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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
王国の危機編
417/438

407.噂話


「リルラ。夜遅くに、すまん」

「セ、セイジ。どうしたのだ?

 帰ったのではなかったのか?」


「いや、あの10人を俺の家に泊めることになったんだが、

 そのせいで、俺が寝るところがなくなっちゃってな~」

「そ、それで、私のところに来たのか!?」


「まあ、そういうことだ」


「セ、セイジが……こんな夜遅くに……寝る……。

 私と……い、いっしょに!?

 わ、私の初めてが、ついにセイジに……」


 リルラが……何かブツブツいい始めた。

 もう時間が遅いから、寝ぼけて寝言をいっているのかな?



 立ったまま寝言をイッているリルラは、ほっておこう。


-----

 俺は、住民たちが避難している大部屋へ移動した。


「ちょっとすみません、この場所を使ってもいいですか?」

「ああ、かまわないよ」

 少しだけ場所を空けてもらって、

 そこで寝させてもらうことにした。



 しかし、けっこう広い部屋なのに、避難民でギュウギュウだ。

 他の人の話し声も聞こえている。


「リルラ様は、なんとお優しい方なんだ。

 ご自身のお屋敷を、我々のために開放してくださって」

「それよりすごいのは、このお屋敷を包む魔法の壁だ。

 雨も風も入ってこない」


 住民たちが、リルラの噂話をしている。

 だいぶ住民たちからの支持率が高いらしい。


 まあ、バリアは俺が張ったんだけどね。



「リルラ様が王様になれば、この国はもっと住みやすくなるんじゃないか?」

 リルラが王様ね~。

 王様、国民にこんなことを言われてるぞ?



「リルラ様もすごいけど、エレナ姫様もすごいらしいぞ」

 あ、エレナの噂もしている。


「エレナ姫様は、各地のケガ人を治して回っているらしい」

「ああ、何とお優しい」

「エレナ姫様は、身分も申し分ないし、王様になる可能性は高いよな」

「エレナ女王様か~。おやさしい女王様になりそうだ」


 いいなそれ!

 使えない王様を、エレナに気づかれないようにぶっ殺して、

 その後釜にエレナを……。



 なんて! そんなこと、しないけどね。

 なぜか4月1日じゃないのに嘘をつきたくなってしまった。どうしてだろう??



「あと、エレナ姫様の側近の冒険者もすごいらしいぞ」

 ん? もしかして俺のことかな?

 なるべく目立たないように行動してたのに~。困っちゃうな~。


「エレナ様より幼いのに、ものすごい火の魔法を使うんだ」

 あれ? ヒルダのことか……。

 まあ、ヒルダも最近頑張ってるもんな。

 噂になるのも仕方ないよな。



「そう言えば、たまにしか見かけないけど、

 黒髪のもいたよな」

 お、今度こそ俺の話かな?

 困っちゃうな~。


「そうそう、黒髪の、見たことのない短剣を使う女性」

 え?

 アヤのことかよ!



「活躍しているのは女性ばかりだな」

「男で活躍していると言えば……」

 今度こそ俺かな?


「ロンド様かな」

「そうだな、ロンド様だけだな」

「そうだそうだ」



 ……。


 くだらない聞き耳を立てるのは止めにして、

 俺は寝ることにした。



~~~~~~~~~~


ドスーン!


 真夜中。

 ものすごい音が鳴り響き、目が冷めてしまった。



「な、何事だ!」

「何かものすごい音がしたぞ!」


 避難住民たちも目を覚まし、大騒ぎを始めている。



ドスーン!


「あ、まただ!」

「何が起こっているんだ?」



 よくわからない音が、何度も繰り返し鳴っている。

 いったい何が起こってるんだ?


 音と振動は、かなり遠くから来ている気がする。

 しかし、雷でもないし、地震でもないし、ほんとに正体が分からない。



 兵士が1人、避難民をかき分け、俺に近づいてきた。


「セイジ殿、リルラ様がおよびです」


 リルラの部下が、俺を呼びに来たのか。


 俺は、急いでリルラのもとへ移動した。


-----


「リルラ、入るぞ」


 あれ?


 部屋に入ると……、


 リルラは、部屋の中央でうずくまっていた。



「リルラ……何してるんだ?」

 俺が、もう一度声をかけると……。



「セ、セイジ!」


 やっと俺に気がついたらしく、猛ダッシュして抱きついてきた。



「ちょっ、リルラ、どうしたんだ?」

「セイジ! もうダメ!

 怖いよ~。リルラお家帰る」


 うーむ、恐怖で幼児退行ようじたいこうしてしまっているようだ。



「おいリルラ。しっかりしろ」


 しかしリルラは、俺に抱きついたままブルブル震えている。



「仕方ない、夜遅いけどエレナを呼ぶか」


 俺がそうつぶやいた瞬間。

 リルラの震えが、止まった。



「何で、エレナ様なの?」

「ん?

 だって、ここは、

 各街との連絡中継用の『双子魔石式糸電話』があるんだ。

 リルラが動けないなら、各街との連絡ができなくなってしまう。

 代わりができるのはエレナくらいだろ?」


「イヤ!」

 何がイヤなんだか、ちっとも分からん。


「私が……ちゃんと連絡係する!」

「そうか、リルラは偉いな」

 きっとまだ幼児退行が抜けてないのだろう。

 それなのに、自分の仕事をまっとうしようとするなんて、偉いな。

 俺は、リルラの頭をナデナデしてやった。



「じゃあ俺は、あの音の正体を調べに行ってくる」

「セ、セイジ! いっちゃうの?」

「ああ。

 でも、ちょっと様子を見てくるだけだよ。

 なーに、心配することはない、

 様子を見たらすぐ戻ってくるさ」


 俺は、行動を開始すべく、

 抱きついてきているリルラの腕を外した。



「セ、セイジ。行かないで~」


 なーに、心配することは何もない。

 まったく、リルラは怖がりだな~。


ご感想お待ちしております。

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