321.嫌な予感
なんか、ものすごく嫌な予感がする……。
あれだけコテンパンにやっつければ、悪魔族ももう手を出してこないだろう。
確かにそう…なのだが……。
なぜか、嫌な予感が拭い切れない。
考えていてもしょうがないので、
とりあえず、悪魔族から救いだした人たちの撤退の準備を手伝っていた。
ドスーン
何の脈略もなく、地面が揺れ、それと同時に『重低音』が鳴り響いた。
「セイジ様、『地震』でしょうか?」
エレナが心配そうにしている。
だが、これは地震じゃない。
地震に揺られ慣れた日本人だからこそ分かる。
その直後、今度はガラガラと何かが崩れる音が!
「セイジ様!
あれを!」
エレナの指差す方を見てみると……。
悪魔族の街がある山が崩れ、大量の岩や土砂が流れ落ち、砂埃をあげていた。
「何だアレは!」
悪魔族の新たな攻撃だろうか?
いや違う、
あんな場所で土砂崩れを起こしても、こちらにはぜんぜん届いていない。
悪魔族の街に置いておいた【追跡用ビーコン】の映像を確認してみたが、
あちらも砂埃がひどく、状況が確認できない。
ガーーーーーーォ!!!
砂埃の中から、何かの鳴き声の様な重低音が鳴り響いた。
怪獣映画などでよく聞く声のような……。
それでいて、かなり低い音だった。
「セ、セイジ様、
あ、あの声は……」
エレナが、だいぶビビっている。
よし、気を落ち着かせるために、ナデナデしてあげよう。
と、思ったら、
なぜか、エレナだけではなく、
その場にいた全員が、激しく動揺し、
なかには腰が抜けて尻もちを付いている者までいる。
これは、どういう事だ?
【鑑定】してみると『恐怖』という状態異常に陥っている。
もしかして、さっきの『重低音』は、何かの【スキル】だったのか?
やっと、砂埃が収まってきた。
そして……
その砂埃の中から……。
巨大な『ドラゴン』が姿を表した。
「セ、セイジ様!!」
それを見たエレナが、ビビりまくって俺にしがみついてくる。
むりもない、
ドラゴンの大きさは、15mくらいあるだろうか。
大きさ的には、ゴブリンキングより大きいのでは?
さっきの音は、このドラゴンの鳴き声だったのだろう。
そしてその鳴き声に、みんなに『恐怖』を与える能力があるのだろうか?
その時点で、ドラゴンとの距離はだいぶ離れていた。
しかし、次の瞬間、
ドラゴンが、こちらを睨みながら、
息を吸い込んだ。
あ、ヤバイ。
俺たち全員を巻き込む様に【攻撃予想範囲】が表示される。
俺はとっさに、全員を囲むように巨大なドーム型の【バリア】をはった。
「キャー、セイジ様ー!!」
エレナの悲鳴とともに、俺たちは炎に包まれていた。
まるで流れる川を下から見上げているような風景だった。
まあ、俺たちの真上を流れているのは『水』ではなく、赤い『炎』なんだけどね。
あと1秒バリアをはるのが遅れていたら、
全員あの炎に巻き込まれていたのだろう……。
あのドラゴン、
絶対に許さんぞ!
炎が止むと、
半数が気を失い、
残りは腰を抜かしてしまっていて、呆然としている。
かろうじて動けるのはエレナ、アヤ、ヒルダ、舞衣さんくらい。
それでも、ビビってしまってみんな逃げ腰だ。
「に、にぃひゃん……」
アヤも、ビビって俺にしがみついてきた。
怖がりすぎて、ろれつが回ってないぞ。
さて、
俺はアイツをやっつけに行くかな~。
「アヤ、エレナ、聞いてくれ、
ヒルダ、舞衣さんと一緒に、みんなの避難誘導を頼む」
「に、兄ちゃんは、
ど、ど、ど、どうするの?」
「もちろんドラゴンを倒しに行く」
「無理だよ!
兄ちゃん死んじゃうよ!」
『恐怖』の状態異常のせいだろうか、
アヤがビビりまくっている。
「俺は、死なないよ。
ここは俺に任せて、アヤは先に行くんだ」
「やだよ、兄ちゃん行かないで!」
あれ?
落ち着かせようとして言ったのだが、
アヤは余計に怖がってしまった。
どうしてだろう?
まあいいか。
「エレナ、アヤを頼む」
「いやー兄ちゃん!」
アヤの悲痛な叫びを背中に受けながら、
たった一人、ドラゴンに立ち向かう。
俺は、ドラゴンに向かって走りだした。
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ドラゴンを【鑑定】してみたが、
やはり、さっきの鳴き声は【スキル】だった。
【ドラゴンの咆哮】
自分よりレベルの低い者に『恐怖』を与える。
アヤやエレナはこれにやられたのだ。
つまり、『恐怖』に陥っていない俺は、
やつよりレベルが上ということだ。
しかし、このドラゴン、
どこから湧いて出たのだろう?
悪魔族が飼っていた訳でもないだろうし……。
この戦いが終わったら、悪魔族の街においてあった【追跡用ビーコン】の映像を巻き戻して確認してみるか。
俺は、15mほどあるドラゴンの目の前に、
たったひとり立ちはだかった。
「おいトカゲ野郎、
アヤやエレナを怖がらせた罪。
思い知るがいい」
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