385.借金の重さ
今回から新章です。
だからというわけではありませんが、いつもよりちょっと長めです。
村正をもらった事による手続きは、
社長がほとんどやってくれた。
日本刀の所持に、あんな面倒くさい手続きが必要だとは思わなかった。
「兄ちゃん、凄い刀もらったんでしょ?
見せて見せて!」
アヤがぴょんぴょん飛び跳ねながら、村正を見たがる。
こいつにだけは触らせてはいけない!
「ダメだ!」
俺は、素早くインベントリにしまった。
「兄ちゃんのケチ!
減るもんじゃないし、ちょっとくらいいいじゃん!
ね、先っちょだけでも~」
先っちょだけ見てナニが楽しいんだ。
「先っちょもダメ!」
「もう、兄ちゃんたら、意固地なんだから。
そんなんじゃ女の子にもてないよ!」
先っちょを見せただけで女の子にもてるなら、いくらでも見せちゃうよ。
「ところで兄ちゃん、ソレどうするの?」
「どうするとは?」
「今後、その刀で戦うの?」
「使うわけないだろ!
国宝だぞ!」
「じゃあ、しまっておくだけ?」
うーむ、ソレももったいないな~。
「じゃあ、マサムネさんに見せびらかしにでも行くか」
「それいいね!
マサムネさんがどんな顔をするか見ものだね!」
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次の土曜日、俺、アヤ、エレナ、ヒルダのメンバーで、
マサムネさんの所へ【瞬間移動】で出かけた。
「こんにちは~」
「おう、セイジ。また刀の鍛え直しか?」
マサムネさんは、前回の鍛え直しの時、
10日間ぶっ続けで仕事をして死にそうになってたけど、
もう、そのことを忘れちゃったのかな?
「今日は、マサムネさんに見せたいものがあって持ってきたんですよ」
「なんだ?」
「これです」
俺は、妖刀村正の箱を取り出し、蓋を開けた。
「うなっ!」
マサムネさんは、変な声をあげて、固まってしまった。
「……な、な、何だこれは!?」
しばらくして、ようやくフリーズが溶けたマサムネさんは、
村正に触らないように、それでいて舐めるように見入っていた。
「とある筋から入手した刀です。
マサムネさんだったら見たがると思って持ってきたんですよ」
しかし、マサムネさんは、俺の話などぜんぜん聞いていなかった。
「400年、いや、500年はたっている!?
しかも、これは魔法的技術をまったく使用せずに作られている!?
そして、これ、鋼か!
なのにも関わらず、こんなにキレイに、
こんなにも長い期間、欠かさず手入れをし続けてきたということか!?」
さすがマサムネさん、見ただけで分かるのか。
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もうかれこれ1時間もたっている。
その間ずっと、マサムネさんが村正を色んな角度から見ているだけだ。
アヤは、そっこうで飽きてしまい、
エレナとヒルダを連れて、外に遊びに行ってしまった。
「あの~、いつまで見てるつもりですか?」
「あ~、もうちょっとだけ」
あのマサムネさんが、まるで新しいおもちゃを手に入れた子供みたいだ。
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何もやることがなく、ただただマサムネさんの気が済むのを待っていると‥…。
トントントン。
何かの振動が……。
あれ、これなんだっけ?
あ、そうか、リルラにもたせている双子魔石の振動だ。
なにか、用事があるのかな?
「マサムネさん、俺は、ちょっと用事を済ませてきます」
「あ、ああ」
マサムネさんは、空返事だ。
まあ、少しの間だったら平気だろう。
俺は、リルラの所へ【瞬間移動】した。
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「リルラ、おまたせ。
何か用か?」
「セ、セイジ、来てくれたのか!」
リルラは、頬を染めて、恥ずかしそうにもじもじしている。
あれ?
ちょうどトイレにでも行こうとしてた時にきちゃったのかな?
ここは、早めに話を済ませよう。
「それで、何かようなのか?」
「あ、うん……。
国王様が、セイジに会いたいとおっしゃっていて、
呼び出しを頼まれたんだ」
「なるほど、じゃあこの後で行ってみるよ」
俺が、トイレに行きたそうなリルラに気を利かせて、すぐに帰ろうとすると、
なぜかリルラは、俺の服の裾を引っ張った。
「ま、待って」
「ん? どうしたんだ?」
「わ、私も行く」
「王様のところへ?」
「うん」
お城のトイレにでも行きたいのかな?
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俺はリルラを連れて、マサムネさんの所へ戻ってきた。
マサムネさんは、まだ刀に見入っていて、
俺が戻ってきたことにも気づいていない様子だ。
「あ、兄ちゃん戻ってきた。
げ、リルラがいる!」
相変わらずアヤとリルラは仲が悪いな。
「王様が、用事があるから来てくれってさ」
「お父様が?」
あんなのでもエレナの父親なんだよね~。
「ということで、マサムネさん。
もうそろそろ帰るから、刀はもうしまっちゃうよ~」
「ふぁ! ま、待ってくれ、もうちょっとだけ」
「それは前にも聞きました」
俺はマサムネさんを無視して、村正をインベントリにしまった。
「あぁ……」
マサムネさんは、おもちゃを取り上げられてがっくりしていた。
さすがに、これを貸してあげるわけにもいかないしね。
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みんなを連れて王様の所へ【瞬間移動】した。
移動先は、お城の謁見の間だ。
急に現れた俺たちに、王様は驚いている。
そして、王様に対して、リルラだけが膝をついてかしこまった。
「エ、エレナ!
よくぞ戻った!」
王様は、急に現れた俺たちの中にエレナを見つけ、
謁見の間の椅子から立ち上がって、駆け寄り抱きついた。
エレナが困った顔をしていたので、
俺は王様を、無理やり引き剥がしてやった。
「おのれセイジ! 何をする!」
「それは、こっちのセリフだ。
借金を返すまでは、エレナは返さないと行っただろう!」
「ふははは。
そんな口がきけるのも、今のうちだけだ」
王様が、不敵に笑う。
「もしかして、借金返済のめどが立ったのか?」
「その通りだ!」
俺をわざわざ呼び出したのは、そんなことのためか。
王様は部下に命じて、たくさんの木箱を運び込ませた。
「200万ゴールド……」
数えてみると、100ゴールド金貨が、2万枚あった。
「これで借金はナシだ。
エレナを返してもらうぞ!」
「ん?
ちょっと待った!!
あと200万ゴールド足りないぞ」
「ナ、ナンノコトカナ~?」
王様がすっとぼけている。
バカなやつだ、それでごまかせるとでも思っているのかな?
貸したのは200万だが、返却は倍の400万だったはずだ。
俺は、当時の【追跡用ビーコン】の映像を探し出し、
みんなが見えるように、大きく再生してやった。
『今日中に、200万ゴールドを支払えと言われた』
『200万!? それを今日中に!!?
出兵してきている貴族たちが持ってきているゴールドを集めて……。
いや、それでも200万なんてとても……。
もし、集められなかったらどうなるのですか?』
……。
『えーと、200万ゴールドなら持ってるぞ』
『は!? 持ってる? どういう事だ?』
……。
『後で2倍にして返してくれ。期限は30日で』
『わ、わかった……』
※『121.金貨の重さ』参照のこと。
当時の映像を流し終わると、王様は気まずそうに視線を外した。
「思い出したか?
確かに『2倍にして返す』と約束しているだろ?
しかも、当初の期限は30日だ。
30日なんて、とっくにすぎてるんだぞ?
本当だったら超過分の利子を取るところなんだぞ?
今現在、返済期限を90日ほど超過している。
もしこれをトイチで計算すると……、
借金は1000万ゴールド近い金額にふくらんでいるはずだ。
1000万ゴールドを400万ゴールドにまけてやっているんだから、
俺って優しすぎるよな」
王様は、それを聞いてorzのポーズのままプルプル震えてしまっている。
ちょっと、かわいそうになってきてしまった。
まあだが、もらえるものはもらっておこう。
せっかく王様が用意してくれた200万ゴールドを、
俺は、そそくさとインベントリにしまった。
王様は、震える足でなんとか立ち上がり、
悲しそうな表情を浮かべながらエレナに近寄る。
「エレナ……ワシが不甲斐ないばっかりに……。
いま、どのような生活をしているのだ?
あの悪魔のようなセイジに、イジメられてはいないのか?」
俺が悪魔だと!?
それに、俺がエレナをいじめるわけないだろ!
「お父様、安心してください。
私はとっても幸せに暮らしております。
セイジ様もとても優しいですよ」
ほら見ろ!
「それに、アヤさんとヒルダも一緒ですし」
「アヤというのは、あのセイジの妹だったか。
そして、ヒルダというのは?」
「お父様に、まだヒルダのことを紹介していませんでしたね」
エレナは、ヒルダを呼び寄せた。
「ヒルダは、私の妹になってもらったんです」
「王様。
は、初めてお目にかかります。
ヒ、ヒルダです」
ヒルダは、緊張気味に自己紹介をした。
「エレナの……、
い、妹……だと……」
ん?
王様の様子が……。
「ワシは、そんなこと許した覚えはないぞ!」
なんか、王様が怒り出しちゃった。
ご感想お待ちしております。




