216.来ちゃった
「おはよう」
「舞衣さん、いらっしゃい」
土曜の朝、いつもの異世界出発の時間だ。
今週も舞衣さんが、俺たちに同行する。
それは、舞衣さんのお爺さん、つまり先代の魔王様に認めてもらうため、そして自分自身を鍛えるためだ。
しかし……
舞衣さんを招き入れようとしたその時、
視界の端に、影のようなものが微かに動いたようなそんな気がした。
「ん?」
「お兄さん、どうかしたのかい?」
「いや、何かが動いたような気がしたんだけど……
気のせいだったみたいだ」
俺がそう言った途端!
舞衣さんが床を蹴って飛び出した。
「舞衣さん!?」
舞衣さんは、ものすごい勢いで非常階段の方へ飛んで行く。
一瞬何が起きたかわからなかった俺も、急いで舞衣さんを追いかけた。
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「舞衣さん、一体何が?」
舞衣さんを追って非常階段に出てみると……
舞衣さんが、黒い影を取り押さえていた。
「いたたた。部長、痛いですよ~」
黒い影の正体は……
百合恵さんだった……
「来ちゃった❤」
「来ちゃったって……
なんで、百合恵さんが居るんですか!?」
「私に内緒で、部長とお出かけするつもりだったんですか?
私の部長と……」
なんか、百合恵さんの目が怖い……
「舞衣さん、百合恵さんに話しちゃったんですか?」
「そんなわけ無いだろう」
「えへっ、部長を尾行しちゃった❤」
うわ、ドン引きだ。
「ボクに気づかれずに尾行するとは、百合恵くんも腕を上げたな」
「部長に褒められちゃった」
もしかして、いままでも尾行されたことがあったのかな?
「部長は、私というものがありながら、
お兄さんに会いに来てたんですね!」
「何を言っているんだい!
ボクのお爺さんの事で、アヤくんやお兄さんに手伝ってもらっているって言っただろう?」
「いいえ! さっき部長がお兄さんにあった時、
メスの顔をしていました!
私には分かるんです!!」
「なんだい! メスの顔って!!」
うーむ、どうしよう……
激しく面倒くさい状況になってしまった。
「百合恵さん」
「何ですか!」
「コレを上げますから、今日の所は勘弁して下さい」
一か八か、物で釣ってみる。
「なんですかコレ!
こんな物で私は釣られ……
って、部長も同じのを身に着けてる!!
おそろい? おそろいなんですか!!?」
俺が百合恵さんに渡したのは、【身代わりの首飾り】だ。
もともと、百合恵さんに買ってきたものだし。
コレで釣れたら万々歳なんだが……
「こ、こんな、お揃いのネックレスごときで、
つ、釣られたりなんか、ししし、しないですよ!」
うーむ、釣られないか……
「仕方ない、明日ボクが君の家に泊まりに行くから、今日の所はカンベンしてくれよ」
「ぶぶぶぶ、部長が!!!???
わたわたわた、私の、う家に、ととと泊まりに!!!??」
舞衣さんの尊い犠牲によって、事態は解決し、
百合恵さんは、鼻血を垂らしながら、子犬のしっぽのように手を振って去っていった。
2日掛けて舞衣さんのお出迎えする準備をするのだという。
やっとのことで、百合恵さんから開放され、
舞衣さんを家に招き入れた。
「お兄さん、百合恵くんが迷惑を掛けたね」
「いえ、でも泊まりに行って、本当に大丈夫?」
「なにがだい?
まあ、百合恵くんも淋しがりやだからね~」
まあ、百合恵さんの事は舞衣さんにまかせておこう。
百合恵さんのこともあるし、舞衣さんが異世界に行けるのは今回で最後かもしれないな。
今週中に全てのマナ結晶を参拝してしまおう。
そんな事を思いつつ、俺達は異世界へ飛んだ。
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「リルラ、来たぞ」
「お帰りなさい、セイジ!!」
リルラは、俺の手をとると、頬を染めてニッコリ微笑んだ。
ん? なんか態度が変だな?
「そう言えば、リルラ、毎晩のように夜に……」
「バカ、皆がいる前でその話は!」
「ん?
筋力トレーニングしていることは内緒だったのか?」
「き、筋力…トレーニング?」
「しかしリルラ、あまり激しいトレーニングは良くないぞ!
寝る前なんだから、もうちょっと軽めにしておけよ」
「と、と、とれ、トレーニング!!?
じゃあ、セイジのあの、鼓動は…
オ……じゃなくて……」
リルラは、急に顔を真赤にして、
となりの部屋に逃げ込んでしまった。
一体、リルラのやつどうしちゃったんだろう?
体の調子でも悪いのかな?
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しばらくして、顔を真赤にしたままのリルラが、うつむきながら、おずおずと出てきた。
「リルラ、大丈夫か?
夜中にトレーニングばっかりしているせいで、体でも壊したんじゃないのか?」
「ち…ちが……
お願いだ、もうその事は、忘れてくれ……
たのむ……」
しまった、トレーニングしてたことは内緒だったのかな?
悪い事しちゃったな。
「それじゃあ、悪魔族の件の話を聞かせてくれ」
「ああ、とりあえず、3箇所で悪魔族が発見された」
「もう発見されたのか」
「今までも潜入されて何かをされていたのかもしれない。
とりあえず、発見されたのは……
ニッポ、イケブと、ここシンジュの街だ」
イケブとシンジュは予想してたが、ニッポは予想外だな。
リルラの話によると以下の通りだそうだ。
●シンジュの街
街なかで怪しいフードの者を発見。
兵士がフードを取って顔を見せるようにと命令したが、命令を無視して逃亡。
警備の兵士全員で捜索したが、見つからなかった。
●イケブの街
冒険者が、街の近くの森で、複数の悪魔族を発見。
冒険者が、悪魔族に襲われ、交戦状態に陥る。
冒険者の一人が負傷し、劣勢に。
他の冒険者が、助けに入る。
悪魔族は撤退してしまい、見失う。
●ニッポの街
冒険者が、街の近くの森で、悪魔族らしき者を発見。
深追いせず、街に戻って報告。
悪魔族捜索隊が結成され、森を捜索するも発見できず。
こんな感じらしい。
とりあえず、たいした被害は出てなくてよかった。
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