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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
日の出の塔攻略編
174/438

165.臭い水


「落とし穴? これが?」


 俺達の前に、大きな()が現れた。



「兄ちゃん、大きい穴だね」


 覗き込んでみたが、暗くて奥が見えない。



「さて、どうやって降りるかな」

「ここを降りるのか?」


 リルラも心配している。


「セイジ様、下が真っ暗で何も見えません。

 このまま降りるのは、危険なのでは?」

「そうだな、先ずは下がどうなっているかを確かめないと……」



 俺は、インベントリから取り出した適当な木の棒に、いらない布切れを巻きつけ、キャンプ用の着火剤を染み込ませた。


「ヒルダ、これに火を点けてくれないか?」

「はい!」


 ヒルダが【着火】の魔法を使うと、即席松明は勢い良く燃え上がり、煌々と辺りを照らしだした。



「兄ちゃん、なんでわざわざ松明?

 それに、その明かりでも下まで照らせてないよ」

「まあ、見てなって」


 俺は、俺自身に付けていた【追跡用ビーコン】を、松明に付け直して、穴の中へ放り込んだ。



 松明は、数十メートル落下し、ボチャンと水に落ちる音がして、火が消えてしまった。


「あ、消えちゃった」

「下は水か! 参ったな」


「でも、火が消える前に何か見えたよ」

「確認してみるか」



 俺は、松明に付けていた【追跡用ビーコン】の映像を最初から再生してみた。


「セイジ! こ、これは何だ!?」


 いちいち驚いてくれて、照れくさいな。

 リルラだけじゃなく、ヒルダも驚いているみたいだ。


「これは、あの松明から見えた風景だよ」

「そんな魔法まで……」



 水に落ちる寸前で映像を一時停止すると、下の風景が見えた。


 穴の下は部屋になっていて、部屋の中は黒いドロドロした液体が満ちてしまっている。

 その液体が、どれくらいの深さかは、映像からは分からなかった。


 部屋の中には、黒い液体だけではなく、瓦礫のようなものも見える。

 形から推測するに、元は階段だった物じゃないだろうか?


 ということは―

 この穴には、前は階段があって、何らかの原因で崩れてしまった状態なんじゃないだろうか?



「なんだか、下は危なそうだね」


「あの瓦礫の上に【瞬間移動】すれば、降りられるかも」


 女の子を行かせる訳にはいかないし、下の瓦礫の上に大勢で乗ったら、崩れちゃいそうだしな~

 先ずは、俺一人で行ってみるか。



 俺は、心配そうなみんなに見送られて、

 ひとり、【瞬間移動】で穴の底へ移動した。


~~~~~~~~~~


 穴の下に【瞬間移動】すると、

 一瞬、足元の瓦礫がガタリと揺れて、転びそうになってしまったが、なんとか転ばずに耐えることが出来た。


 しかし、この匂いは何だ?

 なにやら、油っぽい匂いが漂っている。



 【白熱電球】で光を灯し、あたりを見回すと―

 そこは広めの部屋で、部屋全体が黒い液体で床上浸水している。


 ちょっと先を見てみると、出入り口が見える。


 先ずは、あの出入り口を目指してみるか。


 俺は、インベントリから適当な木の棒を徐ろに取り出し、黒い液体に挿してみた。

 棒は直ぐに床に到達し、水の深さは20cmくらいであることが分かった。


 これなら歩いて行っても大丈夫そうだ。



 インベントリから『長靴』を取り出して履き替え、棒で足元を確認しながら、出入り口に向かった。



 出入り口までたどり着き、部屋から出ると―


 通路が続いていた。


 見た限り、通路は分かれ道が何箇所かあり、部屋の入口と思われる場所も複数見える。



 隠し通路が有るだけなのかと思ったら、完全にこれは『地下一階』だな。

 地図を確認してみると、正体不明の敵が広範囲にわたって分布している。



 ダメだこりゃ。

 一旦戻って、みんなに状況を伝えるか。


~~~~~~~~~~


 俺は、【瞬間移動】を使って、みんなの所へ戻ってきた。


「兄ちゃん、臭い!」

「第一声がそれかよ!!」



 俺は、長靴を履き替え、【水の魔法】で長靴の汚れを洗い流してからインベントリにしまった。


「兄ちゃん、まだ臭いよ」

「仕方ないだろ、臭い水の中を歩いたんだから」


「セイジ、下はどんな様子だ?」



 俺につけていた【追跡用ビーコン】の映像を流しながら、状況を説明した。


「セイジ。つまり、地下一階を攻略する必要があるということだな」

「そういう事だ」


「兄ちゃん、私、臭い水に浸かりながら歩いて行くなんて、嫌だからね!」

「お前な~」


 まあ、俺としても、あの場所にエレナやヒルダを連れて行くのは、ちょっと嫌だな。


 後は、普通の長靴じゃなくて、ズボンと一体化している長靴が欲しいところだ。

 日本で用意してから再戦するか。



「まだ早いけど、今日はこれくらいにして、

 続きは、また来週にしよう」

「来週?

 明日も攻略するのではないのか?」


「水の中を進むための装備が欲しい。

 あと、俺たちは、別の仕事も持っている。

 毎日、冒険者をする事は出来ないんだ」

「そうか、それなら仕方ないな」


~~~~~~~~~~


 『日の出の塔』を出ると、

 外は、夕日が赤く染まっていた。


 冒険者ギルドへ到着すると、中は冒険者達でごった返している。


 受付で、魔石を売却し、

 落とし穴の下に地下一階が有る事、

 4階へは地下から行ける可能性がある事、

 などを報告したら、えらく驚かれてしまった。


 どうやら、俺たちが遭遇した魔物も、けっこうレアな魔物ばかりだったらしい。



 戦利品売却と地下発見の報酬は、以下のようになった。


【大ネズミのしっぽ】3G×50


【大ネズミのしっぽ+1】10G×2

【土強化魔石】10G×2


【闇大ネズミのしっぽ】30G

【闇強化魔石+1】30G



【狐の尻尾】3G×20


【闇狐の尻尾】50G

【闇強化魔石】10G


【狐の尻尾+1】20G×2

【土強化魔石】10G×2


【雷狐の尻尾】100G

【ビリビリ魔石】10G


【氷狐の尻尾】300G

【氷狐の毛皮】500G

【冷やし魔石+1】500G



【ゴブリンの耳】3G×20


【魔法使いゴブリンの耳】30G×5

【冷やし魔石】200G×5


【ボディビルゴブリンの耳】500G

【微光の魔石+1】500G


【ホブゴブリンの耳】200G

【土強化魔石+1】50G


『地下一階の発見』1000G


 合計金額は、5300Gだった。



「さて、俺たちはこれで失礼するけど、

 リルラは、まだこの街に居るのか?」

「ああ、もうちょっと魔石を確保できるまで、この街に居る」


「じゃあ、また来週来るよ」

「ああ、待っている」



 名残惜しそうなリルラに別れを告げ、俺達はヒルダを連れて、日本に帰国した。


日の出の塔攻略編、第一部、完?


ご感想お待ちしております。

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