7話 遅刻少女
さてさて、今日は待ちに待ったアメリカ留学が始まる。
昨日愛に一昨日LINEを返さなかったことを謝ったら、「別に謝らなくていーよ!単語帳作ってくれてたんでしょ?」と僕のことを許してくれた。そして、埋め合わせに夜遅くまでLINEで話していたのだが、彼女は集合場所にいない。
……そう、愛は寝坊したらしい。空港への集合時間は出発の1時間前と言われていて、僕と愛はさらにその30分前に来ようと話していたが、その時間になっても愛は来なくてLINEをしたところ、「今から行く!」と返信が来たのはその15分後だった。愛の家から空港までだと30分はかかるので見事に遅刻しているのであった。
僕は他校の参加者らと自己紹介をした。僕と愛を含めて、今回の留学には15人が参加する。まあ名前を覚えられたのは、県内最強で全国でも輝かしい成績を残している高校のサッカー部のエースである川口元気くんだけだった。確かに以前なんかで見たインタビューで「将来は海外でプレーしたいので最低限英語は高校生のうちにでもマスターしたいです」と語っていたのを覚えている。
そうこうしていると愛が息をゼェゼェ切らしながら到着した。引率の人にこっぴどく叱られた後に愛のために全員もう一度軽く自己紹介をし直した。愛は真面目に全員の名前をメモにとっていた。
そして搭乗可能な時間になり、僕らは飛行機に乗った。もちろん僕と愛は隣に座った。2人して耳栓をつけてお互いの作ってきた単語帳を交換して読み始める。見ると他の参加者達も同じように単語帳だったり英文法の本だったりを読んでいる。
だが、川口くんだけはなぜか自前らしきサッカーボールを拭いていた。彼はブラジルへのサッカー留学とでも勘違いしているのでは無いだろうか…
僕は再び愛が作ってくれた単語帳に目をやる。彼女の字は習字を習っていたとかでとても綺麗で読みやすかった。テストの際も解き終えるのがとても早いのに字の綺麗さは変わらずで僕も見習いたいところではある。
「ねえ、カズの字汚くて読めないんだけど」
ごめんなさい、君を見習って字を綺麗に書くようにします……