ロードマーマス城へ
さて、仕事の時間だな。
今日も時間ぴったりに行くとしよう。
コランダムが起きてしまう前に、さっさと支度を整えなければ…。
明日はコランダムとロードマーマス城に行くんだ。
さっさと仕事を終わらせ、休暇を取らなければ心が病んでしまう。
…オリビアは無事か。それだけが私の心配事だ。
「私がいない所で勝手にくたばってもらっては困るぞ、親友…。」
そもそも、何処に収容されているかも分からぬ。
それでは話にもならんな。
…オリビアがロードマーマス城に幽閉されていなければいいが。
そんなことを考えている暇はない。
彼は必ず生きて帰ってくる。
そう信じ、私は仕事へ向かう。
夜勤は何時も気が乗らない。
鉄鉱石を発掘するだけで、こんなにも労力や人力は必要だろうか。
いつまで掘っても茶の土や灰の石しか出てこない作業は疲れた。
こんなにして、ここの社長は源泉でも掘り出したいのか。
そう溜息をつきながら、同僚に話しかける。
「なあ、オリビアが捕まったらしいな。」
すると同僚は目を開き驚いた。
「…。」
ああそうだった。此奴はNG行動があるから言葉が話せないんだったな。
「また、例の事件かね。」
私はオリビアが捕まった理由を知っている。が、敢えて言わないでおこう。
また作業を始める。
いつまでも、石、石、石、石…。
そして、なにも発掘しないまま朝になる。
さて、時間も過ぎたし、家に帰るか。
ぎぃぎぃと不安になるようなエレベーターに乗り自宅を目指す。
道中、他の社の採掘家が何かを発見したらしく、宴をしているのを横目に、さっさとコランダムの元へ帰る。
ガチャ
「もう、仕事ならば行ってくれないと心配します! これだからおじさんは…。」
元気な声に目を覚まし、私はまた1日を過ごすことになるのか。
エプロン姿のコランダムは、正直かわいい。
いや、別にロリータだからって訳じゃなくてだな、そ、そんな如何わしいことを考えた訳では無い。断じてない!!
「おじさん、今日は例の日ですよ!ほら、ロードマーマス城見に行こう!あそこであいすくりいむっていう食べ物食べてみたいんだあ!!」
「ああ、そうだったね。仕事は有給を使ってるから大丈夫。馬車が来るまでに支度をしよう。」
「うんっ!」
あぁ、元気がいいな。
6歳だっけ?7歳だっけ?よく分からないが、ここら辺の時期は好奇心旺盛すぎる。
かわいいから良いがな!
「ねぇねぇ、ウサさん持ってっていい?お母さんが作ってくれたやつだから…。」
ほう、“お母さん”ね。
「ああ、いいぞ。でも、荷物が多いと歩くのが大変だぞ。おじさんは持つの手伝わないからな。」
「はあい!」
コランダムはブツブツと言いながら支度を続ける。
…この子が来てからというもの、私は癒されてばかりだ。
かわいいは正義、という言葉を残して消えた彼の気持ちがわかる気がする。
トントン
馬車が来たな。
支度に夢中なコランダムに声をかけようとしたが…何やらコランダムの声が消えた。
「…どうしたんだ、コランダム?」
コランダムは顔を真っ青にして、遂に倒れてしまった。
急いで馬車に乗せ、病院に行くように言った。
が、その必要はなかった。
コランダムはムクっと起き、家から荷物を持ってきた。無言で。
そして、ワクワクとした足取りで、こう言う。
「楽しみだね!」
顔はまだ青く、全然テンションが上がっているようには見えないが、どうしても行きたいという欲が強いのだろう。
…倒れたのは仕方が無いのだろうか。
馬車で2時間程揺られながら、漸くロードマーマス城下町に着いた。