359.ドラゴンの正体
ドラゴンの首を、一刀両断にした。
「えぇ~~~!?
ドラゴンの頭がぁぁ~!」
「まあ、百合恵さん。落ち着いて」
「そんなこと言ったって!
ここは、魔法少女の私の力で、ドラゴンを辛くも退治するところでしょ!
何で刀でやっつけちゃうんですか!
そもそも、その刀はどこから出てきたんですか!」
百合恵さん、だいぶ混乱してるみたいだな。
どう説明しようか迷っていると……。
ヒルダが、声を上げた。
「ドラゴンが縮んでます!」
「なに!?」
見てみると、首を斬られ息絶えたドラゴンの死体が、
どんどん縮んでいく。
そして、ドラゴンは、
一匹のネズミの死体に変化していた。
やはり、ドラゴンの正体はこいつだったのか。
しかし、どうしてネズミがドラゴンになっていたのだろう?
「お兄さん、このネズミの胸のあたりに、
まだ魔力の流れが残っているみたいだ」
舞衣さんが指摘する。
そう言えば、胸のあたりにコアがあるんだったな。
「それじゃあ、私が解体します」
ヒルダが解体用のナイフを取り出し、
ネズミの死体を器用に解体していく。
さすが【解体】スキル持ちだ。
「こんなのがありました」
ヒルダは、何やら石を見つけ、俺に手渡した。
鑑定してみると……。
┌─<鑑定>────
│【竜化の魔石】
│魔力を込めると、ドラゴンに変身できる。
│レベル50未満の者が使用すると、
│正気を失い、もとに戻れなくなる。
│レア度:★★★★★★
└─────────
ヤバイ!!
ヤバすぎる!!!
『ドラゴン』に、『変身』できるだと!!!!!
なぜこんなものが、ネズミの体にあったんだ?
あの白いコートの男がネズミに埋め込んだのか?
あいつの言動からみて、こんなヤバイ物だと知らずに埋め込んだんだろう。
使ってみたい!!
しかし、アヤに知られたらマズイ!
あいつが知ったら、絶対使いたがるに違いない。
上手く誤魔化さないと。
「あ~、ヒルダくん。
他には、何もないのかね?」
「え? あ、はい」
どうやら上手く誤魔化せたみたいだ。
この魔石は、後でこっそり試してみよう。
「エレナ。
オリガ選手は、どこに運んだんだ?」
「この建物の外に運び出しました」
「きみよさんは?」
「きみよさんも、外に避難しています」
「よし。じゃあ、俺たちも外に避難しよう。
っと、その前に、
ドラゴンは、どこかに逃げてしまったということにしよう。
みんな、いいね?」
「「はーい」」
百合恵さんだけは、まだ、何か言いたそうだったが、
説明は後でということにしてもらって、
俺たちは、外へと避難した。
----------
その後は、いろいろ大変だった。
軍隊が出てきて、会場内に突入していったが、
けっきょくドラゴンは見つからなかった。
俺たちは、いろいろ事情聴取を受けたが、
事前に口裏を合わせておいたので、
ドラゴンはどこかに逃げてしまったという事になった。
だからといって、会場の安全が確認できてはいないので、
空手大会の表彰式は、外で簡易的に行われた。
舞衣さんとアヤは、金メダルを授与され喜んでいた。
「兄ちゃん、見て見て!
金メダルもらっちゃった!」
勝てたのは、レベル上げでステータスが上がってたおかげなんだけど、
魔法は使ってないし、純粋に肉体の強さで勝ったのだから、
ギリギリセーフだよね? それとも、アウト?
まあ、アヤはともかく、
舞衣さんは就職がかかった試合だったんだし、仕方ないよね。
-----
俺は、ちょっと気になっていることがあった。
マトリョーシカ三姉妹のことだ。
3人の内、二人が負傷で動けず、
マネージャーをしていた白いコートの男がドラゴンに食われてしまっていて、
ひとり負傷していないイリーナ選手が、困り果てているのだ。
俺は、イリーナ選手にロシア語で話しかけた。
『こんにちは、大丈夫かい?』
『よかった、あなたロシア語が分かるのね』
『二人の様子はどうだ?』
『まだ起きない』
『そうか』
俺は、エレナだけを連れて来ていた。
『この娘が、キズが早く治るおまじないをしてあげたいといっているのだが、
どうする?』
『変なことをしないなら、別にいいよ』
「エレナ、おまじないしてもいいってさ」
「はい」
エレナは、【アスクレピオスの杖】を掲げて、
それっぽい動きをしながら、二人に【回復魔法】をかけてあげた。
『これで、きっと早く治るよ』
『そう、ありがと』
イリーナ選手は、暗い顔のままだった。
まあ、おまじないとか言われても、信じるわけないよね。
『ところで、あなた。
私たちのマネージャーをみなかった?
白いコートを着た人なんだけど』
『その人ね……。
ドラゴンに食われた』
『……。
私、英語がよくわからなくて、状況があまり理解できていないんだけど。
ドラゴン……って何?』
『ドラゴンはドラゴンだよ、ファンタジーで出てくるような奴』
『そんなの、いるわけないでしょ』
『まあ、みんなそう思うところだけど、
そのドラゴンは、あんたたちのマネージャーが連れてきたんだぜ?』
『え? あぁ……、なるほど』
『何か思い当たることでもあるのかい?』
イリーナ選手は、言うかどうか迷っていたが。
『あの人は、遺伝子工学の研究者だった。
ドラゴンは、その研究の実験だったのかも』
『なるほど、
あんたや後ろの二人は、試合の時、変な状態にあったみたいだけど、
それも、その実験のせい、というわけか?』
『たぶん……そう』
イリーナ選手は、悲しそうな表情でうなづいた。
『これから、どうするつもりだ?』
『どうするとは?』
『ロシアに帰るなら、ロシア領事館に送ってってやるぞ』
まあ、この子たちも被害者だし、
これくらいはしてあげたほうがいいよね?
『うーん……、二人が起きたら相談してみる』
と、そこへ!
いきなり、黒い服を着た人たちが現れ、
すっかり囲まれてしまっていた!!
いつの間に!?
ご感想お待ちしております。




