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fragment   作者: 片栗粉
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2話 夢

  ベッドの上から見る景色はいつもと何も変わらなかった。時計を見ると17時37分を表示していた。窓からもオレンジがかった光が差し込んできていた。カラスもカーカー鳴いている。リビングの方から子気味良いリズムでまな板を叩く包丁の音がしていた。

 リビングに向かうと包丁で人参を切っている母の姿があった。調理台の上には切られたジャガイモと玉ねぎがあり、テーブルの上にカレールーもある。今晩はカレーらしい。


「あら、長いお昼寝だったこと」と人参を切り終えた母さんが僕に言う。僕は昼寝をしていたのだろうか。今日は役所に行ってきたし気づいたらベッドの上にいただけで寝た気はないのだが……


「僕がいつから寝てたかとか分かる?」と野菜を炒め始める母さんに問いかける。


「昼一緒にラーメン食べてからしばらくして部屋に行ったでしょ、そしたらすぐイビキ聞こえてきたけど?」と母さんは答えた。僕の記憶では今日は外でカレーを食べたはずなのだ。そこで着ていた白いシャツにカレーをこぼして悲しくなったのだが、カレーのシミなどどこにもなかった。


「今日カレー食べなかったっけ??外で」と僕は恐る恐る聞いた。


「あんた今日どこにも出かけてないでしょ。ゴミ箱の中見なさいよ。今日食べたラーメンの袋入ってるから」と母さんに言われてゴミ箱の中を見てみると、特盛味噌ラーメンと書かれた袋が入っていた。特盛を食べてからカレーを食べるなんて僕の胃袋が許さないだろう、記憶違いらしい。


「しっかりなさいよ。まだ18歳なんだからボケるような歳じゃないでしょ」と母さんは手際よくカレー作りを進めながら言う。


 一度部屋に戻って財布の中身を確認したが、昨日金を通帳から引き出してきた金額がそのまま残っていたし、レシートを溜め込んでしまう癖がある僕だが、今日の日付のものは何一つとして無かった。ひょっとしたら、あまりに精巧な夢で現実と混ざっているのかもしれないと思った。


 そして30分ほど過ぎてカレーの匂いが部屋にまで届いてきたので再びリビングに向かった。皿を出したり手伝おうと思ったが既に母さんが準備してくれていた。


「いただきます」2人そろってカレーを食べ始める。今日は父は出張で帰ってこない。父がいるときは食事の時テレビを消さなきゃいけないが今日はいないしテレビを点ける。



「そういえばさ」と母さんがテレビの音を少し下げて僕に話しかけてくる。なに?と僕は少し不機嫌になって言った。


「なんか長い髪の女の子があんたが寝てた時に来て、あんたがバイクに轢かれた~とか言いに来たんだけどなんだったのかしらね」


「…は?ちゃんと生きてるのに。それより母さんテレビの音量戻して」


「はいはい」と母はテレビの音量を上げる。僕は平静を装いながらカレーを食べて、母さんと僕2人分の皿を洗い部屋に戻り、ゆっくりと自分の今日の行動を振り返ることにした。




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