284.日の出の塔16階~
ふわふわと浮かぶ火の玉が、大量に襲ってきた。
「私がやります!」
エレナが一歩前に出て魔法を使い始めた。
エレナが水の魔法で作り出した雨は、『ジュッ!』という音とともに、火の玉を次々と消し去っていった。
そして逃げ惑う火の玉たち。
しかし、エレナの作り出した雨は、前に見た時ほどの威力がない。
手加減でもしているのかと思ったのだが、どうやら違うみたいだ。
おそらく天候系の魔法は、ダンジョン内より野外で使用した時のほうが、威力が増すのだろう。
それでも、火の玉にとっては水が弱点ではあるらしく、道を塞いでいた火の玉たちは、あらかたいなくなり、
少しだけ生き残った火の玉たちは、アヤとヒルダの消防車の放水の様な水攻撃で、撃退されていた。
俺も、真後ろから襲ってきたのを数匹だけ白帯刀で真っ二つにして、
俺たちは完封勝利を収めた。
「兄ちゃん、なんか下の階より弱かったね」
「まあ、俺たち全員水の魔法が使えるし、
組み合わせによっては、そんなこともあるだろうさ」
そんな事より、
今の戦いで白帯刀の試練の『火属性魔物討伐』が10/10でクリアとなり、
残す試練は、風と土が5ずつだけになった。
まあ、試練の方は、ゆっくりやっていくかな。
その後、俺たちは17階に登る階段を難なく見つけることが出来た。
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17階に上がると、またまた雲海が広がっていた。
しかし、今度は辺りが暗く、
日が沈む瞬間のような雰囲気だ。
スマフォで今の時間を確認してみると、まだお昼前。
おそらく、この階特有の現象なのだろう。
薄暗い中を進んでいくと……。
「あ! 雲入道!」
3階下の14階でも現れた雲入道が、また現れた。
しかし、14階の雲入道と、なにか様子が違う。
「この雲入道、黒くないか?」
はじめは、辺りが薄暗いせいかと思ったけど、やはり違う。
14階の雲入道は白かったが、
ここの雲入道は、雨雲のように黒かった。
【鑑定】してみると、『黒雲入道』という魔物らしい。
安直な名前だな。
俺たちが様子をうかがっていると、
黒雲入道が、徐々に俺達の周りに集まりだした。
そして、そのまま俺たちは、黒雲入道に囲まれてしまった。
「兄ちゃん、暗いよ」
俺たちを取り囲んでいる黒雲入道に光を遮られ、辺りが余計に暗くなっていく。
そしてついに、真っ暗闇になってしまた。
「私が火を灯します」
ヒルダが魔法で火を灯してくれたおかげで、なんとか見えるようになったが、
黒雲入道のせいで、20mほど先からが、まったく見えない。
と、急にヒルダを狙った攻撃予想範囲が見え、
俺はとっさに間に割り込んでバリアをはった。
ガキン。
周りを取り囲む黒雲入道から黒い触手のようなものが伸び、バリアに当たった。
黒い触手……。
う、なんか嫌なトラウマが……。
このままでは埒があかない。
「ヒルダ。俺が明かりを担当するから、ヒルダは攻撃を担当してくれ」
「はい」
俺は、白熱電球魔法で辺りを照らし、
ヒルダは炎で、まわりの黒雲入道に攻撃を開始した。
雲入道と同じく、黒雲入道も炎が弱点らしく、包囲網に風穴が開いた。
その後は、俺とエレナで防御しながら、ヒルダが攻撃を加えていき、
なんとか黒雲入道を全滅させることが出来た。
え? アヤは何をしていたかだって?
黒雲入道に上を塞がれてしまっていて【ダウンバースト】が使えず、
普通の突風とかでなんとかしようとしていたのだが……。
風で黒雲入道を押しのけることは出来ても、ダメージは与えることが出来ず、
すぐに元に戻ってしまう。
そこでアヤは攻撃を諦め、光の魔法で辺りを明るくするのを手伝っていただけだった。
活躍できなくて悔しがっていたが、そんなこともたまにはあるさ。
黒雲入道を全て倒したが、魔石などは落とさなかった。
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18階に登ると、そこは雪国だった。
というか、雪山だった。
「今度は雪か~ 寒い~」
なぜアヤは、いつも小学生並みの感想しか言えないのだろう。
アヤたちは、自分たち用の【格納の魔石】からスキーウェアを取り出し、着替え始めた。
着替えると言っても、今着ている服の上から重ね着をするだけだから別に大丈夫だよ?
エレナとヒルダのスキーウェアは、昔アヤが着ていたもののお下がりだ。
俺たちは、雪に足が沈んでしまわないように【氷の魔法】で足元をコントロールして、先に進んだ。
「あ、兄ちゃん、なにか居るよ!」
「ああ、魔物が隠れているみたいだ、
みんな気をつけろ」
「「はい」」
そして、雪の中からもこもこと現れたのは……。
ちっちゃな雪だるまだった。
そして、その雪だるまは、ふわふわと空中を漂っている。
【鑑定】してみると『雪ん子』という魔物らしい。
「なにあれ! かわいい~」
アヤが不用意に近づこうとすると――。
雪ん子は攻撃を仕掛けてきた!
まあ、攻撃と言っても、雪玉を投げてくるだけなんだけどね。
あたっても痛くないし、
スキーウェアを着ているから、濡れないし寒くもないし。
全くもって、痛くも痒くもない。
なんか、それしかしてこない雪ん子を倒すのは可哀想になってしまい、
投げてくる雪玉をよけつつ、先を急ぐことにした。
しばらく進んで行くと、俺たちに雪玉を投げてくる雪ん子が、だんだん増えてき始めた。
うーむ、どうしたものか。
そして、さらに進むと、俺たちは雪ん子に取り囲まれていた。
流石にマズイか?
俺たちを取り囲む100匹以上の雪ん子。
そして、雪ん子たちは、俺たちのまわりで、なにやら踊りのようなものを踊り始めた。
すると、静かだった雪山の天候が急転し、猛吹雪になってしまった。
「やっぱり倒すか」
「「はい」」
アヤとエレナはヒルダの風よけになり。
ヒルダは、炎で雪ん子たちを攻撃した。
雪ん子は、ちょっと炎に当たっただけで、かんたんに溶けてしまう。
ヒルダが雪ん子を全て倒しつくし、
それと同時に、吹雪もおさまった。
「全部とけちゃいましたね」
ヒルダは、少し悲しそうな顔を見せた。
まあ、相手は魔物なのだから、しかたない。
「あ」
アヤが何かに気がついて声を上げる。
俺たちも、そちらを向くと……。
さっき解けた雪ん子の跡から、ふたたび新しい雪ん子が誕生した。
そして、性懲りもなく、また雪玉を投げてくる。
「しつこいやつだな~」
俺たちは、また雪玉をよけつつ、次の階の階段を探し始めた。
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