004.バリアの中の王様
『レベルが10に上がりました。
【体術】を取得しました。
【体術】がレベル2になりました。
【剣術】を取得しました。』
殺したわけじゃないけど、ライルゲバルトを倒したことでレベルやスキルが上がったみたいだ。
早速ステータスを確認してみた。
┌─<ステータス>─
│名前:丸山 誠司
│職業:SE
│状態:(言語一時習得)
│
│レベル:10
│HP:247 (+157)
│MP:2277 (+157)
│
│力:24 (+15) 耐久:24 (+15)
│技:74 (+14) 魔力:228 (+16)
│
│スキル
│【時空魔法】
│ (レベル:MAX、レア度:★★★★★)
│
│【情報魔法】
│ (レベル:MAX、レア度:★★★★)
│
│【体術】★NEW
│ (レベル:2、レア度:★★)
│ ・足払い
│ ・カウンター
│
│【剣術】★NEW
│ (レベル:1、レア度:★)
│ ・斬り下ろし
└─────────
なんだか色々上がっている。レベルは10だが、ステータス的にはライルゲバルトをだいぶ上回ってしまい、もう一度戦ったらかなり余裕で勝てそうだ。
しかし、スローモーションの相手と戦っただけで、こんなにレベルやスキルが上がるなんて、【時空魔法】お得だな~
俺はライルゲバルトの血が滴り落ちる剣を、これ見よがしに持ったまま、ゆっくりと王の前に歩み寄った。
王は青ざめて怯えていた。
「さて、王様、これはどういう歓迎なのかな?」
「何をしている! 皆の者、コイツを引っ捕らえよ!!」
しかし、誰も動かなかった。
「こ、これは、ちがうのだ。ライルゲバルトの奴が勝手に……」
今『引っ捕らえよ』とか言ってたのに、言い訳が見苦しいな。
俺は、さっき【追跡】で聞いた王様とライルゲバルトの会話の映像と音声を、【再生】してみた。
『ライルゲバルト、お前に仕事をやろう』
『はい王様、どのような仕事でしょうか?』
『わしがあやつの注意を惹きつけておくから、後ろから斬り殺せ』
『分かりました、おまかせを』
初めて使ったスキルだったので、ちょっとだけコントロールをミスって、大音量で再生されてしまった。わざとじゃ無いよ、ホントだよ?
映像は、部屋の中央付近に、立体的に映しだされていた。
部屋中に大音量で再生される、王様とライルゲバルトとの会話。再生が終わると、部屋中の人たちがざわざわし始めた。
「今のはなんなんだ!」
「あなたとライルゲバルトさんの会話を、録画録音したものですよ」
「ろ、録画録音だと・・」
「王様は、はっきりと『斬り殺せ』って言っちゃってますね」
王様は青い顔をして、ぷるぷる震えだした。
「わしは王だ! 平民ごときの命をどう扱おうが、わしの自由だ!」
逆ギレかよ! 日本は民主主義国家だから、俺は平民じゃないし。
「つまり、俺が生き残るためには、この国を潰さないといけないということか? この国を潰すには…… 王を殺すのが、一番手っ取り早いかな?」
「王であるわしを、こ、こ、殺すというのか!?」
「俺が生き残るには、そうする以外に仕方ないんだろ? ホントはこんなことしたくないけど、仕方ないよね」
俺は、ゆっくり王に近づいていった。
「や、やめろ! だ、誰か!こいつを殺せ!! は、早くしないか! だ、だれか!!!」
しかし、誰も動こうとはしなかった。
更に俺が近づくと……
「ぎゃー!」
王は、みっともない悲鳴を上げて逃げ出した。
「【バリア】!【バリア】!【バリア】!【バリア】!」
俺は、逃げ出した王の周りに【バリア】を貼り、四方を取り囲んだ。
「な、なんだこれは!? 見えない壁だと!? で、出れない!!」
「何処へ行こうというのかね? 王様~」
「く、くるな!来るなというとろうに!」
王は怯えきっていたのだが、何か、いいアイディアを思いついたようだ。
「そ、そうだ! お主は、元の世界に帰りたくないのか?」
「なんだと?」
「くくく、わしを殺せば、お主は元の世界に帰れなくなるぞ!」
「なるほど、そういうことか」
「わかったのなら早くわしをここから出せ。そして魔王を倒してくるのだ。さあ、早くするのだ!!」
「嫌だね!」
「な、なんだと!」
「アンタが約束を守るとは到底思えない。それに、魔王って言ってるけど、俺は魔王にあったことがないから、悪いやつなのかどうかなんて判らない、アンタのほうがよっぽど悪人なんじゃないの?」
「何をバカなことを。わしが魔王より悪人だと! わしは王なのだぞ!!」
「自分のしてきたことを思い出してみろよ! この国と何の関係もない俺を拉致して、騙して奴隷にしようとして、それが失敗したら不意打ちで殺そうとして、挙句の果てに帰りたくば魔王を倒して来いだ。アンタより悪人なんて、この世界に存在しないんじゃないの?」
「ぐぬぬ」
「あんたらは俺のことを勇者って呼んでたけど、勇者は勇者らしく、この世界で一番の悪人を、討伐するべきなんじゃ無いのか? ここに居る皆さんはどう思う?」
周りの人達は急に質問されて、ざわつき始めた。
「わしが悪人で、勇者に討伐されるだと!? わしは王だ! 悪人ではないぞ! 皆の者、そうであろう!」
しかし、周りの人達はざわざわしたまま、王の問いかけに答えるものは、誰も居なかった。
王は誰も答えてくれない事に愕然とし、膝から崩れ落ちた。
ちょっとやり過ぎたかな?
俺は、さっさと退散することにした。
「王よ、今回は命までは取らない事にしておくが、また同じ過ちを犯すなら、その時は容赦はしない。俺はいつでも監視している、覚えておくように。では、さらばだ!」
俺は、手に持っていた血の付いた剣をインベントリにしまってから、【瞬間移動】を使ってその場を立ち去った。
魔法取得の整合性の為に思いつきで主人公を大学生から30歳のオッサンに変えてしまったけど、色々考えてたストーリーと辻褄が合わなくなってしまったorz
思いつきで設定を変えてはいけない→戒め
感想お待ちしております