232.進撃の悪魔族
急に現れたという悪魔族の大群、
いったいどこへ向かうというのだろう?
「ガドル、俺は悪魔族の行方を追いに行く、
長老様に伝えておいてくれ」
「そうか、分かった」
俺は、長老様の家の前の崖をぴょんと飛び降りて、森の中に着地し、
悪魔族が現れたという、洞窟へと向かって走りだした。
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しばらく走り、教えてもらった大岩の所へ到着したが―
道中、悪魔族の反応が無かった……
悪魔族とすれ違わなかったということは―
悪魔族たちは、竜人族の村には向かっておらず、違う方向に進軍しているということだ。
だとすると―
悪魔族の進軍する方向は―
ニッポの街である可能性が高い!
俺は、【電光石火】を使い、ニッポの街へ向かって走りだした。
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「見つけた!」
しばらく走った所で、悪魔族の大群の後ろをとらえた。
俺は速度を落とし、様子をうかがう。
うーむ、100人どころじゃないな。
少なくとも1000人はいる。
それと人族の奴隷が、何人か居るみたいだ。
しかも、一箇所にまとまっていなくて、いろんな場所に分散配置されている……
人質にされる可能性があるから、簡単には手を出せない。
これはマズイかも。
俺は【透明化】の魔法を使って、悪魔族の集団に近づいた。
【透明化】の魔法は【光の魔法】で覚えた魔法だ。
日中のみ使用可能で、敵から発見されなくなる。
【夜陰】の魔法の昼版といった感じの魔法だ。
しかし、この魔法には欠点がある。
姿が見えなくなるだけで、音が聞こえてしまうのだ。
そのため、ゆっくり近づく必要がある。
なんとか、悪魔族の集団の中の人質1人に接近し、助け出そうとした丁度その時だった。
胸ポケットの双子魔石がバンバンと激しく振動した。
一体何ごとだ!
ヤバイ、音が聞こえてしまう。
「ん? 何の音だ?」
気づかれてしまった!
一度、バレたら二度と同じ手は使えなくなってしまう。
仕方ない、出直しだ。
俺は、目の前の人質救出を諦め、
【瞬間移動】でリルラの所へ飛んだ。
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「リルラ、何事だ!
悪魔族の大群を見つけて人質を救出しようとしてたところだったんだぞ!
くだらないことだったら怒るぞ」
「た、た、た、大変、なのだ!」
「何をそんなに慌てている、ちゃんと説明しろ」
「シンジュの街とイケブの街に、魔物の大群が押し寄せてきている!」
「な、なん、だって!!!?」
イケブとシンジュが同時に襲われている!?
俺の見つけた悪魔族たちは、ニッポの街を目指していた……
つまりイケブ、シンジュ、そしてニッポが同時に襲われているのか!!?
いや…もしかして…他の街も……
「リルラ、他の街は大丈夫なのか?」
「わ、わからない……
イケブは、魔石屋からの連絡があった。
お父様にも聞いたが、王都は襲われていないそうだ」
王都は大丈夫でも、連絡が取れない他の街は、
同時に襲われている可能性があるのか!
「リルラ、この街は任せた。
俺たちは他の街を見まわってくる」
「セ、セイジ、行かないでくれ……」
「リルラ! しっかりしろ!
お前はイケブの街を守った英雄なんだぞ!
お前が怯えてどうする」
「だ、だって……」
「お前が危なくなったら、俺が助けに来るから。
それまでこの街を守っていてくれ」
「わ、わかった……
ま、守る!」
「よし、みんな行くぞ!」
「セイジ様、ちょっと待って下さい」
【瞬間移動】しようとすると、エレナがそれを引き止めた。
「エレナ、どうした?」
「この街に、【回復精霊の加護】を張ります。
「そうか……
いや、しかし、敵が侵入してきたら、敵にも効果が掛かってしまうんじゃないのか?」
「大丈夫です、敵と味方をちゃんと判別して効果を発揮すると精霊様に聞きました」
「そうか!
それなら大丈夫だな。
やってくれ」
「はい」
エレナは、【アスクレピオスの杖】を掲げてシンジュの街全体に【回復精霊の加護】を掛けた。
シンジュの街はエビスの街より広いのに、
凄いな……
「エレナ様、この魔法は?」
「体力、魔力、傷が少しずつ回復する魔法です。
リルラさん、頑張ってください」
「はい、エレナ様」
エレナとリルラは、固く握手を交わし、
リルラは、街を守るために部屋を飛び出していった。
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俺たちは、イケブの街に飛んできた。
街の外では、冒険者と魔物の戦闘が始まっていた。
「様子はどうですか?」
休憩中と思われる冒険者に戦況を聞いてみた。
「今更来ても遅いぞ、獲物はだいぶ片付けてしまったからな!」
冒険者はそう言って笑っていた。
どうやら戦況は有利な状況らしい。
「ここは大丈夫そうだな、後でまた見に来よう」
「セイジ様、ここにも【回復精霊の加護】を張りますね」
「そうか、念のため張っておいたほうがいいか」
エレナは、イケブの街にも【回復精霊の加護】を張った。
冒険者達は戸惑っていたが、体力が回復し始めた事に気が付き、魔物を倒す勢いが増してきた。
しかし魔法を使ったエレナは、少しふらついている。
「エレナ大丈夫か?」
エレナのMPを確認してみると―
うわ!
エレナのMP減りすぎ!
エレナのMPが、6000も減っている!
【回復精霊の加護】って一回につき3000もMPを使うのか!
現在、エレナの最大MPは7000あるが、
それでも2回しか使えない。
「エレナ、和菓子を食べるんだ!」
「はい、ありがとうございます」
「エレナ無理しすぎだ」
「いえ、こんな時こそ頑張らないと!」
和菓子を食べたおかげで、エレナのMPはどんどん回復していった。
「よし! 次はニッポの街だ」
とりあえず、イケブの街の確認用に、さっき話しをした冒険者に【追跡用ビーコン】を取り付けておいて―
俺たちは、ニッポの街へ飛んだ。
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