407.噂話
「リルラ。夜遅くに、すまん」
「セ、セイジ。どうしたのだ?
帰ったのではなかったのか?」
「いや、あの10人を俺の家に泊めることになったんだが、
そのせいで、俺が寝るところがなくなっちゃってな~」
「そ、それで、私のところに来たのか!?」
「まあ、そういうことだ」
「セ、セイジが……こんな夜遅くに……寝る……。
私と……い、いっしょに!?
わ、私の初めてが、ついにセイジに……」
リルラが……何かブツブツいい始めた。
もう時間が遅いから、寝ぼけて寝言をいっているのかな?
立ったまま寝言をイッているリルラは、ほっておこう。
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俺は、住民たちが避難している大部屋へ移動した。
「ちょっとすみません、この場所を使ってもいいですか?」
「ああ、かまわないよ」
少しだけ場所を空けてもらって、
そこで寝させてもらうことにした。
しかし、けっこう広い部屋なのに、避難民でギュウギュウだ。
他の人の話し声も聞こえている。
「リルラ様は、なんとお優しい方なんだ。
ご自身のお屋敷を、我々のために開放してくださって」
「それよりすごいのは、このお屋敷を包む魔法の壁だ。
雨も風も入ってこない」
住民たちが、リルラの噂話をしている。
だいぶ住民たちからの支持率が高いらしい。
まあ、バリアは俺が張ったんだけどね。
「リルラ様が王様になれば、この国はもっと住みやすくなるんじゃないか?」
リルラが王様ね~。
王様、国民にこんなことを言われてるぞ?
「リルラ様もすごいけど、エレナ姫様もすごいらしいぞ」
あ、エレナの噂もしている。
「エレナ姫様は、各地のケガ人を治して回っているらしい」
「ああ、何とお優しい」
「エレナ姫様は、身分も申し分ないし、王様になる可能性は高いよな」
「エレナ女王様か~。おやさしい女王様になりそうだ」
いいなそれ!
使えない王様を、エレナに気づかれないようにぶっ殺して、
その後釜にエレナを……。
なんて! そんなこと、しないけどね。
なぜか4月1日じゃないのに嘘をつきたくなってしまった。どうしてだろう??
「あと、エレナ姫様の側近の冒険者もすごいらしいぞ」
ん? もしかして俺のことかな?
なるべく目立たないように行動してたのに~。困っちゃうな~。
「エレナ様より幼いのに、ものすごい火の魔法を使うんだ」
あれ? ヒルダのことか……。
まあ、ヒルダも最近頑張ってるもんな。
噂になるのも仕方ないよな。
「そう言えば、たまにしか見かけないけど、
黒髪のもいたよな」
お、今度こそ俺の話かな?
困っちゃうな~。
「そうそう、黒髪の、見たことのない短剣を使う女性」
え?
アヤのことかよ!
「活躍しているのは女性ばかりだな」
「男で活躍していると言えば……」
今度こそ俺かな?
「ロンド様かな」
「そうだな、ロンド様だけだな」
「そうだそうだ」
……。
くだらない聞き耳を立てるのは止めにして、
俺は寝ることにした。
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ドスーン!
真夜中。
ものすごい音が鳴り響き、目が冷めてしまった。
「な、何事だ!」
「何かものすごい音がしたぞ!」
避難住民たちも目を覚まし、大騒ぎを始めている。
ドスーン!
「あ、まただ!」
「何が起こっているんだ?」
よくわからない音が、何度も繰り返し鳴っている。
いったい何が起こってるんだ?
音と振動は、かなり遠くから来ている気がする。
しかし、雷でもないし、地震でもないし、ほんとに正体が分からない。
兵士が1人、避難民をかき分け、俺に近づいてきた。
「セイジ殿、リルラ様がおよびです」
リルラの部下が、俺を呼びに来たのか。
俺は、急いでリルラのもとへ移動した。
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「リルラ、入るぞ」
あれ?
部屋に入ると……、
リルラは、部屋の中央でうずくまっていた。
「リルラ……何してるんだ?」
俺が、もう一度声をかけると……。
「セ、セイジ!」
やっと俺に気がついたらしく、猛ダッシュして抱きついてきた。
「ちょっ、リルラ、どうしたんだ?」
「セイジ! もうダメ!
怖いよ~。リルラお家帰る」
うーむ、恐怖で幼児退行してしまっているようだ。
「おいリルラ。しっかりしろ」
しかしリルラは、俺に抱きついたままブルブル震えている。
「仕方ない、夜遅いけどエレナを呼ぶか」
俺がそうつぶやいた瞬間。
リルラの震えが、止まった。
「何で、エレナ様なの?」
「ん?
だって、ここは、
各街との連絡中継用の『双子魔石式糸電話』があるんだ。
リルラが動けないなら、各街との連絡ができなくなってしまう。
代わりができるのはエレナくらいだろ?」
「イヤ!」
何がイヤなんだか、ちっとも分からん。
「私が……ちゃんと連絡係する!」
「そうか、リルラは偉いな」
きっとまだ幼児退行が抜けてないのだろう。
それなのに、自分の仕事をまっとうしようとするなんて、偉いな。
俺は、リルラの頭をナデナデしてやった。
「じゃあ俺は、あの音の正体を調べに行ってくる」
「セ、セイジ! いっちゃうの?」
「ああ。
でも、ちょっと様子を見てくるだけだよ。
なーに、心配することはない、
様子を見たらすぐ戻ってくるさ」
俺は、行動を開始すべく、
抱きついてきているリルラの腕を外した。
「セ、セイジ。行かないで~」
なーに、心配することは何もない。
まったく、リルラは怖がりだな~。
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