320.11対5000
ドカーーーン!!
捕まっていた人たちに食事をあげたり治療をしてあげたりしている時に、
背後で大きな爆発音が鳴り響いた。
「もう来たか!」
爆発音を聞いて駆けつけてみると、
悪魔族の街へ続く洞窟の入口を塞いでいた岩が、爆発で吹き飛び、
中から悪魔族がわらわらと出てきた。
おそらく悪魔族たちの中で戦える者が全て出てきたらしく、総数5千匹はいるだろうか。
対するコチラは……。
ライルゲバルトが真っ先に逃げ出して、捕まっていた人たちのさらに後ろに隠れてしまった。
残ったのは11人。
この人数で悪魔族5千の軍勢を相手にしなければならない訳だ。
「よし、みんな、最後の戦いだ!
気合入れていくぞ!!」
「「おー!!」」
俺たちは、予め決めていた陣形を整える。
前衛は4人。
右から、舞衣さん、ブンミーさん、リルラ、ロンド。
後衛は、レイチェルさん、ミーシャさん、カサンドラさん、ヒルダ、エレナの5人。
アヤは、遊撃手として臨機応変に対処する。
2つの陣営は、正面からぶつかり合った。
悪魔族の最初の攻撃をリルラの銀色の盾が受け止める。
そのスキに、ブンミーさんと舞衣さんが、悪魔族の防御陣を一瞬で突き崩す。
ロンドは、後衛の援護をもらってなんとか戦っている感じだ。
俺が何をしているかというと……。
全体の状況を把握しつつ、
ヤバそうな敵や、リーダーっぽい奴なんかを見つけたら、【透明化】、【瞬間移動】などを駆使して、人知れず『暗殺』して廻っているのだ。
『何をしている!
たった10匹の【角無し】どもじゃないか!!
なぜ、こうも押されるのだ!!!
速くやっつけ…
……ぐべっ!』
『うわ! た、隊長が!!』
こんな感じで、偉そうな奴をやっつけて廻っているせいで、
悪魔族たちは、まとまった行動ができず、混乱しっぱなしになっていた。
と、
そこへ、ヒルダが放った小さな火の玉が……
ヒョロヒョロと、悪魔族たちのど真ん中へ飛んで行くのが見えた。
(おっと、危ない危ない、一時退却)
俺は【瞬間移動】を使って、素早くその場を離れる。
ドカーーーーーン!!!
その直後、悪魔族たちのど真ん中で、汚え花火があがった。
そう、ヒルダの極大爆発魔法『ヒルダズン』だ!
本当はもっと速く飛ばすことが出来るのだが、
俺を気にしてゆっくり飛ばしているのだろう。
しかし、その事が……
逆に悪魔族たちを恐怖のどん底に陥れた。
これみよがしに、ゆっくり飛んで来る『ヒルダズン』、
悪魔族は、その『ひょろひょろ飛んで来る火の玉』を見て、
大パニックになって逃げ惑うのだ。
挙句の果てに、何のことはない、ただの『石ころ』が飛んできただけで、かってに勘違いしてパニックに陥り、
そのパニックが連鎖反応を起こして、悪魔族全体に広がっていった。
ヒルダ……、
恐ろしい子……。
悪魔族の中央部分が壊滅的な状態に陥っていた頃、
悪魔族の端っこの1部隊20匹ほどが、集団を離れて森の中に入っていくのが見えた。
おそらく、大きく迂回して、俺達の部隊の後ろから攻撃するつもりなのだろう。
俺が奴らの後を追おうと思っていると、
アヤが、先に奴らを追って森の中に入っていった。
『アーーーーー!!』
世にもおぞましい悲鳴が、森の中から聞こえてきた。
そのおぞましい悲鳴は、合計で10回鳴り響き、
生き残った10匹の悪魔族が、森の中から逃げ出してきた。
逃げ出してきた悪魔族たちは、
なぜか、
頭を隠さずに、尻を隠しながら逃げてきた……。
なにがあったのかな~。
考えるのは止めておこう。
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とうとう、悪魔族たちは数を半分以下に減らし、
2千足らずになっていた。
対する俺達は、ロンドが少し怪我をして、
すぐさまエレナに治してもらったくらいで、
それ以外は、ほぼ無傷のまま、
その2千の軍勢を……、
たった10人が追い回す状況になっていた。
そう、悪魔族は逃げ出したのだ。
命からがら街へと逃げ込もうとする悪魔族たち、
それを追いかける10人。
なんとか街へ逃げ込むことのできた悪魔族は、
さらに数を減らし、たった千人ほどだった。
「圧倒的じゃないか、我が軍は」
「あ、兄ちゃん、いたの?」
「『いたの?』じゃないよ!
敵のリーダーとかを暗殺してたんだよ!」
「地味~」
くそう、
確かに地味だけどさ~
「セイジ様、この後はどうするんですか?」
「うーむ、あれだけ痛めつければ、もう抵抗はしてこないだろう。
もう一度、出入り口を塞いで終わりにするか」
「「はーい」」
俺とレイチェルさんで、もう一度、今度は念入りに崖崩れを発生させて、出入り口を完全に封鎖した。
「ふー、
やっと終わった。
流石に疲れたな~」
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悪魔族との戦いを終え、
助けだした人たちの所へ戻ってくると……
ふたたび盛大な拍手で迎えられた。
一仕事を終え、満足に満ちた顔の11人、
そして、それを迎える大観衆。
やっと、終わった感じだな。
「皆の者、よくやった」
何もしてなかったライルゲバルトが、またしゃしゃり出てきた。
そして、ライルゲバルトは、一人一人と握手をしていく、
ロンド、リルラ、エレナ、ブンミーさん
そして、魔法使い部隊の3人、
ヒルダ、アヤ、舞衣さん、
最後に俺に握手を求めてきたときは、
ライルゲバルトのやつ、若干笑顔が引きつっていた。
まあ、これも仕事の内と割りきって、握手くらいしてやった。
「さあ、帰還するぞ!」
ライルゲバルトが、高々と宣言したが……。
そういえば、この人数をそれぞれの街まで送り届けるのって……
もしかして、俺の仕事?
なんか、ものすごく嫌な予感がする……。
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