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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
王国の危機編
414/438

404.穴掘り上手


 もうすぐ終業時間だ。

 あいつらは大丈夫だろうか?



『ちょっと敵が多すぎ……』

 アヤから、弱気な声が聞こえてきた。

 しかも、音声チャットではなく【追跡用ビーコン】からの音声だ。



 アヤのいるトキの街の海岸の様子を見てみると、

 魔物が大量に押し寄せてきている。

 ぜんぶ海産物系の魔物だ。


 タコ、イカ、クラゲ、クジラ、トビウオっぽいのやら、

 そして、そのすべてが陸に上がってきている。

 空中を泳いでいるやつもいる。


 街を攻めようとしているのか?

 そして、これも台風の影響なのか?



 しかし俺は重要な会議中なので、今は動けない。


 ヒーローがピンチに遅れてくることって、よくあることだけど……。

 その理由が、『仕事中だったから』というのも締まらない話だな。


-----


 トキの街。

 アヤが、苦戦していた。


 巨大なタコの魔物に片足をつかまれて、身動きがとれないのだ。



「きゃー!」

 とうとう、両足ともつかまれ、転倒してしまう。


「はーなーせー!」

 アヤは、振りほどこうとあがくが、振りほどけない。



 そして、逆さ吊りにされてしまった。


「やめろー」


 敵に言葉が通じるわけもなく、

 両手両足を捕まれ、完全に手も足も出ない状況だ。



 そして、おもむろに、

 一本の触手……じゃなくてタコ足が、

 アヤの大事な所(・・・・)へ伸びてくる。


「だめー! やめてー!!」



 まったく関係ない話だが、

 タコの足の1本は『交接腕』と呼ばれ、先端が生〇器(アレ)になっているそうだ。



 そして、そのタコ足が、ウネウネとくねりながら、

 アヤにゆっくりと近づいていく。



「だ、だめ!

 兄ちゃん、タスケテ……」



 アヤが足の間から迫りくるタコ足を見上げると……。


 そのタコ足が、ペチャリとアヤの顔面を直撃した。


 そして、タコ足がウネウネと動き回る。


「なにこれ! ギャー!!!」


 アヤが無茶苦茶に暴れまわると、

 手足を掴んでいたタコ足の力が弱まり、

 スルスルと拘束が溶けて、

 逆さまの体勢のまま、落下してしまった。


「ぎゃー!!!!」




「アヤ、さっきからうるさいぞ」

「え?」


 アヤは、俺の腕に抱かれていた。



 巨大タコ?

 ああ、あれは俺の『名刀マサムネ』でぶつ切り(・・・・)にしておいた。


「に、兄ちゃぁんー」

 アヤは俺に抱きついて、エグエグし始めてしまった。



「もう少しで私の大事なものを失うところだったよ」

「大事なもの?」

「私のしょ……」

「しょ?」


「何言わせるのよ! 兄ちゃんのヘンタイ!」

 なぜかグーで殴られてしまった。

 わけがわからないよ!



「あ、兄ちゃん。スーツのままじゃん」

「あ!」


 俺のスーツが……。

 雨とアヤの鼻水で、大変なことに。


 後でクリーニングに出しておこう……。



 俺は【変身の魔石】で、いつもの冒険の時の服に着替えた。



「ところでアヤ、いつまで俺に抱っこされてるつもりだ?」

「疲れたから、もうしばらくこうしとく」

 まったく、いつまでたっても子供だな。



「まだ魔物が残ってるのに」

「兄ちゃんなら、私を抱えたままでもやっつけられるでしょ?」

「まあな」


 いつの間にか、俺たちは魔物に囲まれていた。



「アヤ、ちょっと耳をふさげ」

「うん」


「【落雷】!」


バリバリバリ!


 俺とアヤの周囲に、何百という雷が落ちた。



 激しい稲光が止むと、

 俺たちの立っている砂浜に、こんがりと焼きあがった海産物の山が。


 そして、周囲に美味しそうな匂いも漂っている。



 そうだ。

 来週のランチは、焼き魚を食べよう。

 たっぷりの大根おろしに、醤油をぶっかけて。

 後は、白いご飯と味噌汁があればいい。

 そうしようそうしよう。




 海産物の後処理は町の人たちに任せて、

 俺は、アヤを抱っこしたままエレナとヒルダのところへ飛んだ。


-----


「エレナ、ヒルダ、大丈夫か?」

「セイジ様」「セイジお兄ちゃん」


「中にいる人たちは無事です。

 でも……、出入り口が泥で埋まってしまって……、

 掘っても掘っても流れ込んできてしまうんです」


 エレナもヒルダもそうとう疲れているらしく、顔色が悪い。

 そして、泥だらけだ。



「アヤさんは、大丈夫なのですか?」

「ん?」


 ああ、アヤを抱っこしたままだった。



「後は、俺がやるから3人は休んでいてくれ」

「はーい」「「はい」」



 まずは、現場一帯に【バリア】を張って、

 これ以上水が流れ込んでこないようにする。


 3人が休める場所を確保してから、

 崖崩れが起きた鉱山の入り口に取り掛かった。



「さてと、ここが鉱山の入り口か……」


 エレナとヒルダが一生懸命に掘り起こそうとしていたのだろう。

 穴をほった場所にドロが流れ込んでしまって、大変なことになっていた。



 まずは、グチョグチョになったその入口を、

 少しずつほぐすようにかき出していく。


「兄ちゃん、がんばれー」

 後ろで3人が、応援している。

 仕事を終えたばかりで疲れてるけど、

 ここはひとつ、がんばるかな。



 しばらくしてクパァと、奥へ通じる穴が姿を現した。


 俺は、ここぞとばかりにその穴を無理やりこじ開けていく。

 穴はぱっくりと広がり、もう出入りができる状態になった。


「おー! 兄ちゃん、穴掘り上手!」

「さすがセイジ様!」

「すごーい!」


 後ろから俺への惜しみない称賛の声が上がる。



「さて、中に閉じ込められていた人たちを助けるぞ」

「おー!」「「はーい」」



 俺たちは、意気揚々と穴の中へ入っていった。


ご感想お待ちしております。

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