022.雷の魔法
「【電撃】!」
俺の手から放出される電撃は、1mも飛ばずに地面に落ちてしまっていた。
「兄ちゃんの魔法、全然飛んでないよ」
「分かってるわい!」
うーむ、地面はアースになってるから、電気が地面に向かって曲がっちゃうのか。
俺は、【電撃発生】だけではなく【電撃コントロール】も意識して、もう一度【電撃】を飛ばしてみた。
「【電撃】!」
今度は、すぐ地面に落ちてしまわずに、10mくらいは飛んだ。
その後も、何度か調整を繰り返し、だんだんある程度の距離を出せるようになってきた。
「兄ちゃんは、そんなに魔法使って、MP無くならないの?」
「ん? 俺のMPは3000以上あるから、そうそう無くならないよ」
「私のMPはいくつなの?」
「アヤは170で、エレナは100だよ」
「そんなに差があるのか…… 兄ちゃんばっかり、ずるいぞ!」
「魔法のレベルが上がると、MPが増える見たいだから。アヤも頑張れば上がるさ」
「所で兄ちゃん」
「なんだ?」
「【飴】持ってない?」
「いきなりだな」
俺はインベントリから、イチゴ味の【飴】の袋を取り出し、アヤにあげた。
「さんきゅっ!」
「それは何ですか?」
「エレナちゃん、【飴】知らないの?」
「はい、見たことないです」
「じゃあ、エレナちゃんにもあげる。アーンして」
「アーン」
アヤは、エレナの口に【飴】を放り込んだ。
「ん!? 甘くて、おいひいです!!」
「でしょー、私、このイチゴの【飴】大好き。なんか力が満ちてくる感じがするし」
「ほんとです、魔力が満ちてくる感じがします」
「大げさだな」
「そんなことないって、【鑑定】してみてよ、きっとMPが回復してるから」
「【飴】くらいでMPが回復する訳無いだろ」
回復してた!
【鑑定】したらMP回復してた!
マジかよ!
回復量は【飴】1個で100くらいかな?
「どう? MP回復してた?」
「うん、回復してた」
「ほら! やっぱり、私の言うとおりじゃない!」
「MPが回復してしまうなんて、【あめ】ってすごいんですね」
その後、俺達は【飴】を舐め舐め、魔法の特訓を続けた。
「やった! 私も電撃を飛ばせるようになった!」
「私の【水の魔法】も、呪文を使わずに遠くに飛ぶようになりました」
エレナは、俺とアヤの魔法を見て、呪文を使わずに発動させる練習もしていたみたいだ。
改めて二人を【鑑定】してみたところ。
エレナの【水の魔法】は、レベル2になり。
アヤの【雷の魔法】は、レベル3になっていた。
それに合わせて、二人共MPが増えていた。
「それでは、これから俺が雷を落とします。みなさん、気を付けてください!」
「おー! パチパチ、兄ちゃんいいぞいいぞ!」
「セイジ様、頑張ってください!」
「おうよ!」
俺は、ちょっと離れた所に一本だけ生えている木を目標にして―
「【落雷】!」
ドカーン!!
ものすごい爆音とともに、目標だった木は、真っ二つに折れて、轟々と燃え上がっていた。
「耳がキーンとする! 兄ちゃんのバカ!」
「セイジ様、すごいです!!」
「ありがと、思ったより威力があってビビった、ごめん」
しかし、この威力だと目立ってしまうな。
【雷の魔法】を使える人は1人しかいないらしいから、なるべく、人前では使わないようにしておこう。
俺は次に【電気分解】を試してみた。
電気分解と言うと水の電気分解が思い浮かぶが、それだと器具とかを用意するのが面倒くさいので―
試しに、そこらに転がっていた【石】に【電気分解】の魔法を掛けてみた。
「【電気分解】!」
魔法を実行すると、手に持っていた【石】が分解され、右手に少量の【黒い砂】、左手に【白い砂】が残った。
それぞれを【鑑定】してみると―
【黒い砂】は【砂鉄】、【白い砂】は【石英】だった。
この魔法、何でも分解できるなら、結構使える魔法かも。
エレナとアヤは、俺が【電気分解】しているところを見ていたが、何をしているのか分からなかったらしい。
そんなことをしているとー
急に【警戒】魔法に反応があり、前方の崖の向こうから、『注意』が必要な何かが、近づいてきているのが分かった。
「エレナ、アヤ! 何か近づいてくる注意しろ!」
「は、はい!」「え!? なに?」
しばらくして、崖の向こうから3人の冒険者っぽい格好の人たちが、全力疾走で飛び出してきた。
彼らは俺達に気がついたらしく、大声で叫んだ。
「オークに追われています! 逃げてください!」
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