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思い出を紡ぐ日々
時は大正。
国内外問わず激動の時代であった日本の地が国威の発揚に沸いた時代。
都市化が進み技術の大幅な発展を遂げたこの国は新時代への夢を抱いた。
たった十五年、されど十五年の間に人々はこの国の思潮や文化に魅せられた。
彼らはそれらを総じてこう呼んだ。
大正ロマン――。
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行き交う往来の一角に西洋の建築様式を取り入れた建物が違和感なく存在している。開国により西洋の文化が流れ込んできた日本の町はその姿を少しずつ変えていた。ハイカラなものにあふれ、機械技術も大きく発展することになり文化が色づき始めていた。
その西洋建築の片隅で、あるものに熱中する少女がいた。
首から紐でぶら下げたそれは重く、当時は高価なものであった。好きが高じるとはよく言うが既存の製品を自らの手で全く新しいものとして作り替えた。記録するものとしての機能を果たすそれを初めて見た時にそのフォルムに魅せられた。
その少女が手にしているのは写真機。独自の知識と手法で全く新しい写真機を作り上げ、大正の時代にもカメラ女子が現れた!