398.風雲急を告げる
土日は、またヒルダを見守っているだけで終わってしまった。
すでに開拓村へ来てから数日がたっており、
働き者のヒルダは、すっかり村人たちから慕われている。
主人公の座をヒルダに奪われつつある俺は、
今日も今日とて、ヒルダののぞき……見守りを行っていた。
とは言ったものの、
現在、追跡用ビーコンで、ヒルダの映像は見えていない。
なぜかと言うと……、
ヒルダとレイチェルさんが、部屋の中で裸で二人きりになっているのだ。
『気持ちいいね~。
ヒルダ、ありがとう』
『喜んでもらえて、良かったです』
どうやらレイチェルさんは、ヒルダに気持ちいいことをしてもらっているようだ。
羨ましい!
まあ、タオルで体を拭いているだけなんだけどね。
……音を聞いている感じでは、多分そうだ。
『昔はよく河原で体を拭いてもらっていたけど……、
あの時は、冷たかったし、寒かったものな~。
それがどうだい!
部屋は暖かだし、魔法でお湯を沸かしちまうし!
ヒルダは、本当になんでもできるようになったんだね~』
『なんでもはできないですよ』
昔から、こんなことをしてもらっていたのか。
『それに、この布。
ずいぶんとやわらかだけど、何だいこれは!』
『セイジお兄ちゃんからもらった、タオルです』
『セイジは、いろいろと不思議なものを持っているな。
本当に肌触りが良くて、まるでお姫様にでもなった気分だ』
まあ、本物のお姫様であるエレナも使っているし、
あながち間違いではないな。
『ヒルダ、ありがとう。
今度は、あたしが体を拭いてあげよう』
『レイチェル様が?』
なんだと!
ここは、代わりに俺が……。
……いえ、なんでもないです。
『ああ、もうお前は奴隷じゃないんだし、
遠慮することはないだろ』
『はい』
コシコシ。
タオルで体を拭いている音がする。
『肌が、ツヤツヤだな』
『そうですか?』
お肌っゃっゃ。
いい響きだ。
『それにちょっと、太ったか?』
『え? そ、そうですか?』
ちょっとレイチェルさん、デリカシーが足りなくないですか?
『お前が奴隷だった頃は、もっと痩せこけていた。
今は、セイジにお腹いっぱい食べさせてもらってるんだな……』
健康的に肉がついてきたという話か。
『あの頃は、奴隷に対して、あんな扱いをするのが普通だと思っていた。
しかし、お前に対するセイジの態度をみていて、
あたしたちのお前に対する扱いが、急に恥ずかしく思えてきたんだ。
セイジは不思議な奴だな』
『はい、とっても頼りになるお兄ちゃんです』
『そうか……。
でも、お前だって、とっても頼りになる冒険者だぞ?』
『わ、私がですか?』
まあ、ヒルダは働き者だからな~。
『実は、たびたび魔物に襲われることがあり、
慢性的な物資の不足もあって、
村人たちの不満が吹き上がり、爆発寸前だったんだ。
しかし、ヒルダが来てくれた。
魔物が出れば、すぐに倒してくれる。
ニッポからの補給物資も輸送してくれた。
いっきに皆の笑顔が見れるようになった。
お前には、本当に感謝している』
『レイチェル様……』
けっこう大変だったんだな。
『というわけで、この村に、ずっと住まないか?』
おい、俺に断りもなくスカウトするなよ!
『ダ、ダメです。
私はセイジお兄ちゃんの妹なんですから』
『そうか……。
そう言うと思ったよ。
少しずつ冒険者も増えてきて、人手も余り気味になってくるだろう。
ヒルダは、必要とされるところで頑張れ。
……でも、たまには遊びに来てくれよな』
『はい』
途中でマジメっぽい話になってしまったが、
その後は、2人でキャッキャウフフな感じの会話が続いた。
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ドンドンドン。
『レイチェル様、大変です!』
村人が大慌てでレイチェルの家の戸を叩いた。
『何だい、騒々しい』
レイチェルさんは、髪の毛をタオルで拭きながら出てきた。
『強風で、村外れの民家が倒壊して、
ケガ人が出ています』
『なんだと!』
トラブル続きで、村長も大変だな~。
しかし、風くらいで倒壊するとは、
ずいぶん壊れやすい家だな。
『ヒルダ、一緒に来てくれ』
『はい』
2人は、日が暮れてすっかり暗くなった夜道を急いだ。
まあ、この程度のこと、すぐに解決するだろう。
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トントントン。
あれ、俺の方も何かの振動が……。
あ、リルラに持たせている【双子魔石】の振動か。
またなにか、用事があるのかな?
ヒルダの活躍を見守るのを少しお休みして、
俺は、すぐに【瞬間移動】でリルラの元へ向かった。
「リルラ、またどうかしたのか?」
「あ、セイジ!
大変なのだ、
ドレアドス王国の危機が差し迫っている!」
「え?」
もう戦争も起こらないだろうに、
国の危機ってなんだ?
「エクセター殿の占いで、国に危機が迫っていると出たのだ」
エクセター?
たしかトキの街の領主で、【時空魔法】の【占い】ができるという奴だ。
そんな奴がいるのを、すっかり忘れてたよ。
「それって、どんな危機なんだ?」
「分からん」
「え?」
「ただ、ここ2,3日中に、危機が訪れるらしいのだ」
うーむ、わけが分からん。
何が起こるというんだ?
隕石でも落ちてくるのか?
ご感想お待ちしております。




