419.大爆発
本日2話目です。
和菓子などのMP回復アイテムは、
これまでの戦いで、すべて使ってしまった。
「これが、最後の一個か」
俺は、最後に取っておいた『ヒルダ飴』をインベントリから取り出し、
口の中に放り込んだ。
ヒルダ飴の優しい甘さが、体に染み込んでくる。
そのMPを呼び水にして、MPを回復させていく。
今まで使うことがなく、インベントリの肥やしになっていた
『体力回復薬』も飲んでおく。
ケガまでは治らないが、ないよりはマシだろう。
タコの様子を警戒しつつ、
ある程度回復してきたMPを使って、
足の回復に取り掛かる。
足の状況を確認すると、
骨が折れて、皮膚を突き破っていることが判明した。
【回復魔法】を使って折れた骨を、無理やり元に戻す。
かなり強引に骨を戻したので、
ものすごい痛みが、体を駆け巡った。
激しい痛みに、気を失いそうになるが、
俺にしがみつきながら泣いている雷精霊の声とぬくもりが、
俺の意識を呼び戻してくれた。
次に、出血を止める。
大きな血管を無理やりつなぎ合わせる。
破れた皮膚も、とりあえず血が流れ出さないように修復。
血管のいくつかが、異物によって詰まってしまっていたが、
大きな異物は【時空魔法】で取り除き、
あとは、血流を一気に上昇させて、細かいものは無理やり流してやる。
傷口から入り込んだ異物やバイキンは、
魔法で白血球などの活動を刺激して活発化させ、除去していく。
それに応じて体温が上昇していくが、今は我慢だ。
後は、
切れた筋や筋肉を修復していき、
各細胞に水や酸素などを送り届けていく。
だいぶ強引だったが、
なんとか8割ほど修復を終えることができた。
「そろそろいいだろう」
俺は、痛みを我慢しつつ、
立ち上がった。
「セ、セイジ!
もう大丈夫なのか?」
「まだ少し痛いけど、これくらいなら平気だ」
「よかった、セイジ」
雷精霊は、俺の胸に飛び込んで抱きついてきた。
もっとサバサバした娘かと思ってたんだけど、
こんな一面もあったんだな。
俺は、雷精霊の頭をナデナデしてあげた。
「さて、
そろそろ、タコにとどめを刺しに行こうぜ」
「うん、でも、どうするんだ?」
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雷精霊を連れて、タコの頭の上から滑り降り、
少し高い位置から、フジャマ山に着地する。
「いてて」
着地の衝撃で、また足が痛くなってしまった。
その場で【回復魔法】を使い、少し回復させた。
回復はある程度で済ませて、
状況を確認する。
「やっぱりだ」
タコは、瀕死状態だが、
フジャマ山のてっぺんにかじり付き、
触手を山に突き刺して、
なんとか宙に浮いている状態だった。
おそらく魔力で体を軽くしているのだろう。
このままタコを倒すと、
すべての体重がフジャマ山にのしかかり、
山が崩壊してしまうだろう。
「やはり、あいつらに頼らないとダメだな」
あいつら……。
来てくれるだろうか?
まあ、来てくれなかったら、
その時は、別の方法を考えよう。
「【風精霊召喚】! 【水精霊召喚】!」
「ひぃ!」「きゃぁ!!」
なんとか、出てきてくれた。
しかし、2人で抱き合ってブルブル震えている。
出てきてくれただけでも、よしとするか。
「怯えなくても大丈夫だ。
タコはもう瀕死だ。
とどめを刺すために、2人の力が必要なんだ。
協力してくれるか?」
「ほ、ほ、ほ、本当に、
だ、大丈夫なのですか?」
「ななな、なにを、
すすす、すれば、いいのですか?」
こんなに怖いのに、出てきてくれたのか。
「それでは、最後の作戦を開始する。
水精霊、まずは空中に水を出してくれ」
「ひゃい!」
水精霊が、俺の指示通りに水の玉を発生させる。
「次は、雷精霊と俺の出番だ」
「おう!」
俺と、雷精霊は、【核融合の魔石】を2人で持ちながら、
水の玉にもう一方の手を挿入する。
「行くぞ!」「おう!」
「「【電気分解】!!」」
2人で【電気分解】を発動させ、
水の電気分解を行う。
「次は風精霊。
俺たちが発生させた水素をコントロールするんだ」
「は、はい」
水素が、徐々に集まっていく。
「そしたら、その水素をタコの口の中に」
「はい!」
タコの口は、フジャマ山のてっぺんにかじりついている。
その口の中に、『水素』が吹き込まれていく。
タコは、抵抗しようとしたが、
それだけの力は残っていないらしく、
されるがままだ。
「良し!
このまま、もっと速度を上げていくぞ!」
「ひゃい」「はい」「おう!」
大量に発生させた水素は、勢い良くタコの口の中へ。
4人の力を合わせて、作戦を続けていると、
タコに変化が訪れた。
ボコッ!
タコは、大量の水素を送り込まれ、
その浮力に負けて、
かじりついていたフジャマ山のてっぺんから離れて、
空中へ、浮き上がってしまったのだ。
しばらくは、触手で山に張り付いていたのだが、
その抵抗も虚しく、
1本また1本と、山から触手が剥がれていき、
ついには、タコ全体が完全に空中に浮き上がってしまった。
「やったぞ!」
「あらー」「いぇーい」「すごいです!」
山よりでかい超巨大タコが、空へと登っていく。
だがしかし、これで終わりではない。
「よし、タコ風船を移動させるぞ」
「移動?」
「どこへ移動させるのですか?」
「そうだな、ここから東の方に海が広がっていたから、
そこにしよう」
「はい」
俺は、再び竜に変身し、
3人を鼻先に乗せて飛び立った。
「雷精霊は、少し休んでいてくれ、
他のメンバーで、タコ風船を東へ移動させるぞ」
「「はい」」
風精霊が風を吹かし、
水精霊は水の勢いで、タコ風船を押し、
俺も、風のブレスで手伝いをする。
はじめはゆっくりだったが、徐々に移動速度も上がり、
超巨大タコ風船は、どんどん東へ流されていく。
フジャマ山上空を越え、
王都上空を通り過ぎ、
草原を抜け、
森を越えて、
やっと海へと抜けた。
「もう少し沖へ」
「「はい」」
暫く進むと、タコ風船に変化が現れた。
どうやら、水素が抜けてきてしまったらしく、
高度が落ちてきて、水面スレスレになってきたのだ。
「よし、もうこれくらいが限界だ。
風精霊と水精霊は、少し後ろで待機
雷精霊と俺とで、とどめを刺すぞ!」
「「はい」」「おう!」
風精霊と水精霊が下がったのを確認し、
俺は竜化を解いて、服を着て、
【水の魔法】を使って水上に降り立った。
「では、2人でとどめを刺すぞ」
「おう!」
俺と雷精霊は、一緒に【核融合の魔石】を持ち、
大きな声で、とある言葉を叫んだ。
「バ○ス!」
叫び声とともに2人で発生させた電撃は、
水素でいっぱいに膨れている超巨大タコに直撃した。
「逃げるぞ!」「おう!」
俺は、雷精霊を連れて、風精霊水精霊が待機している場所まで飛ぶ。
どおおおおん!!!!!!
遠くで超巨大タコ風船が水素爆発を起こした音が聞こえた。
水素爆発と言っても、核融合反応ではない。
単なるガス爆発だ。
音から少し遅れて、爆風が、
さらに遅れて波が来たが、
これだけ離れていれば、街の方へは被害は出ないだろう。
「セイジ、やったのか?」
「ああ、俺たちで倒したんだ」
「し、信じられません」
「信じられない……」
長く苦しい戦いだった……。
その戦いも、俺たちの勝利でやっと、幕が下りた。
俺たちは、水上で
抱き合って勝利を喜びあった。
そして……、
レベルアップを知らせる声が、
聞こえてきた。
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