356.オリガ選手の暴走
オークと化したオリガ選手は、周りの人たちを無差別に攻撃していた。
そして、逃げ遅れた人を攻撃しようとしていた。
「止めろ!」
ドスン。
俺は、割って入って、オリガ選手の拳を受け止めた。
けっこう重い攻撃だけど、
異世界の魔物に比べれば、たいしたことはない。
「ぐああぁ!」
オリガ選手は、俺に拳を受け止められて、吠えていた。
「さあ、今のうちに逃げるんだ!」
「は、はいぃ~!」
攻撃されそうになっていた大会関係者は、一目散に逃げ出した。
「お兄さん、これどうする?
攻撃しちゃうのかい?」
舞衣さんが、オリガ選手の拳を受け止めながら聞いてきた。
【睡眠】の魔法も使ってみたけど、効かなかったんだよね~。
ほんと、どうしよう。
攻撃しちゃうか?
「いや、もとに戻せると信じて、
ケガをさせないように押さえ込もう」
「押さえ込みは、苦手なんだよな~」
まあ、舞衣さんの体格じゃ仕方ないよな。
「じゃあ、二人で取り押さえよう。
俺が右手を押さえるから、舞衣さんは左手を頼みます」
「了解!」
オリガ選手を、うつ伏せに押し倒して、
俺たちは、それぞれの腕を1本ずつ押さえ込んだ。
「ぐああぁぁぁ!」
オリガ選手は、抜け出そうと必死に暴れたが、
なんとか動きを封じることができた。
「お兄さん、押さえ込みは成功したけど、
この後、どうするつもりだい?」
「どうしましょう?」
考えてなかった……。
押さえ込みをしつつ、
どうすべきか、あれこれ考えていると。
「あれ?
兄ちゃん、これ、何の騒ぎ?」
「ん?」
誰かと思ったら、アヤだった。
騒ぎを聞きつけて、控え室から出てきたらしい。
「わ!
なんで地球にオークがいるの!?」
アヤは、俺たちが押さえ込んでいるオリガ選手を見て、驚いている。
「この人はオリガ選手だよ、何で変身したのかは不明だ」
「マジで!?」
もう、お前は何しに出てきたんだよ!
『おい、お前たち!
その女から離れろ!!』
ん?
今度は誰だ?
見てみると、例の白いコートの男だった。
しかし、離れろって……。
状況を分かってないのか?
『見てわからないのか!
この人が暴れるから、押さえ込んでるんだろ!
あんたも危ないから逃げろ』
しかし男は、俺の忠告を無視して、ズカズカと近づいてきた。
そして、
懐から注射器を取り出して……、
オリガ選手ではなく、なぜか俺に、注射をしようとしやがった。
『おい、何するんだ!』
とっさに注射器を避けたため、
俺は、捕まえていたオリガ選手の腕を離してしまった。
「あ!」
オリガ選手は、自由になった右手一本で立ち上がってしまった。
ドカッ!
そして、止める間もなく、近くにいた白いコートの男を、殴りつけた。
ヤバイ!
あの男、死んだか!?
殴られた男は吹っ飛び、壁に激突したが、
なんとか生きているみたいだ。
もしかしてオリガ選手、無意識の内に手加減しているのかもしれないな。
「ちょっと、お兄さん。
なんで離しちゃうのさ!」
舞衣さんは、暴れるオリガ選手の左手に、抱きついたままだった。
「すまん!」
俺は、またオリガ選手の右腕を捕まえて、押し倒した。
けっきょく、振り出しに戻っただけか。
殴られた男のケガの様子を見に行きたいのだが、
押さえ込みに忙しくて、見に行けない。
「おーいアヤ、あの殴られた男の様子を見てきてくれ」
「うん」
アヤが、吹き飛ばされた男のところへ近づき、助け起こした。
『痛い! 痛い!!』
男は、顔面がひん曲がり、鼻、口、耳、目などから血が出ていた。
あれ、かなりヤバイんじゃない?
しかし男は、
コートから、また別の注射器を取り出し、
自分で自分の腕に、注射を打った。
何しているんだ!?
男が注射を打って数秒後。
急に落ち着きを取り戻して、すっくと立ち上がった。
ちょっと、何、あの即効性!
男は、ケガを完全に無視して、ニヤリと笑いやがった。
『ここまでパワーが上昇するとは、
嬉しい誤算だ。くくくくく……』
あいつ、この状況で、なに言っているんだ?
『しかし、どうしたものか……。
コレを止めるためには、アレを使わざるを得ないな』
男は、そう言い残すと、
選手控え室の方に入っていった。
アイツのことは、ほっておこう。
とりあえずは、先にオリガ選手をなんとかしないと。
「おい、アヤ。
ロープか何か、動きを封じるのに使えそうなものを、探してきてくれ」
「了解!」
アヤは、ロープを探しに行った。
それと入れ替えに、エレナとヒルダがやってきた。
「セイジ様、大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だ。それより、ケガ人は?」
「治療は終わりました。
今は、別のところへ移動されたみたいです」
よかった。
後は、オリガ選手に集中しよう。
「エレナ、オリガ選手を【回復魔法】で、もとに戻せないか?」
「やってみます」
エレナは、オリガ選手の体に触り、様子を見ている。
そして、何かに気がついた。
「ダメです。
何かが埋め込まれているような感じがします」
「埋め込まれている!?」
いったい、何が埋め込まれているというんだ??
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