167.活動方針会議
夕飯を食べ終わり、【言語一時習得の魔石+2】を2つ作って、アヤとヒルダに渡した。
「兄ちゃん、私も貰っていいの?」
「あっちの世界に行く時に、わざわざ交換するのも大変だしな。
それに、海外に行った時は全員分必要になるし」
「海外旅行、行きたい!!」
「そのうちな」
アヤは、途端にウキウキしだしてしまった。
海外の話など、しなければよかった……
~~~~~~~~~~
俺は、ノートPCをリビングのテレビに接続し、プレゼン用ソフトを立ち上げた。
「それでは、これより
『活動方針会議』を取り行います!」
テレビには、『活動方針会議』の文字が、ドーンと表示された。
アヤは拍手をしてくれたが、エレナとヒルダは唖然としていた。
会議は順調に進み、以下のように決まった。
1.各地のマナ結晶を参拝して魔法の習得
2.冒険者として活動してレベルアップ
3.薬品製作をやってみる
以前に決めた目標から、『戦争の解決』がなくなっただけだけどね
俺達が話し合いをしている最中、ヒルダは物凄く眠そうにしていた。
「ヒルダ、大丈夫か? だいぶ眠そうだけど」
「だ、大丈夫です!」
ちっとも大丈夫そうには見えない。
「眠いんだったら先に寝るか?」
「ほ、本当に大丈夫です」
現在、夜の21時。
あっちの世界ではとっくにみんな寝てる時間だし、無理も無い。
夕飯をお腹いっぱい食べたのも、眠くなっちゃった原因かもしれない。
もし我慢できずに寝ちゃったら、ベッドに運んであげよう。
更に会議は進み。
『魔法』を覚えるために、エレナとヒルダは勉強をすることになった。
本が読めるようになったし、勉強はかなり楽に進められるかもしれない。
教材は、小学校や中学校の頃に使っていた教科書をアヤが持ってきているので、それを使うことにした。
『冒険者』としての活動は、日の出の塔の攻略を中心に行うことになった。
先ずは、胴付長靴を買っておかないと。
『薬品製作』は、呪い治癒薬を大量に作る必要があるので、その材料の確保が重要だ。
必要なのは【紫刺草】と【聖水】。
【紫刺草】は、各街をまわって売っている所を探すか、自分たちで取りに行くかする必要がある。
【聖水】は、作るために【光の魔法】が必要なので、リルラに頼むか、【光の魔法】を自分たちで習得する必要がある。
と、ここまでまとまった所で―
ヒルダが寝落ちしてしまっていた。
「寝ちゃったか」
「無理も無いよ~」
「さて、何処に寝かせる? アヤのベッドでいいか?」
「うんそうだね、私はエレナちゃんの横にもう一個布団をひいて寝るよ」
「じゃあ、ヒルダを運ぶから手伝って」
「はーい」
俺は、寝てしまったヒルダをお姫様抱っこして、アヤのベッドへ運んだ。
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「さて、ヒルダが寝てしまった所で、
当のヒルダの事なんだが……」
「兄ちゃん、ヒルダちゃんをどうするつもり?」
「先ずは、奴隷から解放したい」
「うんそうだね」「え!?」
アヤは賛同してくれたけど、エレナは驚いている。
「エレナ、何か問題でもあるのか?」
「いえ、奴隷を解放することは出来ないと思います」
「え? そうなの?」
「奴隷を解放するなんて聞いたことがありませんし、
どうしたら解放できるかも知りません」
奴隷ってそんな扱いなのか……
王様にでも聞いてみるか、なにせ俺を奴隷にしようとした張本人だし、何か知ってるかもしれない。
「なんにせよ、ヒルダが自立できるように、勉強を教えて、魔法をたくさん覚えてもらおう。
あと、読み書きや計算も出来るようになっておいたほうがいいな」
「セイジ様、わかりました。
私がヒルダに勉強を教えます。お任せ下さい」
「そうかエレナ、
特に火に関する勉強を重点的に頼む」
「はい、分かりました」
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翌朝、自分の部屋で目が覚めると。
ベッドの脇に誰かがいた。
誰だ!?
「何だヒルダか、どうしたんだ?」
「も、も、も」
「もも? 桃がどうかしたのか?」
「申し訳ありません!」
ヒルダは俺の前にひれ伏して、泣き出してしまった。
「ちょっ、ヒルダ、どうしたんだ?」
よく見ると、ヒルダの服装が変だ。
何かがおかしい。
じっくり観察してみると―
ヒルダは、下半身すっぽんぽんだった……
「ヒルダ! なんでそんな格好をしてるんだ!?」
「ずいま゛ぜん、ずいま゛ぜん」
しかし、ヒルダは、大泣きしたまま謝るばかり。
「なんで謝ってるか知らないけど、早く服を着て!」
俺は慌ててヒルダを抱き起こそうとした、
その時だった……
「兄ちゃん、朝から何を騒いでるの?」
アヤが、ノックもせずに部屋に入ってくると……
俺は、下半身すっぽんぽんで泣いているヒルダを、抱き起こした瞬断であった。
「に、に、に、兄ちゃん!
な、な、な、何を、しているんだ!!!」
次の瞬間、アヤの飛び蹴りが、
俺の顔面に、めり込んでいた。
~~~~~~~~~~
「は!?」
気が付くと、そこはリビングだった。
「セイジ様。よかった、気が付きました」
俺は、エレナに膝枕されながら、回復魔法を掛けてもらっていた。
「あれ? 俺は一体どうしたんだ?」
「も、も、申し訳ありません」
ヒルダが、またひれ伏している。
「事情を説明してくれないか?」
「兄ちゃん、さっきは行き成り蹴ってごめん。
私が説明するよ」
アヤの説明によると、どうやらヒルダは『おねしょ』をしてしまったらしい。
寝る前にトイレに行かずに寝てしまい、途中でトイレに行きたくなって起きたが、トイレが何処だか分からず、誰かに聞こうにもアヤもエレナも眠っていて、立場上起こすわけにも行かず、我慢して二度寝してしまったらしい。
「トイレの使い方を教えてなかったな。ごめん、気が付かなくって」
「兄ちゃん、私がヒルダちゃんに家の物の使い方を教えとくよ」
「ああ、頼む。
ヒルダも、そんなに落ち込まないでいいよ。
誰にだって失敗はあるんだし」
「あ、ありがとうございます」
ヒルダは、まだひれ伏している。
「気にすることはないよ。
アヤだって、小学校高学年までおねしょしてたし」
「兄ちゃん!!」
俺は、再びアヤの飛び蹴りを食らって意識を失った。
なんか変な話になってしまった。
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