280.ナンシーママの策略
俺は、ナンシーママとりんごがデザインしたアクセサリーを、苦労して完成させた。
出来上がった3つのアクセサリーを見てみると、かなり凄い出来だ。
デザインしてくれたりんごや、コレを受け取るナンシーやめぐみちゃんの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。
ナンシーママ? まあ、ついでだ。
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翌日の仕事帰り、さっそくりんごに連絡して、一緒にナンシーとママさんに見せに行った。
めぐみちゃんへは社長から連絡をしてもらって、ナンシーのところで待ち合わせだ。
「セイジ、りんごいらっしゃい」
「いらっしゃい」
ナンシーとナンシーママが出迎えてくれた。
ナンシーママもアクセサリーの出来上がりを待ちわびてくれていたみたいだ。
社長とめぐみちゃんも、すぐ後にやって来た。
「さーて、みんな集まったところで」
俺は、3つのそれっぽい木箱を取り出し、テーブルに並べ、それぞれフタを取った。
「ふわーー!!」
真っ先にりんごが感嘆の声を上げた。
りんごは、はあはあと息を荒げながら、木箱の中のアクセサリーを一つ一つ穴が空くほど確認しまくり、最後に3つを並べ、うっとり眺めている。
あれだけ苦労して完成させたんだ、りんごが喜んでくれているみたいでよかった。
ところが、徐々にりんごの目の焦点が合わなくなり、ふらふらと俺の方に倒れこんできた。
「りんご、どうした? 大丈夫か?」
「あん…あんまり、だ、だいじょうぶじゃないれす。
わたし、うれしくて、うれしくて……」
アクセサリーの出来に喜んでくれているのだろうけど……。
ものを作る喜びとかなのだろうか? 感極まるとか、そういった感情が突き抜けちゃったのかな?
「わたしのデらインした、アクセサリーが…こんなに美しく……
わらし…もう……らめ……」
りんごは、俺の腕の中で、俺のことを見つめながら、
恍惚の表情をうかべ、体をビクンビクンと痙攣させて、気を失ってしまった。
これ、大丈夫なんだろうか?
ナンシーは、青いネックレスを受け取り、大はしゃぎだ。
めぐみちゃんは、ピンク色のブローチを社長に付けてもらい、うっとりしている。
ナンシーママは、というと……。
あれ? ナンシーママがさっきから動いていない。
どうしたんだろう。
「うそ…。
うそよ……。
こんなアクセサリーありえない……」
ナンシーママは、ワナワナと震えながらブツブツつぶやいている。
「ママさん、どうしました?」
「ありえないのよ……」
うーむ、やっぱりちょっとやりすぎたか?
今回は、りんご、ナンシー、めぐみちゃんの喜ぶ顔が見たくて、ちょっと張り切り過ぎちゃったんだよね~。
だが、後悔はしていない(キリッ!)
そこからナンシーママは、マシンガンのように喋り始めた。
「まず、こんな短期間につくり上げるなんてどう考えても不可能!
そして、この金属。 なにこれ? 銀?? いいえ、違う、銀はこんなに強度がない。 しかも、銀より美しい輝き。 本当にこの金属は何なの!!!
あと、この宝石。 私が渡したのは『ヌルポ石』だったはず。
あの石は美しいけど加工が難しくて、扱いに困っていたものだったのよ! なのに、昨日の今日で……」
そんなもんを使わせたのか!
「そして、このデザイン……
あの時、私はだいぶ酔っ払っていて……
まさか、こんなデザインを……」
うそん……。
ちゃんと、デザインしたものじゃなかったのかよ!
「うそよ……。
うそ、うそ……。
……こんな屈辱はないわ!
……なんで……私……。
他人の作ったアクセサリーに、心を奪われているの!!
く、くやしい………
で、でも……」
そしてナンシーママは、人目を気にせず……。
わんわん泣き始めてしまった。
「ちょ、ママ、どうしたの!?」
ナンシーママは、ナンシーに寄り添われて寝室へ行ってしまった。
りんごは恍惚の表情で気を失ってしまっているし、
めぐみちゃんも、自分のブローチをいじりながら、心ここにあらずという感じでうっとりしているし……。
どうしてこうなった。
俺はただ、みんなに喜んで欲しくて、つい。
結局その日はお開きとなり、気を失ってしまっているりんごは、俺がお持ち帰りした。
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それから数日たった、その週の金曜日の夜……。
「兄ちゃん、ナンシーのママがテレビに出てるよ~」
「なに!?」
テレビを見てみると、ナンシーママがレポーターに囲まれていた。
『これより、ジュエリー・ナンシー代表のジェニファー・アンダーソンさんより、新作ジュエリーの発表があります』
なんだと!?
なんか、いやーな予感がする……。
どうやら嫌な予感は的中したらしく、
俺がナンシーママ用に作ったティアラが奥から仰々しく運ばれてきた。
『まあ! なんて素晴らしいティアラなんでしょう!!
この世のものとは思えない程の素晴らしさです!!!』
レポーターの女性も大絶賛している。
『しかしジェニファーさん、これまでのジュエリー・ナンシーとだいぶ雰囲気の違うデザインですが、どのような意図なのですか?』
『この素晴らしいティアラは、私のデザインではありません』
『なんですって!!』
『今夜は、ジュエリー・ナンシーの新しいデザイナーをご紹介します』
おい、まさか……。
レポーター陣がざわめく中、
りんごが、ものすごく緊張した面持ちで登場しやがった!!
てか、りんご……、緊張しすぎて手と足が同時に出ているぞ!
『こ、こ、こ、こんにちは……
さ、さ、さ、佐藤りんごでしゅ…』
りんご、緊張しすぎだ!!
『佐藤さんはずいぶんお若いですが、お幾つなのですか?』
『じゅ、19歳でです。専門学校に通っていましゅ』
『佐藤さん、世界的に有名なジュエリー・ナンシーのデザイナーに抜擢されたご感想は?』
『が、が、がんばりますです!』
なんか大変なことになってしまっているようだ。
ナンシーママは、いったんりんごを少し下がらせて、説明を始めた。
『実は、このティアラは、単体ものではなく、
ティアラ、ネックレス、ブローチの3作品の1つなんです
それでは、他の2作品もご紹介しましょう』
ナンシーママが合図を送ると、
ネックレスをつけたナンシーと、
ブローチをつけためぐみちゃんが登場した。
なぜ、めぐみちゃんまで!
『日本は、日出ずる国と言われている海に囲まれた国、
そして、私はこの国に来て、この国の人々のまごころを感じました。
それにちなんで、この3つのアクセサリーは……
赤い宝石のティアラは【太陽】。
青い宝石のネックレスは【海】。
そして、ピンクの宝石のブローチを【心】と命名しました』
わーーーー!!
レポーターたちの割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
流石はナンシーママ、やり手だ。
『ところで、ネックレスとブローチをつけている、こちらのお二人は?』
『ネックレスをつけているのは、私の娘のナンシーです。
ナンシーは、この度開店するジュエリーナンシー日本店の店長を務めることになりました』
『ナンシーです、日本の皆様、よろしくお願いします』
『そして、ブローチを付けてくれているのは、
今回、ジュエリー・ナンシーの専属モデルをしてもらうことになりました、八千代めぐみちゃんです』
めぐみちゃんは、レポーター陣に向かってニッコリ微笑んだ。
マジか!
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