345.潜入・深夜の病院
その日の夜、俺はエレナに【夜陰の魔石】を持たせて、
レーザーで目を怪我した人たちのいる病院へ【瞬間移動】で向かった。
「エレナ、夜遅いのにありがとね」
「いえ、セイジ様のお役に立てるのでしたら、これくらいなんでもありません。
それに……、
病院には、あまり来たことがなかったので、
来てみたかったんです」
まあ俺たちは、エレナのおかげで病院に行くような事態になることはないからね~
「それじゃあ、レーザーポインタで目を怪我した人たちを治しに行くよ」
「はい」
俺たちは【夜陰】で姿を消しながら、
【追跡用ビーコン】を頼りに、怪我した7人の病室を周り、
怪我の治療を行っていった。
姿を消していても、声を聞かれるわけには行かず、
俺がエレナの手を握って、目的の場所まで誘導しなければならず、
けっこう大変だった。
やっとのことで、7人全員の治療を終えたとき、
マズイことが起こった。
「あれ? そこに誰かいるの?」
同じ病室の人に声をかけられてしまった。
何故だ!
姿を消しているから見えないはずなのに!
「もう朝なの?」
その子は、『幼い女の子』だった。
そして、その子も目が見えていないようだった。
目が見えないことで、物音に敏感になっているのか?
物音もそれなりに注意はしてたんだけどな~。
どうしよう。
病室に知らない男が入ってきたら、びっくりするだろうし、
仕方ないので、エレナに対応を頼もう。
「エレナ、あの子とお話してやってくれ」
「はい」
エレナは、女の子に近づく。
「こんばんは」
「こんばんは…… お姉さんだあれ?」
「私は、エ…」
俺は、とっさにエレナの口を塞いだ。
名前を言ったらダメだということを理解してくれたみたいで、
エレナはうなずいた。
「私は、魔法の国からやってきた魔法使いです。
名前は、内緒です」
「魔法使い!? ほんとう!?」
「ええ、本当ですよ」
まあ、嘘はいってないけど……。
「魔法使いさんは、病気を治せる?」
「はい、治せます」
バラしちゃうのかよ!
まあ、小さい子みたいだし、大丈夫かな。
「それじゃあ…お願いがあるの」
「はい、何でしょう?」
「おとなりの部屋の『しゅんくん』の足を治して」
「わかりました。やってみます」
「ありがとー! 魔法使いさん!」
自分じゃなくて、お友達の方が優先なのか、
なんて心優しい子なんだ……。
俺とエレナは、隣の病室へと移動した。
ベッドに書かれている名前を確認して、『しゅんくん』を見つけた。
エレナは、寝ている『しゅんくん』の足に触れ、【回復魔法】をかける。
『しゅんくん』の足は、大したことなかったらしく、直ぐに治すことができた。
治療を終えて、元の部屋に戻ってくると、
女の子は、すぐに気がついたらしく、話しかけてきた。
「『しゅんくん』の足、治った?」
「ええ、治りましたよ」
「やったー! ありがとう! 魔法使いのお姉さん」
「まだ夜が明けていませんので、あなたは寝なきゃダメですよ」
「でも…目が覚めちゃって……」
「では、魔法で眠らせてあげましょう」
「ほんとう?」
「はい」
エレナは、俺のことをツンツンした。
【睡眠】の魔法をかけてやってくれ、ってことか。
エレナが女の子の頭をなでなでしてあげている間に、【睡眠】の魔法をかけて寝かしつけた。
女の子は、幸せそうな顔で眠りについた。
きっと、いい夢を見ているに違いない。
「セイジ様、この子も治してもいいですか?」
まあ、エレナのことだから、そう来ると思った。
「いいよ」
俺が許可を出すと、エレナは嬉しそうに女の子の治療を開始した。
まあ、空手大会の人だけ治療したら、
関係性を疑われちゃうかもしれないからね。
「どうせだから、この病院の入院患者を全員治療しちゃうか」
「はい!」
俺とエレナは、手分けして治療しまくった。
重傷者はエレナが、
それ以外は俺が、治して回った。
「エレナ、そろそろ眠いんじゃないのか?」
「だ、だいじょうぶれす……」
最後の一人を治療し終えた途端、エレナは船を漕ぎ始めてしまった。
「もう、頑張りすぎだ」
「すいません……」
とうとう、エレナは俺に寄りかかって寝始めてしまった。
起こさないようにお姫様抱っこをして、自宅へ戻った。
「あー、兄ちゃんがエレナちゃんにエッチなことしてる~」
「なんでや! 途中で寝ちゃったから抱っこして帰ってきただけだろ!」
「抱っこするとき、おしりとか触ったでしょ~」
「ししし、してないよ…」
アヤに手伝ってもらって、なんとかエレナを布団まで運ぶことができた。
翌日の夜のニュースは、病院でのことが大々的に取り上げられていた。
教会系の病院だったこともあって、『奇跡』が起こったと大騒ぎだ。
【追跡用ビーコン】で病院の様子を見てみた。
病院関係者は、検査とかで大変そうだったけど、
女の子と『しゅんくん』が笑顔で手を取り合ってぴょんぴょん飛び跳ねていたので、まあよしとするかな~
ご感想お待ちしております。




