327.百合恵さんの魔力
精霊契約祭りを終えた俺たちは、百合恵さんの様子を見にやってきた。
百合恵さんの家には、付き添いの舞衣さんも来ていた。
「百合恵さん、調子はどうですか?」
「えーっと、なんとなく、力が湧いてくるような感じがします」
「それは良かった」
百合恵さんは、闇の精霊と一緒にMPを横取りされていた。
それを取り除いたのだから、MPが徐々に戻ってきているのだろう。
「でも……、昨日見たのって……
また夢だったのかしら?」
どうやら闇の祭壇での出来事を、また夢だと思っているみたいだ。
説明するのは面倒くさいから、そっとしておこう。
「ちょっと待った」
舞衣さんが『裁判』のように待ったをかける。
「どうかしたんですか?」
「百合恵くんの、まりょ…気の流れがおかしいんだ」
百合恵さんがいるから『魔力』を『気』と言い換えているのだろう。
「部長は『気』の流れが分かるんですよ~」
百合恵さんがフォローを入れる。
どうやら前からその話をしていたのだろう。
「で、どんなふうに変なんですか?」
「うん、前に比べて、臍の下あたりから『気』が湧き出る量が増えているんだけど……
その『気』が、流れずに留まってしまっているんだ」
前は、太もものアレが吸い取っていたから、溜らずに済んでいたけど、
それがなくなって、便秘みたいになっているのかな?
「どうしたら治ります?」
「気の使い方を教えるしかないかも」
気の使い方……つまり、魔法を教えるということか!?
大丈夫なんだろうか?
ピコン!
いいことを思いついた。
「百合恵さん、ちょっと体に触っていいかな?」
「え?」
「兄ちゃん、エッチ!!」
「違うよ、溜まった気を取り除こうとしているんだよ」
「気を取り除く? お兄さんそんなことできるの?」
「まあ、物は試しってことで」
「では、よろしくお願いします」
そういうと、百合恵さんは服をまくりあげてお腹を見せた。
「ちょっ百合恵さん、服はそのままでいいから!」
「兄ちゃんのエッチ!!」
今の、俺は悪くないよね? ね?
「それでは、いきます」
本当は、肩とかでもいいんだけど、せっかくなのでお腹の辺りに手を当てて【魔力強奪】を使ってみた。
「あ、あ、あ……」
百合恵さんが変な声を上げている。
「百合恵さん、大丈夫ですか? 止めます?」
「い、いえ……
ナニかが、で、出ちゃうような…変な感じで……
あっ」
百合恵さんは、ビクンビクンと体をヒクつかせていた。
「兄ちゃんのエッチ!!!」
俺、悪くないよね?
なんで俺、アヤにグーで殴られてるのかな?
「百合恵さん大丈夫ですか?」
ぐったりしてしまっている百合恵さんに声をかける。
「はい……大丈夫れす。
何だか体の力が抜けひゃって……」
百合恵さんをお姫様抱っこしてベッドまで運んであげると、そのまま眠ってしまった。
「百合恵くんは寝ちゃったのか。
今日はボクが泊まっていくよ」
舞衣さんと百合恵さんは仲良しだな~。
「百合恵さんに魔法のことを教えるかどうか、みんなで話しあおう」
『百合恵さんどうする会議』の開催だ。
「ボクは教えるべきだと思う」
「私も教えた方がいいと思うよ~」
舞衣さんとアヤは、『教える』に1票か。
「百合恵さんだけ仲間外れは可哀想です。
教えてあげたほうがいいかも」
ヒルダも、『教える』に1票か。
「魔石などで無理やり魔法を覚えた人の中には、
まれに病気になって死んでしまう人がいるそうです。
百合恵さんがそうでないといいんですけど……」
エレナのこの情報は聞き捨てならんな。
おそらく悪魔族が魔石かなにかを使って、百合恵さんに無理やり魔法を覚えさせたのだろう。
だとすると、命にかかわることもありうるのか。
しかたない、百合恵さんに魔法を教えるか……。
「舞衣さん、百合恵さんに魔法を教える件、
舞衣さんに頼んでいいか?」
「ボクが?
ああ、いいよ」
二人は仲良しだし、舞衣さんは【魔力感知】の能力も持っている。一番の適任者だろう。
「俺は明日から出張で海外に行くけど、
もし急な事があったらメールかなにかで知らせてくれ、
【瞬間移動】ですぐに飛んで来るから」
「分かった」
後のことは舞衣さんに任せて、俺たちは帰ることにした。
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「兄ちゃん、腹減った!
早く夕飯作って~」
帰ってくるなり、その台詞かよ!
「悪いけど、俺はまだ用事があるから、
夕飯はみんなで用意してくれ」
「兄ちゃん、まだどこかに行くの?
女のところ?」
「違うよ! マサムネさんのところへ行くんだよ」
「え? マサムネさんと!?」
『と』ってなんだよ!
「刀を預けに行くんだよ」
「なーんだそうか~、私はてっきり……」
『てっきり』なんだよ!!
わけの分からんアヤをほっておいて、
俺はマサムネさんの所へ飛んだ。
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「マサムネさん、試練クリアしてきましたよ~」
「何じゃと!!!!!」
マサムネさんは、作業中だったいろんなものをほっぽり出して飛んできた。
「み、見せてみろ」
いつも冷静なマサムネさんが、冷静さを失っている。
俺が黒帯刀を取り出すと、
マサムネさんは、それを奪い取った。
「すごいぞ!
本当にあの試練をクリアしてしまうとは……」
マサムネさんは、刀をあちこち見ながら興奮気味だ。
「どうです? 鍛え直しはいつ頃終わりそうですか?」
「10日待ってくれ。
なんとか10日で完成させてみせる」
いつも3日くらいで仕上げてしまうマサムネさんが、
10日もかかるとは……
今回はかなり凄い作業なのだろう。
「分かりました。
しかし、くれぐれも無理はしないでくださいね」
「バカを言うでない!
こんなすごい仕事、めったにないのだぞ!
こうしちゃおれん、すぐに取り掛かるぞ!!」
マサムネさんは、刀を持ってダッシュで奥に入っていってしまった。
大丈夫なんだろうか……。
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