no,3
「もう! アオイはわたしのなんですから! ってズボンを脱がそうとしないで下さい!」
「大丈夫よサラ。アオイの心はあげるから、たまに体だけ貸してくれれば良いの」
「う~わ~! 大人が大人っぽい大人の発言をしてます!」
「頑張れ馬鹿~」
「抵抗してくださいよアオイ!」
「いや……人目が無ければ俺的には別に良いんで。つかお前がここに来たってことは部屋が空いたな。さあベッドに行きましょう」
「ちょっと待て~! 私に告白っぽいことをしておいて早速別の女の人ってどうなんですか! 良心は傷まないんですか!」
「うむ。この世の女性全てを相手してやれない甲斐性無しな己に対して良心が痛むな」
「何を言っても勝てませんよ! 知ってますよ! だからエスーナさん。わたしの目の前で何しようとしてるんですか!」
「……エッチなこと?」
「あ~も~!」
全力で遊ばれているサラが泣いて土下座して許しを請うまで、それは行われた。
祝賀会っぽい感じで繰り広げられている騒ぎは終わりを見せない。
遺跡の外で発見されて遺体だと思われていた者は、奇蹟的に無事で誰一人として死んでいなかった。
ただ遺跡の中はどうなっているのか分からない。
アオイもそのことに関しては深く語らない。
「それで何がどうしたらこうなったんですか?」
「俺が氷夢の何たらを封印しました」
「……良いです。知ってますから」
「で、無事解決して大宴会?」
「だ・か・ら! あれです。あれはどうなったんですか?」
「もうこの馬鹿は欲しがりさんだな~。あとで二人纏めて相手してやるから待ってなさい」
「あら……サラちゃんだと私に太刀打ちなんて出来ないわよ?」
「接客に戻ってください! ってアオイはわたしのです!」
「アオイはそんな風に思ってないみたいよ~」
うふふと笑いながらエスーナは食事を置いて接客へと戻る。
彼の隣に移動したサラは、その耳に顔を近づけた。
「対価は?」
「ん? 払ったぞ」
「……でも」
自分の体を見つめても特におかしな様子が見つからない。
アオイは黙って相手の頬を掴み左右に引っ張る。
「物凄く高くて厄介で一生掛けても払えんもんだ」
「いらい」
「だからお前も手伝え。死ぬまでな」
「……はひ」
ふんっと怒った様子で手を離し彼は食事に手を伸ばす。
引っ張られた頬を両手で摩りながら、サラは根本的な質問をした。
「それで何をするんですか?」
「ん? 漠然としてて困ってるんだよな~」
「はぁ?」
「まっ……とりあえず"あれ"でも拝む習慣をここに居る皆に植え付けることから始めるべ」
「あれ?」
クイクイっと店の奥を指さす彼に釣られ視線を動かし……サラは凍り付いた。
黒く清らかな長い髪。透き通るような肌は白く……その手足は細くて長い。残念なほど胸の膨らみを感じさせないが、有り余るほどに神々しくて美しい。
"神"と呼ばれる存在が、ワインの瓶をラッパ飲みしていた。
「ぷはぁ~。エスーナ。もう一本ね」
「は~い」
「お代は全部"弟"につけておいてね」
「喜んで~」
ガタガタと震えながらサラは隣に居る相手を見た。
「アオイ?」
「ん?」
「どうして居るんですか?」
「うむ。説明すると長くなるが聴くか?」
「聴いてから逃げ出すことは可能ですか?」
「馬鹿は馬鹿だな~だから馬鹿か。相手を見て物を言え」
もう後戻りは出来無いらしい。
ボロボロと涙を溢しつつ……サラは後で全てを聴くことにした。
流石にこの場所で聞くには恐ろし過ぎる無いようだろうからだ。
「なに……我が欲する対価など最初から決まっている。この世界に住む者たちの祈りだ」
「なら神らしいことをして崇めて貰えよチビ」
「うむ。しかし残念なことに……そんなことをしても誰も我のおかげとは思わない。故に我も地上に手を出さなくなってな」
「全体的にお前が悪い」
「非は認めよう。我も早くに眷属などを得てもっとこう……奴隷の様に働かせるべきであった」
「良し。今からでも遅くない無い。胸がばいーんな悪夢の魔王とやらに眷属にして貰えるように頼み込んで来る」
「……大きな胸の膨らみなどただの脂肪だ! 地の底まで落ちるが良い! あの糞年増が!」
何かを思い出したように神は地面に向かい拳を振り下ろした。
一瞬地面が揺れたが……特に何か変化が起きた様子はない。
「何をした?」
「ふんっ! もう一生地上に出て来られないように、この遺跡のダンジョンを地下1千階までにした。これであの年増は二度と出て来れまい」
「胸と器が小さいぞ神よ」
「黙れ! 人間如きが突破出来ない様に、古今東西のあらゆるモンスターを配置してやった。これでもうアイツの復活はあり得んわ」
薄い胸を大きく反らして神は高らかに笑う。
脱力気味にそれを見ていたアオイは……とりあえず目の前の問題を解決することにした。
「で、俺はお前の為に布教活動をすれば良いんだな?」
「その通りだよ人間。やけに素直だな」
「人質取られてますから」
「確り働けばその魚に手を出すことは無いと誓おう」
「いやほら……別の女性に目移りするかもよ?」
「ならその魚が死んでも気にもなるまい」
「……へいへい。俺の負けで良いですよ」
「神に勝てると思うな」
胸を張るチビを殺したいほど憎くなって来た。
これは少々お灸をすえる必要があるとアオイは判断した。
(C) 甲斐八雲




