212.きょういの計測
「兄ちゃん…起きて!」
「ん? あれ?
なんでアヤが起こしに?」
いつも俺より遅くまで寝てるくせに……
「兄ちゃんが寝坊してるから、起こしに来てあげたんでしょ!」
「あ、そうか…昨日は遅くまで薬を作ってて……」
「そう! それ!
兄ちゃん、例の薬出来たの?」
なるほど、気になってるのは薬の方か。
「ああ、出来たぞ。
我ながら恐ろしい物を作ってしまったよ」
「はい」
アヤが、手を差し出す。
「ありがとう」
俺がアヤの手を取り、起き上がろうとすると……
アヤの奴、
俺の手を、払いのけやがった。
そのせいで俺の体に支えが無くなり、頭が枕にめがけて落下してしまった
「なにすんだ!」
「ちがうよ! 薬!
できたんでしょ、すぐ飲んでみたいから出してよ」
「お前なあ、兄を起こしに来てくれたんじゃなかったのか?」
「そんな事より、薬!」
アヤ、お前、ヤバイ薬の中毒者みたいだぞ。
「アヤ、まあ待て、朝食の準備が先だ」
「朝食なら、エレナちゃんとヒルダちゃんが準備してくれてる」
「年下の二人に朝食を作らせて、お前は何をしてるんだ?」
「私は、兄ちゃんを起こす係だから」
まあ、起こすのは『ついで』で、本心は薬欲しさだろうけど。
「とりあえず、朝食を食べてからにしよう」
「えー」
「せっかく、エレナとヒルダが作ってくれてるのに、
後回しにするつもりか?」
「ちっ、わかったよ!」
アヤ、薬欲しさに人格までひどくなってないか?
薬とは、ここまで人を狂わせるものなのか……
ベッドから起き上がると、外は雨がしとしと降っていた。
もう梅雨入りしたのかな?
~~~~~~~~~~
4人で仲良く朝食を頂いていると、
またもやアヤが薬の話を持ち出してきた。
「兄ちゃん、例の薬の効果ってどんな感じなの?」
「え~とだな、
全体の大きさや、形、
乳輪の色や面積、
肩こり予防、などに効果があるらしい」
「なにそれ、しゅごい!!」
アヤの瞳がハートマークになっている。
そんなに嬉しいのか? 正直よくわからん。
「アヤ、一つ言っておくが。
お前くらいボリュームがあるなら、飲む必要はないと俺は思ってる。
それでも飲みたいなら、試しに1本だけなら許可する」
「えー、1本だけ?」
「それと、使用前と使用後で、どう変化したかをちゃんと確認しておく必要がある」
「え!?
薬の飲む代わりに、胸を見せろってこと!?
兄ちゃんのエッチ!」
「ちげーよ!
お前の胸なんか見ても、しょうが無いだろ!」
まったく、どこの世界に妹の胸を見て喜ぶ兄が居るというのだ!
い、いないよね?
「エレナ。申し訳ないが、エレナがアヤの胸を見てやってくれないか?」
「はい、わかりました。
でも、アヤさんの胸の、何を調べたらいいんですか?」
「とりあえず、あるはずの効果に関連する所を全部かな。
アンダーとトップの胸囲、
張りや弾力、トップの面積や色、
こんなところかな」
「分かりました、お任せ下さい!」
「うーむ、相手がエレナちゃんでも、恥ずかしいかも……」
「嫌なら飲むな」
「飲むよ!」
~~~~~~~~~~
朝食が終わり、スーツに着替えて会社に行こうとアヤの部屋の前を通りかかると、
部屋の中からエレナとアヤの声が聞こえてきた。
「エレナちゃん、どこ触ってるの!」
「アヤさん、じっとしてて下さい、測れないじゃないですか」
「だって、エレナちゃん、そこは!
ひゃぁ! 変な触り方しないで~」
「もうちょっとで測り終えますから、じっとしてて下さい
あ、あやさん……
トップの形が変わっちゃったじゃないですか、
これじゃあ正確な計測が出来ないですよ!」
「エ、エレナちゃんが、
へ、変な触り方するからでしょ!」
薬をもう飲んだのか?
しかし、ナニの形が変わったんだろう?
良く分からん。
「アヤ、エレナ、俺はもう会社に行くぞ。
まだ計測終わらないのか?」
「に、兄ちゃん!
まだ出かけてなかったの? さっさと行ってよ」
アヤが酷い。『行ってらっしゃい』くらい言ってくれてもいいのに……
「それじゃあ、行くけど……
計測が終わったら、薬を飲んでみて、味とかの感想をメールで送ってくれ。頼んだぞ」
「分かった、分かったから」
アヤの奴、ナニを焦ってるんだ?
「セイジお兄ちゃん、行ってらっしゃい!」
俺は、ヒルダに見送られ、
しとしと降る雨の中を、会社に向かった。
ご感想お待ちしております。




