3話 ノート
僕は今日の出来事を振り返ってノートに記してみた。母さんの言う僕の行動と、僕の夢の中?での行動に分けて記してみた。
母さんの視点
1.昼食は一緒に袋ラーメンを食べた
2.その後部屋に行ってすぐにイビキをかいていた
3.長髪の女の子が僕がバイクに轢かれたと駆け込んできた(僕が寝ている時と思われる)
4.17時37分に目が覚めた
5.リビングに移動、母さんと話す
6.部屋に戻り財布などの中身確認
夢の中?
1.昼食は外で1人でカレーを食べた
2.役所に行った(この際に所長に変なことを言われた)
3.イライラしながら役所を出て信号を待つ
4.バイクに轢かれそうになった
5.女性に目を隠され気が付くとベッドに(ここからは母の視点の4.5.6と同じ)
このようになったわけだが、母さんの視点の内容に関しては全て証拠が残っており、おかしいのは女の子の発言のみである。そして、夢の中?での行動はどれも証拠が残っておらず、現実味に欠けている節がある。ただ、夢の中でのバイクに轢かれそうになった出来事が実際に起こっていたとすれば、母が言う女の子の存在は不自然なものでは無くなる。(轢かれてはいないが)
「ふう……意味が分からん」まあ、母さんの言っている内容が整合性もあるし正しいのだろう。僕は眠りにつくことにした。まだ9時前だし男子高校生にしては寝る時間が早いように思えるが、ちょうど去年の夏休みの短期アメリカ留学から帰ってきて以来、酷く体が疲れたりしていて早く寝る習慣がついたのだ。今日はどうしてかまだ体力に余裕があるが。
……寝ようとは思ったが寝れない。
なぜか今まで思い出すことは無かったのだが、アメリカへの短期留学の際に、一緒に同行した学生と現地の学生29名が銃乱射事件に巻き込まれて死んだのだった。僕もその場に居合わせたが、僕だけが無傷で生還してきてしまった。あの時の皆の姿が今になって鮮明に蘇ってきて僕のことを苦しめる。生きたい、まだ生きたいと虚ろな目で僕のことを見つめていた……
僕は彼らの分もしっかりと生きねばならない。そう決心した日曜日の夜であった。