030.追跡と警戒
俺は、札幌駅に降り立った。
ここまで来て気が付いたのだがー
せっかく札幌まで来たのに、なにもしないで帰るだけなのか?
ラーメンでも食べて帰るか?
いやいや、さっき立ち食いそばを食べちゃったし。
まあ、いいや。またいつでも来られるし。
俺は【瞬間移動】で帰宅した。
自宅に帰ると、アヤとエレナは、まだ帰っていなかった。
半日で札幌まで行って、立ち食いそばを食べて帰ってくるという、強行軍を行った俺は、色々と疲れてしまい、ソファーでウトウトとし始めてしまった。
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新宿繁華街の裏路地。
アヤとエレナは、怪しい3人の男に取り囲まれていた。
「ちょっと、アンタ達、どきなさいよ!」
「俺達は、そこの金髪の彼女と、仲良くなりたいだけなんだよ、お前には用がないから、帰っていいぞ」
チンピラ風の男は、ニタニタと笑って、アヤとエレナにゆっくり近づいてくる。
「わ、私のことは構いませんから、アヤさんは逃げて」
「ほら、金髪ちゃんは俺達と、いいことしたいって言ってるぞ?」
「そんな訳にはいかないわよ!」
「俺達の言うことが聞けないのなら、お前には痛い目にあって貰う必要がありそうだな」
「な、なによ! 暴力をふるう気!?」
「まあ、こんな裏路地じゃあ、助けを呼んでも、誰にも聞こえないぞ」
「女の子相手に、男3人で寄ってたかって襲うなんて、恥ずかしくないの!」
「うひゃっひゃ、俺達3人に寄ってたかって、恥ずかしい事をされたいのか?」
「お前たちが、恥ずかしくないのかって言ってんのよ! 頭にウジでも湧いてるんじゃないの?」
「言わせておけばこのアマ! って、お前、足がガクガクしてんじゃん。怖くて、ちびっちゃったか? はははっ」
(誰か助けて!)
「もういい、この生意気な女からやっちまおうぜ! 金髪ちゃんは、後でゆっくり可愛がってやるから、そこでゆっくり待ってな。ほら、お前たち、この女を押さえつけろ!」
「ギャー!」
「ん? だれだ? 汚い悲鳴をあげてる奴は?」
「お前たち、俺の妹に何してんだ!!」
「お、お兄ちゃん!」「セイジ様!」
「待たせたな、もう大丈夫だぞ」
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ソファーで寝ていると、急に【警戒】魔法が『危険』を知らせてきた。
どうやら、【追跡】対象者が『危険』に見舞われている場合でも、【警戒】魔法が察知するらしく、俺は、そのおかげで、アヤとエレナのピンチを知ることが出来たのだ。
俺は、急いで【瞬間移動】で駆けつけた。
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「痛え! この手を離せ! 腕がちぎれる!!」
俺が、アヤを捕まえようとしていた男の腕を離すと―
チンピラ3人組は、警戒して距離を取った。
「誰だてめえ! どっから来やがった!」
俺は、このスキに自分に【クイック】をかけておいた。
「いきなり現れやがって、勇者気取りかよ。お前一人で、俺達3人に勝てるとでも思ってるのか?」
「お前ら、たった3人で、俺に勝てると思っているのか? グダグダ言ってないで、かかって来いよ」
「野郎! やっちまえ!」
チンピラ3人は、同時に襲いかかってきた。
が、【クイック】が掛かっているし、俺のレベルが上がっているせいもあって、攻撃が遅く感じる。
3人のパンチを、ひょいひょい避けると、チンピラどもは手強いと思ったのか、俺を取り囲むようにフォーメーションを組んできた。
バカそうに見えて、結構考えて戦ってるな。
【未来予測】で、後ろから攻撃が来るのを察知して、さっと避けると、足を引っ掛けて転ばし、前方の奴にぶつけてやった。
「ほらほら、さっきの威勢はどうした? 3人がかりで手も足も出ないじゃないか」
「このやろう!」
何とチンピラ達は、ナイフを取り出して構えた。
おいおい! ここは日本だぞ、武器を持ちだすとか、こいつらイカれてるな。
チンピラ達は、3人同時に俺に向かって襲いかかる。
俺は、正面の男のナイフを、右の男の腕に刺さるように軌道をずらしてやったあと、左からのナイフを避けるために、正面の男の後ろに【瞬間移動】した。
「ギャー! 痛え!!」
右に居た男は、腕にナイフがささり、痛さにうずくまってしまい、戦線離脱して2対1となった。
チンピラ達は【瞬間移動】を理解できず、だいぶ警戒して、むやみに襲ってこなくなった。
にらみ合いが続き、しばらく静寂が続いた。
さっきオレの正面に居たチンピラのリーダーらしき奴が、もう一人の男に何やら目配せをしている。
いったい何を企んでいるんだ?
なんとリーダーらしき奴が、単独で突っ込んできた。
俺は、ヤツのナイフをかわし続けているとー
もう一人はアヤの方に駆け寄った。
ヤバイ、あいつアヤを攻撃するつもりだ。
俺は、カウンター気味にリーダー男の顔面にパンチを食らわせた後、【瞬間移動】を使い、アヤを襲う男とアヤの間に割り込んだ。
そいつの突き出すナイフを、アヤに当たらないように軌道をずらしたが、ずらし切れなかったナイフが、俺の頬をかすってしまった。
俺は、そいつの鳩尾にパンチを食らわせつつ、うんと弱い【電撃】を放つ。
「ぎょえっ!」
そいつは、短い悲鳴を上げて倒れ、動かなくなった。
顔面パンチから復活したリーダー男は、仲間が倒されたのを知ると、信じられないという顔で俺を見た。
「もうお前だけだぞ、どうした尻尾を巻いて逃げるか?」
「くそー!!」
リーダー男は、やけくそ気味に突進してきたが―
【瞬間移動】で後ろに回り込み、首の後をチョップし、弱い【電撃】を当てて意識を刈り取った。
「兄ちゃん!」「セイジ様!」
チンピラ3人のナイフを取り上げて、インベントリにしまった所で、アヤとエレナに抱きつかれた。
「さあ、家に帰ろう」
俺は、左右から抱きつくアヤとエレナの頭に軽く手を乗せて、【瞬間移動】を使って帰宅した。
戦闘シーンは難しいですね
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