375.マジ妖精
「何だあれ!?」「妖精!?」
歌い踊っている、めぐみちゃんの周りを、
オラクルちゃんが楽しそうに踊っている。
それを見た観客たちは、驚きまくっていた。
めぐみちゃんも、目を丸くしているが、
さすがアイドルなだけあって、
驚きまくっていても、歌と踊りをそのまま続けている。
「あれ、本物の妖精なのか!?」
「バカ言ってるんじゃないよ、本物の妖精なんているわけないだろ!」
「じゃあ、アレは何だっていうんだ?」
「多分……立体映像……かな?」
「なるほど! 立体映像か。
最近の科学技術の進歩は凄まじいな」
「そう……だな……」
どうやら、観客たちは立体映像だと思ってくれているみたいだ。
めぐみちゃんは、考えるのをやめたらしく、
オラクルちゃんと楽しそうに踊っている。
「めぐみちゃん、マジ妖精!」
「いや、マジ天使!!」
観客たちは、めぐみちゃんとオラクルちゃんが楽しく歌い踊っている姿にメロメロになっていた。
ところが、
オラクルちゃんが、急にめぐみちゃんから離れ、
ふよふよと移動する。
どこへ行こうというのかな?
「ヒルダも一緒に踊ろう!」
「わ、私ですか!?」
ヒルダのところだった。
ヒルダは、めぐみちゃんの邪魔にならないように舞台袖で見ていたのだ。
「ヒルダ~。いいから来なさいよ! 楽しいよ~」
「は、はい……」
「やったー!」
ヒルダは精霊を尊敬しているので、
精霊であるオラクルちゃんの言葉に逆らうことはできない。
「あ、でも、ちょっと待ってください」
ヒルダは、【変身の指輪】で衣装をチェンジした。
なんと、その着替えた衣装は、
めぐみちゃんとおそろいの『妖精っぽい』衣装だ。
りんごに衣装を作ってもらう時に、
同じものを作ってもらったのだろう。
衣装に着替えたヒルダがめぐみちゃんのところへ進み出る。
めぐみちゃんは、ヒルダが一緒に踊ってくれるということで、
嬉しそうににっこり微笑む。
そして、めぐみちゃん、ヒルダ、オラクルちゃんの3人は、
楽しそうに踊り始めた。
三人の楽しそうな踊りで、観客たちも大模擬上がりだ。
くそう!
俺も何かで参加したいな!
俺は【光の魔法】で参加することにした。
光の玉をいくつも飛ばして、水の玉や宝石と一緒に踊らせたり。
めぐみちゃん、ヒルダ、オラクルちゃんをキラキラと光らせたり。
レーザー光線で舞台を飾り付けたり。
俺の精一杯の魔力を使い、舞台を盛り上げた。
そんな中、2人の妖精と1人の精霊で、
ほんとうに楽しそうに、歌い、踊る。
そして、観客たちは、
まるで夢を見ているかのような表情で、その舞台を見つめていた。
夢のような時間が過ぎ去り、
めぐみちゃんは、歌をフルコーラス歌い終えてしまった。
そして、びしっと決めポーズ!
その瞬間。
バチッ!
またもや、大きな音が鳴り響き、
会場全体の照明が、一斉に点灯した。
「うわっ、眩しい!」
ずっと暗闇の中にいたその場の全員が、一瞬目がくらむ。
あ、ヤバイ!
オラクルちゃんを回収しないと!
「【トキ召喚】!」
俺は、トキを召喚して、時間を止めた。
「人族のセイジよ、ずいぶんと楽しそうな状況ですね」
時が静止した世界で、
俺に呼び出され、周りの状況を把握したトキは、
じゃっかんむくれているように見えた。
「またあとで、全員呼び出すから、話はその時で」
俺は【瞬間移動】を使い、
ヒルダと精霊たちを、急いでかき集めた。
そして、時は動き出す。
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だんだん目が慣れてきた観客たちは、
舞台上に一人でたたずむめぐみちゃんを見つけた。
まるで、さっきまでの舞台が幻だったかのように、
舞台上には、めぐみちゃん一人しかいない。
そのめぐみちゃんも、何が起こったか分からず立ちすくんでいる。
パチパチ。
観客席のどこからか、小さな拍手が起こる。
その拍手は、だんだんと広がり、
やがて、巨大なうねりとなって会場を埋め尽くしていく。
気がつくと、観客全員が総立ちとなって、
割れんばかりの拍手が、いつまでも絶えることなく鳴り響き続けた。
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俺たちは、人けのない舞台袖に集合していた。
「ちょっとセイジ!
いきなり【瞬間移動】して、どういうつもり!」
「ちょ、静かに!
明かりがついたから、オラクルちゃんは見つかったらマズイだろ」
「え? あ、そうか……」
こいつ、情報魔法の精霊のくせに、何でこんなに抜けてるんだろう……。
「みんなありがとう。
後でまた呼び出すから、今はこれで解散だ」
「「はーい」」
闇精霊以外の精霊たちは、次々と俺の体の中に帰っていった。
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次に俺は、一人で不審者を見張っている闇精霊のところへ移動した。
「見張りありがとう」
「セイジさん!
不審者たちは、異常なしです!」
闇精霊はビシっと敬礼した。
「もう電気もついたし、
こいつらは警備員に引き渡そう」
「はい!」
闇精霊は、何かの魔法を解除した。
どうやら、こいつらが他の人に見つかったりしないように、
魔法で隠していたらしい。
闇精霊って、なにげに優秀なやつだな。
「誰か来てください!
ここに不審者が倒れています!!!」
俺が、そう叫ぶと、
スタッフさんたちが、何事かと集まってきた。
「これ、暗視ゴーグルじゃないのか!?」
「ナイフも持ってる!」
「は、早く警備員を呼ぶんだ!」
舞台で、オーディションの集計が行われているさなか、
舞台裏では、警備員が駆けつけ、大騒ぎになっていた。
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「闇精霊、君のおかげでオーディションも上手くいきそうだ。
ありがとうな」
「い、いえ……、
セイジさんのお役に立てたのなら、私も嬉しいです……」
闇精霊は、もじもじして頬を染めている。
誰かの役にたてたのが、そんなに嬉しかったのかな?
なんか、かわいいやつだな。
闇精霊は、俺に抱きつくように俺の体の中に帰っていった。
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『それでは、集計結果の発表です!』
舞台裏の騒動とは裏腹に、
会場の方では、審査員と観客たちの投票結果の集計が終わったようだ。
『トランプ娘、最終オーディション。
合格者は……、
○○プロダクション所属、○○さんと、
無所属の八千代めぐみさんだーーーー!!!!』
『『うぉーーーー!!!』』
集計結果は、めぐみちゃんのダントツ1位だった。
合格者は2名なので、2位の人も合格だったのだが、
2位は、尻相撲対決でめぐみちゃんに勝って優勝したナイスボディのお姉さんだった。
そして、観客の盛り上がり方はとどまることを知らなかった。
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しばらくして、めぐみちゃんが控え室に戻ってきた。
「めぐみさん!
おめでとうございます!!」
ヒルダは、勢い良くめぐみちゃんに抱きついた。
「ありがとう!
もう、ヒルダったら~」
めぐみちゃんは、ヒルダに抱きつかれて、嬉しそうにしている。
「めぐみさん、おめでとうございます」
「「おめでとうございます」」
他のライバルたちが、一斉に挨拶にやってきた。
一瞬、何かあるかもしれないと身構えたが、
マップで見る限り、『警告』や『危険』を発している人物はいなかった。
終われば、ノーサイドということかな。
「八千代さん、
私は○○プロダクションの○○と申します。
よろしければ、是非、我がプロダクションに」
「いえいえ、ここは是非△△プロに!」
「××プロもよろしくお願いします」
そして、その次に、
名刺攻撃が始まった。
めぐみちゃんが無所属と聞いて、
勧誘に来たのだろう。
めぐみちゃんは、名刺の束を抱えて、
オロオロしていた。
もう近くに危険人物もいないし、これで一安心。
そして、俺の仕事もこれで終わりかな~。
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