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プロローグ
辺りは一面白いもやに包まれ無限に続く様ななか、舟へりにあたる波の音と梶を漕ぐ音だけが響いている。男は、舟に伝わる波と長年の経験を頼りに、穴場の漁場へと船を進める。
男は村の中でも一番の漁師であり、水温がまだ冷たく食いつきの悪いこの時期でも型の良い魚をとって来る。
今日も穴場へ向かう途中、普段無い波の乱れを感じ前方に目を凝らす。もやが段々明るくなっていく中で壁の様な灰色の影が現れた。段々近づくにつれそれが巨大な船だと気づいた。男は船の針路から逃れるため大慌てで梶漕いだ。