344.大捕物
逃げてしまった犯人Aと西村玲子。
警備員たちは、大慌てで二人を追いかける。
「アヤ、俺たちも追いかけるぞ」
「うん!」
そして、部屋には有沙ちゃんだけが取り残された。
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後を追っていくと、
「どけどけ!!」
犯人Aが廊下にいた人たちをナイフで脅しながら、暴走していた。
西村玲子もそれについていっている。
「皆さん、危険ですので避難してください!!」
警備員も、一般の人たちの安全を確保するのが最優先となっていて、
犯人を捕まえられずにいた。
どうする?
見られてしまっても、強引に行動するか?
俺が、手をこまねいていると……。
「キャー!!」
前方で女性の悲鳴が聞こえる。
何事かと見てみると――。
犯人の進行方向に、小さい女の子がキョトンとした表情で、立ちすくんでいる。
悲鳴を上げた女性も、犯人のナイフが怖くて動けないでいるみたいだ。
「あのガキを人質にするぞ!」
犯人の魔の手が女の子に伸びる。
ヤバイ!!!
とっさに【瞬間移動】を使って犯人と女の子の間に割って入った。
「お前、いつのまに!!」
犯人は驚き戸惑っている。
「アヤ! 女の子を頼む!」
「わかった!」
アヤは、犯人と西村玲子の脇を素早く通り抜けて、
立ちすくんでいた女の子をそっと抱えて、安全なところへ移動させた。
「くそう!」
犯人は苛立ち紛れにナイフで威嚇する。
どうしよう、殴ってもいいかな?
と、その時。
また、小さな女の子が、
トコトコ歩いて近づいてくる。
なぜまた女の子が!?
と思ったら……。
「玲子くん、こんなところで何をしているんだい?」
舞衣さんだった。
「河合舞衣!!!?」
西村玲子は、怒りに満ちた瞳で舞衣さんを睨みつけている。
「大会の役員たちに事情は聞いたよ、
残念というしか無いよ‥‥」
舞衣さんは、そう言って悲しそうな表情を浮かべている。
「……お前のせいで……私は‥‥
お前のせいで!!!!」
西村玲子は激昂して舞衣さんに殴りかかる。
パシッ。
「ずいぶん…弱くなったね……」
舞衣さんは、西村玲子の拳を手のひらで軽く受け止め、
悲しそうにつぶやく。
「ボクはね、君との試合が楽しみだったんだよ。
去年の決勝戦は、楽しかったね……
でも……今の君は……」
「誰がお前なんかと試合をするか!
バケモノめ!!」
「……そうか」
舞衣さんは、ものすごく悲しそうな顔をしている……。
なんて酷いことを言うんだ……。
信じられない。
ん?
廊下の向こうから、何やらものすごい殺気が近づいてくる……。
なんだろう?
「きさま!!
今、私の部長に対して、なんと言った!!」
近づいてきていたのは、
周囲にどす黒いオーラを纏った、般若のような顔をした『百合恵さん』だった。
あれ、マズイんじゃないか?
「あんた誰? 関係ないやつは引っ込ん……」
ガッ!
百合恵さんは、いつの間にか近づき、
西村玲子の頭を、むんずと掴んでいた。
「ひぃ!」
流石の西村玲子も、いきなりのことで、かなりビビっている。
百合恵さんを包んでいるどす黒いオーラが集中し、
まるで二本のどす黒い角のようになってきた。
「『私の愛しい部長』に対する暴言は、万死に値する。
永遠の悪夢の世界に送ってやる」
ヤバイ!
とっさに止めに入ろうとしたが……。
「止めるんだ、百合恵くん!」
俺より先に、舞衣さんが割ってい入り、
二人を引き離した。
「部長どいて、そいつ○せない」
おい!!
百合恵さんは、どす黒いオーラを更に増加させ、
周囲に禍々しいオーラが爆発的に広がった。
「ヒィィィ……」
ビシャビシャ~。
西村玲子の悲鳴とともに、
何かの音がした。
なんだろうと、皆の視線が音のした方に集まる。
皆の視線が集まる中、西村玲子は……、
暖かそうな水たまりの上で、尻餅をついて恐怖におののいていた。
ゴブリンのような匂いが、周囲に満ちていった。
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その後、犯人Aと西村玲子、有沙ちゃんは、
大勢の一般人に目撃されながら、警察に連行されていった。
また、西村玲子と有沙ちゃんは、失格となり、
西村玲子は、無期限出場禁止の重い処分がくだされた。
さらに、舞衣さんの階級を裏で勝手に変えてしまった大会役員の内通者が2名発覚し、その人たちも処分された。
空手大会は、舞衣さんとアヤの優勝で幕を閉じた。
【軽量級】は、とりあえず2位の人が優勝ってことになったけど、
後で揉めそうだな。
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「さんざんな大会だったな」
「まったくよ」
俺たちは、二人の優勝を祝うため焼肉屋に来ていた。
本当なら、お祝いをするところなのだが、
あんなことがあったあとなので、みんな静かになってしまっている。
「まあでも、次はリオだ。
ふたりとも(一応)頑張れよ」
「うん」「ああ」
まあ、頑張るのは『手加減』の方だとは思うけどね。
「しかし、舞衣さんはリオでも【重量級】に出るのか?」
「ああ、今回はリオでの世界大会の出場資格のための大会だったからね」
世界大会でも、大きな選手を舞衣さんが倒しまくるのか……。
「目立ちすぎるんじゃないか?」
「ボクとしては、そのほうが都合がいい」
都合がいい?
「何か、目的があるの?」
「ボクは、空手部の強い企業に入りたくてね」
なるほど実業団か。
「ボクは、体がこんなだろ。
どこの企業も雇ってくれなくてね~
本当は、自衛官や警察官になりたかったんだけど、
身長制限で無理だったんだ」
うーむ舞衣さんも、いろいろ苦労していたんだな……。
アニメや漫画とかだと、子供にしか見えない学校の先生とかたまに見かけるけど、実際にはそんなことありえないもんな~
幼稚園の先生とかだったら大丈夫そうだけど……、
いや駄目だ! きっと園児に間違われてしまう。
「お兄さん、何か失礼なことを考えてないかい?」
「な、何のことかな~(すっとぼけ)」
「というわけで、世界大会で優勝して、
就職に役立てたいんだ」
「なるほど、
リオに遊びに行きたいからじゃなかったのか」
「そうだよ兄ちゃん!
私も部長のお手伝いのために、出場するんだよ!」
いや、違うな、
アヤは遊びに行きたいから手伝っているに違いない!
まあ、アヤはともかく、
そういう事情があるなら、
来週の世界大会も頑張って応援するかな~
ご感想お待ちしております。




