221.対悪魔族戦
俺は、【夜陰】の魔法を自分にかけ、
悪魔族の野営地奥深くに潜入していた。
悪魔族達は、エビスの街から奪ってきた食料をたらふく食い、ぐっすりと眠っていた。
見張りも数名程度、すっかり油断しきっている。
人族をなめてるのかな?
例の『何とかの杖』(どうしても覚えられない)を持ったリーダーも杖を脇に置いて眠っている。
もらっちゃおう。
俺は、こっそり杖をインベントリにしまった。
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『敵襲!!!』
悪魔族の見張りが大声を張り上げた。
『な、なんだと!?』
悪魔族のリーダーは、起こしに来た部下に事情を聞き、驚いていた。
『あれだけ傷めつけ、食料まで奪ったのに、やつらは追ってきたと言うのか!?』
『分かりません。
敵は、角無しのメス2匹だけだそうです』
『笑わせる! わざわざ奴隷になりに来たのか』
しかし、リーダーがテントから外に出ると―
そこには信じられない光景が広がっていた。
角無しの若いメスが、たった2匹、
しかも、その内1匹は子供なのだ。
まあ、アヤと舞衣さんなんだけどね。
二人の突撃に手も足も出ず、次々と悪魔族の兵士たちが空高く吹き飛ばされていく。
恐ろしさのあまりに逃げ惑う者さえいる。
『角無しのメスごときに、何をしている!!』
『し、しかし、予想以上に強く……』
『これだから平民は使えないのだ、角無しの奴隷を盾に使え』
『はい!』
兵士たちは平民?
つまり、あのリーダーは貴族なのかな?
悪魔族リーダーに指示された兵士が、奴隷にされた人たちの方に向かって駆け出そうとした。
ちょうどその時!
その行く手に、巨大な炎の壁が突如として現れた。
『うわ!!』
あまりの出来事に驚き、尻餅をつく悪魔族兵士。
『何事だ!?』
『わ、分かりません、奴隷たちの前に、いきなり炎の壁が』
『早く火を消せ!!』
『は、はい!!』
しかし、炎の壁から突如『火の鳥』が出現した。
『うわー!?』
『火の鳥』は、火を消そうとした悪魔族に襲いかかり、その者を火だるまにしてしまった。
『助げてぐれー!!』
体についた火を消そうと地面を転げまわる悪魔族兵士。
その光景に、味方を助けるのも忘れて後ずさりする他の兵士たち。
『何が起きているのだ! 誰か説明しろ!!』
しかし、誰も答えない。
火の壁と火の鳥は、当然ヒルダのしわざだ。
そして、その隙にエレナが、奴隷にされた人たちを助け、渡しておいた【呪い治癒薬】を使って奴隷から解放しているところだろう。
しばらくして、火の壁が消えると―
そこに奴隷たちは居なかった。
『奴隷たちが居ません!』
『そんなバカな!』
悪魔族リーダーが唖然としていると―
アヤと舞衣さんが、兵士たちを蹴散らしながら徐々に近づいてきている音が聞こえてきた。
『お前たちも突撃しろ!』
『し、しかし……』
『いいから行け!!』
『は、はい』
護衛の兵士たちも突撃させ、こいつは何をするのかと思ってみていると―
震える手で、魔石を取り出し使おうとしている。
こいつ、自分だけ逃げる気か?
バチッ!
『ぎゃあ!』
いつもの様に、【電撃】で気絶させる。
使おうとしていた魔石を【鑑定】してみると、やはり【帰還の魔石】だった。
全員で逃げない所を見ると、【帰還の魔石】がもう品切れなのかな?
まあ、【帰還の魔石】は使い捨てだし、イケブの街から仕入れるのも出来なくなってるし、かなり残り少なくなっているのだろう。
リーダーは、他にも【魔物発生の魔石】と【魔物従属の魔石】、あと【奴隷の首輪】も大量に持っていた。
【魔物発生の魔石】は、この前のやつも持っていたが―
【魔物従属の魔石】と言うのは、初めて見た。
┌─<鑑定>────
│【魔物従属の魔石】
│周囲の魔物を従わせる
│自分よりレベルの低い場合のみ有効
│レア度:★★★★★
└─────────
なるほど、これを使って魔物たちを操っていたのか。
あとは、【奴隷の首輪】をどうするかだな~
アヤにでも付けてみるか?
うむ、それはいいアイデアだ。(嘘ダヨ~?)
まあ、しまっておこう。
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悪魔族リーダの手足をビニール紐で拘束していると―
アヤと舞衣さん、エレナとヒルダが、それぞれの仕事を終えて集まってきた。
「兄ちゃん、兵士たちみんな片付け終わったよ~」
「セイジ様、捕虜の人たちの救出と、奴隷からの開放が終わりました」
「よし、一件落着」
悪魔族の兵士たちもビニール紐でがっちり縛りあげ、
悪魔族100人、捕虜30人を、【瞬間移動】のピストン輸送で、全員エビスの街へ輸送した。
はげしく疲れた……
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捕虜だった人たちは、それぞれの家族との再会を、抱き合って喜んでいた。
「エレナ姫様、セイジさん、この度はこの街のためにご尽力いただき、なんとお礼したらいいか……」
歓喜あふれる中、ビュート様が俺たちに跪いて感謝してくれている、
「ビュート様、これを」
俺は、インベントリから例の杖を取り出し、手渡した。
「こ、これは!
【アスクレピオスの杖】!?
取り戻してくださったのですね……」
ビュート様は、瞳に涙を浮かべている。
そんなに大事なものだったの!?
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