362.干し芋と和菓子
時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり①が、発売中です。
よろしくお願いします。
ドラゴン実験の翌日。
俺たちは、マトリョーシカ三姉妹のいる病院に、
お見舞いにきていた。
警備にあたっていた黒服の人たちも、
俺たちだと分かると、すんなり通してくれた。
『こんにちは、3人とも体は大丈夫そうですか?』
『あ、あんたは昨日の』
イリーナが対応してくれた。
後の二人は、まだベッドに寝ていたので、
軽く挨拶をしただけだった。
「ハロー」
アヤは、イリーナに英語で話しかける。
『はろー』
イリーナも英語で答える。
でも、それだけだった。
俺以外はロシア語が話せないことになっているので、
また俺が通訳をすることになった。
『オリガさんとマーシャさんの体調はどうだい?』
『昨日のおまじないが効いたのかな。
もうすっかり元気だよ。
あとは、いろいろ検査をするんだってさ』
『それはよかった』
まあ、そうはいっても、
アレで本当にキズを治したとは思っていないだろうな。
『そっちこそ、キミヨの体調はどうなんだい?』
「私は、もうぜんぜん平気ですよ~」
と、きみよちゃんが答える。
もちろん、俺が通訳したんだけどね。
『昨日は、けっこう痛めつけちゃったつもりだったけど、
そうでもなかったのか……。
なんか試合中だと、気分がハイになっちゃうんだよね』
もしかして、
薬物の影響とかだったりするのかな?
「何か、変なものを飲まされたりしたのか?」
『よくわかんない。
まあ、アメリカに行ったら、そこら辺もちゃんと調べてもらうよ』
『ん?
アメリカへ亡命することに、決まったのか?』
『うん、3人で話し合って、
そうすることに決めた』
そうか、アメリカへ亡命するのか。
ロシアよりは、人権無視の実験をされる可能性は低そうだけど、
大丈夫かどうかは、定期的に監視しておかないとな。
うんうん、監視は大事だよね~。
「あのー、みなさん『干し芋』食べます?」
きみよちゃんが、干し芋をそっと差し出す。
『何だいこれは?』
『日本の伝統的なお菓子で、芋を乾燥させたものだよ』
『芋を乾燥させただけなのに、お菓子なのか?』
イリーナは、恐る恐る、干し芋を口に運んだ。
『何だこれ!
芋なのに、甘いぞ!』
『サツマイモという、甘みのある芋を使ってるんだ』
しかしイリーナは、干し芋がよほど気に入ったのか、
俺の話を全然聞かずに、ムシャムシャ食べ続けている。
『イリーナ、何を食べてるんだ?』
オリガさんが、気になってベッドを抜け出して寄ってきた。
『日本の芋のお菓子だって』
イリーナは、干し芋を頬張りながら答える。
『どれどれ』
オリガさんも、1つ取って口に運ぶ。
『ほうほう、なかなかイケルじゃないか!』
オリガさんも気に入ったみたいだ。
『私も食べる~』
マーシャさんもやってきて、
3人で、遠慮もなくムシャムシャ。
「私の分がなくなっちゃう……」
きみよちゃんが、涙目になっていた。
『3人とも、甘いものが好きなのか?』
あまりの食べっぷりに、思わず聞いてしまった。
『うーん、前はそうでもなかったんだけど、
本気を出して戦った後は、なぜか甘いものが食べたくなるんだ』
と、オリガさんが答えてくれた。
おそらく、甘いものでMPを回復させようと、体が求めているのだろう。
『それじゃあ、これなんかどうだ?』
俺は、和菓子を出してやった。
『これはなんだい?』
『これも日本の伝統的なお菓子だよ』
オリガさんが、恐る恐る『まんじゅう』を口にする。
『あまーい!!
何だこの甘さは!
でも、美味しい!!!』
その言葉をキッカケに、
マトリョーシカ三姉妹の和菓子争奪戦が勃発した。
君たち……。
食べ過ぎだ……。
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マトリョーシカ三姉妹のお見舞いを終えた俺たちは、
日本に帰る前に、おみやげを買いに街に出ていた。
「兄ちゃん、
おみやげ買うから、お金ちょうだい!」
アヤときたら、すぐコレだ。
「自分の金を使えよ、
ちゃんと現地通貨に両替したんだろ?」
「もうぜんぶ使っちゃった。てへ」
『てへ』じゃないよ!
「エレナちゃんも、ヒルダちゃんも、
おみやげ買いたいよね?」
「そうですね、商店街のみなさんに何か買っていこうかな」
「私は、めぐみちゃんに何か買っていきます」
なんと!
エレナとヒルダは、優しい子だな~。
「よし、二人には、おみやげ代をあげよう。
いっぱいおみやげを買って、いっぱい配っちゃいなさい」
「セイジ様、ありがとうございます!」
「セイジお兄ちゃん、ありがと~!」
俺は、エレナとヒルダに1000レアルずつ渡してあげた。
だが、まだ一人、手を出したままのやつがいた。
アヤだ。
「私も!」
『私も』じゃないよ!
まあ、優勝もしたことだし、
今回だけ特別ということで、
アヤにも1000レアルを渡してあげた。
「兄ちゃん、さんきゅ!」
何が、『さんきゅ』だ!
「あ、兄ちゃん。
私たち、おみやげ買ってくるから、ここで荷物番してて」
俺らだけなら、スーツケースをインベントリにしまってしまうところだが、
きみよちゃんもいるので、そうもいかない。
「あんまり変な所へは行くなよ?」
「分かってるって!」
女の子たちは、全員でおみやげを買いに行ってしまって、
俺だけ取り残されてしまった。
あいつら、変なやつに絡まれたりしなければいいんだけど……。
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