、発掘する者は後を絶たない

そして、その超古代文明が存在したとされる場所は世界各地で候補地があがっている、ここまでくるとどこにあったというより、どこにもないという

空想の話だという一般の意見が最もになってくるが、逆に言えば全世界を支配していたということにもなる


「確かにオカルトの人間なら誰でもそれを見つけようって思うだろうけど……それはあんまりじゃ」

「ロニキスの糞野朗は俺にリゾーマタ(幹部席)やクリティアス(首領補佐)にもなれるといった。こんな言葉を使うなんて今時オカルトマニアぐらいだろ」


リゾーマタはプラトンがティマイオス内で論じた四大元素、地、水、火、風からなる四大元素説のことだ


「それもそうね…首領補佐がクリティアスと呼ばれてるなら。仮に首領をヘルモクラテスと呼んでたらビンゴね」


ヘルモクラテスはティマイオス、クリティアスに続く三部作の完結編とされるものである

とある超古代文明の説明はクリティアスでは完結しておらず三作目ですべて語られるはずだったが、これをプラトンが書く前にプラトンは死んでしまっている


「もしかしたら、未完のヘルモクラテスこそが連中の目的かもな」

「それってどういう?」

「さぁ、そこまでわからないよ。ただ、樟葉たちの話じゃ術式を起動した女の子は自分たちのことをかつての栄光を取り戻す使徒、偉大な夢を体現する者と言ったんだろ?だとすれば」


かつての栄光。これをとある超古代文明と仮定すれば、それを取り戻す使徒とはつまり……

偉大な夢。これをヘルモクラテスと仮定すればそれを体現する者とはつまり……

だとすれば魔術結社ティマイオスの目的とは


「アトランティスの……復活?」


見上げれば夜空には多くの星が輝いていた、東京という大都市が消えたことによって夜の明かりが減ったためだろうが

恵美にはそれが何が得体の知れない恐怖に感じた

神代の時代の遺産が今世界を混沌に陥れている

これから先世界はどうなってしまうのだろうか?

肌を刺す冷たい風が未来を暗示しているのかような錯覚を覚えた


これが世界とティマイオスとの戦争の幕開けであった

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