347.リオ
「リオについた~~~!!!」
「アヤ、はしたないぞ」
リオデジャネイロについた途端、アヤが騒ぎ始めた。
24時間も飛行機に乗ってたから無理もないけど。
「でも、ずいぶんぐっすり寝た気がする~」
当たり前だ!
お前は、20時間くらい寝てたぞ。
「部長……遅いですね……」
百合恵さんが、なかなか手続きが完了しない舞衣さんのことを心配している。
まあ、舞衣さんのことだから心配する必要はないだろう。
「それじゃあ俺は、今のうちにエレナとヒルダを迎えに行ってくるよ」
「いてら~」
ちなみに、百合恵さんには、二人が別の飛行機で来ると説明してある。
俺は人気のないところへ移動して、
【瞬間移動】でエレナとヒルダを日本から連れてきた。
「ここが……リオですか」
エレナもヒルダも、興味津々で辺りをきょろきょろ見回している。
「ふたりとも眠くないか?」
日本とリオでは時差が12時間ある。
こっちでは朝の9時だが、日本は夜の9時だ。
「セイジお兄ちゃんのくれた【睡眠の魔石】でぐっすり寝たので、大丈夫です!」
「お昼ごろから二人でたっぷり寝ましたので、問題ありません」
うむ、【睡眠の魔石】を使った時差ボケ対策はバッチリだったみたいだな。
アヤたちと合流してすぐに、舞衣さんも手続きを終わらせて、出てきた。
「エレナくんとヒルダくんの方が先だったか。
みんな待たせちゃったね」
「舞衣さん、随分時間がかかりましたね~」
「実は、パスポートが偽造じゃないかと、疑われちゃってね」
「偽造? なんでまた」
「パスポートの年齢と見た目が合わないって……」
「なるほど……」
ごもっともだ。
「さて、全員集合したところで、ブランチでも食べに行くか!」
「わーい」
アヤは、テンション上がりまくりだな。
やれやれ。
「っ!?」
なぜか、舞衣さんが急に後ろを振り向いた。
「舞衣さん、どうかしましたか?」
見てみると、白いコートを着たお父さん? と、
北欧ふうの美しい3人の女性が、並んで歩いていた。
「あの娘たち……」
「あの3人がどうしました?」
「あ、マトリョーシカだ!」
アヤが話に割り込んできた。
うーむ、確かに『マトリョーシカ』だ。
3人は、大中小と背丈の大きさが違っているのに、
見た目が、まったく一緒なのだ。
おそらく3姉妹なのだろう。
3姉妹は、そのまま空港を出ていってしまった。
「あーあ、『マトリョーシカ3姉妹』いっちゃった。
あの人たち、すっごい美人だったけど、モデルさんなのかな?」
アヤや、他人に対して勝手に変な名前をつけるんじゃありません。
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アヤと舞衣さんが肉を食べたいということで、
空港近くの『シュハスコ』の店にやってきた。
しかし、朝から肉かよ!
まあ、二人は明日試合があるから、
これくらいのワガママは、しかたないけどね。
「でっかい焼き鳥!」
アヤ、お前は小学生か!
「焼き鳥じゃなくて『シュハスコ』な」
「しってるし!」
お前は幼稚園児か!!
そんなふうに騒いでいると、
隣のテーブルに座っていたごつい女性3人に囲まれて、
『おいお前ら、うるさいぞ!』
怒られてしまった。
『どうもすいません』
俺が、頭を掻きながら謝罪すると、
彼女たちは驚いていた。
『お前たち、中国人じゃないのか?』
『違います、日本人です』
『なんだ、ジャップか。
まあいい、気をつけろよ』
『ジャップ』って確か蔑称だよな。
まあ、特に気にはならないけど。
彼女たちは、自分の席に戻っていった。
「兄ちゃんのせいで、『アマゾネス3姉妹』に怒られちゃっだじゃん!」
おまいう!
ってか、『アマゾネス3姉妹』ってなんだよ!
あの人たち、たぶん姉妹じゃないし!
なんとか怒られずに食事を終え、
その日一日は、リオの街をたっぷり観光して廻った。
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「セイジ様、
あの丘の上の石像は、すごかったですね」
「ああ、街の人たちを見守っている感じが良かったな」
エレナとそんな話をしていると、またアヤが変なことを言い出した。
「兄ちゃん、あのキリスト像さ~
魔法でゴーレムにしたら強そうだよね」
おいバカやめろ!
変なフラグを立てるな!
キリスト教関係者に怒られるぞ!
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そんなバカな話をしながら、今日泊まるホテルに向かって歩いていると、
変な集団が、女の子を取り囲んでいるのを発見した。
今日は変な人によく会うな。
「ちょっと行ってくる。
みんなは待っててくれ」
「はーい」
気楽なアヤたちに見送られ、
俺は女の子の救出に向かった。
「すみません……
ホテルはこっちなんですか?」
『バーカ、どこの言葉かしらねえけど、
俺たちに分かるわけないだろ』
「困ったな~、
なんていってるか、全然わからないです……」
『バカな女だ、
手招きしたら、ホイホイついてきやがって、
そんなことをしていたら痛い目を見るってことを、教えてやらないとな』
『まったくだ、
その体に、しっかり教え込んでやろう』
『おまえ、こんなガキがいいのかよ!』
『俺は、ガキだってかまわないでやっちまう男なんだぜ』
『お前、変態かよ!』
なんか酷い会話をしている。
『ここらでいいだろう、
身ぐるみはいでやれ!』
『おー』
あ、ヤバイ。
俺は、前に強盗から奪ってインベントリの肥やしになっていた拳銃を取り出し、
パンッ!
空に向けて威嚇射撃をした。
『お前ら、そこまでだ!!』
俺が、脅しをかけると、
『ヤバイ、逃げるぞ』
男たちは、ものすごい勢いで逃げていった。
女の子は、状況がつかめず立ちすくんでいる。
俺は、拳銃を素早くインベントリにしまって、女の子に話しかける。
「君、大丈夫かい?」
「あ……」
驚いて、声が出ないのか? 無理もない。
「あいきゃん、のっと、すぴーく、いんぐりっしゅ」
……は?
「俺、日本語で話しかけてるよね?」
「そーりー、そーりー」
うーむ、この娘、混乱しているのかな?
「だから!
俺、日本語で話しかけてるんですけど?」
「え?
あれ?
もしかして、日本人ですか?」
「だから、さっきから何度も言ってるでしょ?」
「はー、よかった~」
どうやらこの娘、男たちに襲われそうになったことや拳銃のこととか、
まるで理解してなかったみたいだ……。
ご感想お待ちしております。
※オリンピックに合わせようとしていた話だったのに、ちょっと遅れちゃいました。




