027.お隣さん
「これは、お隣の『アジド』さん、どうされました?」
おじさんは、アジドという名前らしい。
「先ほど旅から戻ったのですが…… お隣から美味しそうな香りがしているもので、何事かと思いまして」
「実は、こちらのセイジさんが、料理を作ってくださいまして、ご馳走して頂いているところなんです」
「どうも、セイジといいます」
「アヤです」
「エレナです」
「初めまして、私はここの隣に住んでいます『アジド』といいます。あれ? エレナさん? どこかで聞いたことがあるような気が……」
やばい、気づかれたか!?
なんとかごまかさないと。
「もしよろしければ、アジドさんも【カレー】を食べて行きませんか?」
「この料理は【カレー】と言うんですか? いやはや、ありがとうございます」
「あ、アジドおじさん! おじさんもカレー食べるの?」
どうやら、このアジドさん、子供たちとも仲がいい人らしい。
俺は、カレーを皿によそって、アジドさんに渡した。
「これは!? 初めて食べる味ですが、旨いですな!!」
アジドさんは、遠慮というものを知らないらしく、2回もおかわりをしやがった。
「いや~、方々を旅して回っている私の知らない料理が、まだ存在していたとは、驚きました」
「おじさん、そんなに旅してるの?」
アヤが、横から話に割り込んできた。
「行商といいますか、このドレアドス王国の8つの街を、ぐるぐると巡って、各地で商売をしているのですよ」
「この国には、8つの街があるんですか?」
「おや、ご存じないですか? この王都の西に【フジャマ山】という大きな山があるのですが、その周りに8つの街が取り囲むようにあるんです。
【フジャマ山】の東(→)に『王都』、
北東(↗)に『ニッポの街』、
北(↑)に『スガの街』、
北西(↖)に『イケブの街』、
西(←)に『シンジュの街』、
南西(↙)に『エビスの街』、
南(↓)に『シナガの街』、
南東(↘)に『トキの街』があります」
「神殿のある街は、どこなの?」
「神殿ですか、
『王都(→)』に【風の神殿】、
『ニッポの街(↗)』に【肉体強化の神殿】、
『スガの街(↑)』に【水の神殿】、
『シンジュの街(←)』に【土の神殿】、
『エビスの街(↙)』に【回復の神殿】があります」
「つまり~【水の神殿】に行きたかったら、ここから北に向かって『ニッポの街(↗)』、『スガの街(↑)』って回っていけばいいんだね」
「はいそうです。アヤさん達は【水の神殿】に行く予定なのですか? 私は、明後日からその方面の旅に出発する予定ですから、よろしければ同行しますか?」
「兄ちゃんが、時間が無くて、旅はムリだって言うんです」
「そうですか、それは残念です」
ピコン!
俺は、あることに気が付いて、誰にも気づかれない様に【追跡】の魔法でアジドさんに【ビーコン】を取り付けた。
しめしめ、これであの問題は解決できる。
しかし、ここで俺はあることに気がついた。
今アジドさんに取り付けた【ビーコン】だけではなく
最初にエレナに取り付けた【ビーコン】、
二回目に冒険者に取り付けた【ビーコン】、
3つの【ビーコン】が、地図上で表示されたままになっているのだ。
いったい【ビーコン】は、いくつまで同時に使えるのだろう?
試しに、アリアさんに【ビーコン】を取り付けようとするとー
┌─<ビーコン>──
│設置数上限を超えて【ビーコン】を使用しています
│ 削除する【ビーコン】を選択してください
│
│・ビーコン1:エレナ・ドレアドス
│・ビーコン2:(氏名不明)
│・ビーコン3:アジド
└─────────
という画面が表示された。
どうやら【ビーコン】は、3つまで設置可能で、4つ目を設置する時に、どれかを削除しないといけないらしい。
ビーコン2は、冒険者につけた【ビーコン】だろう。
名前がわからない人につけると『(氏名不明)』と表示されるのか。
あと、【ビーコン】の個数はどうやって決まってるのだろうか?
今後【ビーコン】の個数が、増えたりはしないのかな?
取り敢えず、俺は冒険者につけた【ビーコン】を削除して、アリアさんの【ビーコン】を追加しておいた。
そんなことをしていると、カレーパーティーはお開きになった。
俺達は、子供たちに見送られ、宿屋へと向かった。
帰り際、アジドさんは旅のお土産をアリアさんに手渡していた。
カレーよりアリアさんに会う事の方が、目的だったりして。
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