019.風のマナ結晶
「【風のマナ結晶】への拝観料は、お一人様『4500ゴールド』になります」
「ふぁっ!? お金取るのかよ!しかも高い!!」
「兄ちゃんどうしたの?」
「お一人様『4500ゴールド』だって」
「すいません、私の時は、付き添いの方が全てやってくれていましたので、お金がかかるなんて知らなくて」
「兄ちゃん、今いくら持ってるの?」
「えーと、今持ってるのは…… 8890ゴールドだ」
「二人分にあと110ゴールド足りないじゃない!」
「お前たちが服をあんなに買うから」
「セイジ様、す、すいません」
「「エレナは悪くない」」
また、アヤとセリフが被ってしまった。
「一人だけなんだったら、当然俺だな」
「なんでよ!」
「この金は俺のなんだぞ! 俺が行くに決まってんじゃん」
「兄ちゃんはもう魔法使えるでしょ! ここは、かわいい妹に譲るべきでしょ!」
「そうだな~ お前が俺の奴隷になって、何でも言うことを聞くって言うなら、譲ってやらんこともないぞ」
「なんで私が、兄ちゃんの奴隷にならないといけないのよ!」
「じゃあ、俺が行くってことで決定だな」
「ぐぬぬ!」
「あのー、セイジ様」
「なんだいエレナ、エレナももう一度【風のマナ結晶】に触ってみたいか? エレナが行きたいなら、今回はエレナでもいいよ」
「いえ!
私はもう触ったことが有るので結構です。
それより、アヤさんに行かせてあげてくれませんか?」
「エレナちゃん、大好きー!
ほら、エレナちゃんも私が行くべきって、言ってるじゃない!」
「どうして、アヤに行かせたいんだい?」
「あんなに行きたがっていますし、かわいそうです」
「やっぱりエレナちゃんは、私を愛してくれているのね! チュ~してあげる!」
「やめなさい!」
暴走するアヤにチョップを入れつつ、俺は頭をポリポリかいた。
「セイジ様の奴隷でしたら、私がなりますから」
「ちょっ! 待て待て!」
「ダメよエレナちゃん! こんなダメ兄ちゃんの奴隷になんかなったら、全裸にされて、あんな事やこんな事をされちゃうわよ! 兄ちゃんの変態!!」
「誰が変態だ! エレナもそんな事、軽々しく言っちゃダメだ!」
「す、すいません。で、でも……」
「わかったよ、アヤに譲るよ。だからエレナはもう二度と、あんな事言っちゃダメだぞ」
「はい、分かりました」
「兄ちゃん、ありがとー、チューしてあげる」
「遠慮しときます!」
アヤが【風のマナ結晶】を拝観しに行って30分ほどで帰ってきた。
「凄かった」
「【風のマナ結晶】どんな感じだったんだ?」
「えーとね、地面から生えてる感じで、金属っぽくもあり、宝石っぽくもあって、凄くキレイで、凄く大きかった」
「よく分からんが、魔法は覚えられたのか?」
「わかんない」
「わかんないって…… 頭のなかで『魔法を覚えた』とかのメッセージが聞こえなかったか?」
「そんなのは聞こえなかった。でも、なんか、光が体の中に入ってきたよ」
「よく分からんけど、魔法を覚えられたかどうか【鑑定】してみようか?」
「うん、【鑑定】してして!」
「じゃあ、行くぞ。【鑑定】!」
┌─<ステータス>─
│名前:丸山 アヤ
│職業:高校生
│状態:(言語一時習得)
│
│レベル:1
│HP:100
│MP:110
│
│力:8 耐久:7
│技:10 魔力:11
│
│スキル
│【風の魔法】
│ (レベル:1、レア度:★)
│ ・風コントロール
└─────────
なんか職業が『高校生』になってる。
短大の入学式が、まだだからかな?
「【風の魔法】はレベル1だけど覚えてるぞ。【風コントロール】って奴だ」
「やったー! 【風コントロール】すぐ使ってみたい!!」
「まてまて、こんな所で魔法なんて使ったら、周りの人に迷惑だろ」
「じゃあ、町の外に行こう! 【風の魔法】で魔物退治してみたい!」
「いやいや、魔物退治になんて行かないし! それより【雷のマナ結晶】も行ってみようぜ」
「そうか【雷のマナ結晶】もあったか。雷と風を操るナゾの美少女魔法戦士……いいね」
中二病を再発させた妹は、ほっておいて。
まあ、どうせ拝観料を払えないけど―
とりあえず、行ってみるだけ行ってみよう。
「【雷のマナ結晶】への拝観料は、お一人様『10ゴールド』になります」
「ふぁっ!? や、安い!!」
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