169.りんごチョーカー
午前中はエレナとヒルダを観察していて、仕事があまり進まなかったので、午後はしっかり仕事をしよう。
お、エレナとヒルダが、勉強をしている。
エレナは理科の勉強。
火に関しての部分を重点的に読んでいるようだ。
ヒルダは、絵本を読んでいる。
字が読めるようになったことが嬉しいらしく、とっても楽しそうだ。
おっといけない、仕事、仕事。
と、思ったら、スマフォにメールが届いている。
トイレに行くふりをして個室でメールを確認してみると―
ナンシーからだった。
世界一周旅行が終わり、アメリカに帰国したと言う報告だ。
やったぜ、これで【瞬間移動】でアメリカに行けるようになる。
トイレの中でナンシーに返事を書いて送信してから、仕事に戻った。
なんだか結局、あまり仕事していない気がする……
~~~~~~~~~~
仕事を終え、帰宅すると―
「「お帰りなさいませ!」」
「ただいま」
エレナとヒルダが出迎えてくれた。
なんか、幸せな気分。
「セイジ様、肩をおモミします」
「セイジ様、お茶をお入れしました」
エレナは、いつもの様に肩を揉んでくれて、
ヒルダは、お茶を入れてくれた。
お茶の入れ方は、エレナに教わったのだろう。
極楽とは、こういうことを言うのだな~
すっかり極楽気分を味わっていると―
チャイムが鳴った。
「はーい」
誰だろうと、出てみると―
「こんばんは、セイジさん」
りんご、だった。
「いらっしゃい、りんご、遊びに来たのか?」
「りんご」と呼び捨てにするように言われているが、やっぱりちょっと照れくさいな。
「アヤちゃんと約束してたんだけど、先に家に行っててって」
「アヤめ、仕方ないやつだな~
まあ、上がって上がって」
「お邪魔しま~す」
りんごを招き入れる。
「エレナちゃん、こんばんは。
あれ? その子は?」
「りんごさん、こんばんは。
この子は、ヒルダと言います。ヒルダ、ご挨拶を」
「は、はい。ヒ、ヒルダです」
「こんばんは、ヒルダちゃん。
私は、りんご、よろしくね」
りんごは、ヒルダの首輪をジロジロ見ている。
マズったか?
「その、ヒルダちゃんの首輪って……
あんまりヒルダちゃんに似合ってない感じが……」
どうしよう、なんとか説明しないと。
「えーと、実はその首輪、宗教的な物で、外したらダメらしいんだ」
「え? 外したらダメなんですか!?」
りんごは、ヒルダの首輪をじっくり観察している。
とっさにあんな事言っちゃったけど、マズかったかな……
「なるほど~
これは魔法とかが掛かりそうなデザインですね」
「え!? 分かるの?」
「なんとなくです」
分かるわけないよね。
「あ、そうだ!
セイジさん、テーブル借りてもいいですか?」
「いいけど、どうするの?」
りんごは、自分のバッグを開けて、何やら工具を取り出し、テーブルに並べ始めた。
「外せないなら―」
「外せないなら?」
「逆に、飾っちゃえばいいんです!」
りんごはそう言うと、ワイヤーやら、ビーズ的なものなどを取り出して、ネックレスを作り始めた。
ネックレスは、直ぐに出来上がり―
「これを首輪の上から付ければ」
りんごは、ヒルダの首輪の上からネックレスを取り付けた。
「ほら、可愛くなった」
ヒルダの禍々しい【奴隷の首輪】は、可愛らしいエスニック調のチョーカーに早変わりしていた。
「りんごさん、凄いです!」
エレナは、大喜びし、
ヒルダは、鏡を見ながら目を丸くしていた。
これなら外を出歩いても大丈夫そうだ。
「りんご、ありがとう!
流石りんごだな!」
「いやー、セイジさんにそんなに言われると、照れちゃいます」
「ヒルダ、良かったな。
ほら、りんごにお礼を言わないと」
「は、はい。ありがとうございます」
りんごは、お礼を言われて、照れまくっていた。
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しばらくすると、アヤが帰ってきた。
「ただいま~」
「「お邪魔します」」
舞衣さんと百合恵さんも一緒だった。
「いらっしゃ「何!この子!!」」
百合恵さんは、ヒルダを見つけるやいなや、襲いかかってきた。
「きゃー、可愛い!
はあはあ……
お、お姉さんと一緒に、お、お風呂に入らない?」
誰よりも早くヒルダに駆け寄り、抱きついてスリスリしている。
ば、バカな、俺の目でも追えなかっただと!?
ヒルダは怯えきっている。
「百合恵! なにしてるんだ!?」
百合恵さんは舞衣さんのチョップを食らって、ぶっ倒れた。
「百合恵が迷惑をかけて申し訳ない」
「セ、セイジ様ぁ!」
ヒルダは、怯えて俺の後ろに隠れてしまった。
「ヒルダ、百合恵さんはちょっと変わった人だけど、悪い人じゃないから大丈夫だよ」
「は、はい……」
百合恵さんは、エレナに回復魔法をかけてもらってすぐに気が付き、今度はエレナにスリスリし始めた。
エレナは苦笑いをしていたが、まあ、ほっておいても大丈夫だろう。
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「所で、今日は何の集まりなんだ?」
「それは、私から」
りんごが、そう切り出した。
「私のストーカー事件で、皆さんに色々迷惑をお掛けしましたが―
犯人は捕まり、私の引っ越しも終わったので、改めてお礼をと思いまして、
皆さん、本当にありがとうございました」
りんごは、そう言うと深々と頭を下げた。
「特にセイジさんは、怪我もさせてしまって……
セイジさんは、私の命の恩人です。
私に出来る事だったら何でもします」
ん? 今なんでもするって言った?
「じゃあ、私と一緒にお風呂に!」
真面目な話に割り込んで余計なことを言った百合恵さんは、また舞衣さんにチョップされていた。
地球側メンバー全員勢揃いの話でした。
ご感想お待ちしております。




