139.ヒーロー
バスは、一路カイロに向かって砂漠を進んでいた。
「ねえ、あなた中国人?」
近くの席に座っていた、黒人のセクシーなお姉さん4人組が、英語で話しかけてきた。
しかし、この人達、どことなく魔法使い部隊の4人に似ている。
「いや、日本人だよ」
「日本人! 私、日本人大好き!
日本人ってとっても可愛いんですもの!」
「ねえ、あなた観光出来てるんでしょ?
私達と一緒に行かない?」
なんだろうこの人達は、俺が日本人だと知った途端に、グイグイ迫って来はじめた。
ヤバイ、これはきっとDT狩りに違いない。
助けを求めてナンシーに目を向けると―
ナンシーは寝たふりをしている。
よく見ると、細かく肩を震わせて、笑いをこらえている。
おのれナンシー。
そして、無慈悲にも、DT狩り集団の苛烈なお色気攻撃が続く。
もうダメかと思った、その時だった。
エレナが、果敢にもDT狩り集団の前に立ちはだかった。
しかし、DT狩り集団の睨みつけ攻撃を受けると、
エレナは俺の後ろに隠れて、ブルブル震え始めてしまった。
だが、DT狩り集団はエレナのそんな姿を見て、急に冷めてしまったらしく。
「可愛いガールフレンドと一緒だったんだね、ごめんね」
そう言ってDT狩り集団は、バイバイと手を振りながら自分の席へと戻っていった。
「エレナ、助けてくれてありがとう」
感謝の気持ちを込めてエレナの頭をナデナデしてあげると、エレナはニッコリ微笑んだ。
「ナンシーは、なんで寝たふりをしているんですか!」
「バレたか」
「『バレたか』じゃないですよ!
肩がプルプル震えてましたよ」
「いやー、セイジの反応が面白くて、つい」
何が『つい』だ、まったく!
そんなに寝たふりがスキなら、ずっと寝てろよ!
そんなことを考えていた瞬間!
キーーーー!!!
バスがブレーキを掛けて、急停止した。
その拍子に乗客が全員バランスを崩してしまい、
ナンシーは、頭を強く打って、
気絶してしまった。
一体、何ごとだ!?
「エレナ、ナンシーを見てやってくれ」
「はい!」
ナンシーをエレナに任せ、前方を見に行くと―
バスの進行方向に、小型のトラックが道を塞いでいた。
おそらく、横から急に出てきたのだろう。
事故か?
しかし、ここは交差点ではない。
どういう事だ?
様子を見ていると、
小型トラックから、銃を持った覆面姿の男達が出て来た。
道の両側からも、隠れていた奴等が次々と現れ、
バスは、総勢20人近い覆面の男たちに囲まれてしまった。
「我々は、○○だ!
このバスは我々の支配下にある。
男は、人質にして、身代金の要求を行う。
女は、奴隷として、売りさばいてやる。
抵抗するものは命がないと思え!!」
うわ! 噂のテロ集団だ!
これは、魔物よりたちが悪い。
バスの乗客たちは、恐れおののいている。
さて、どうする?
殺るか、逃げるか、どちらかだが……
さっきのDT狩りの人たちも、奴隷で売り飛ばされてしまう事を考えると、だいぶ寝覚めが悪い。
かと言って、全員を連れて逃げるのはムリだし。
やるしか無いか……
これじゃまるで、正義のヒーローみたいだな。
ピコン!
いいことを思いついた!
「エレナ、ちょっとの間、ナンシーを守っててくれ」
「はい!」
俺は、バスの椅子の影に隠れて、準備をしてから、
小型トラックの上に【瞬間移動】で移動した。
「お前たち! そこまでだ!!」
「何奴!」
覆面男たちは、一斉に俺の方を向いた。
「我こそは、『ジャパニーズ忍者マン』!
悪事は俺が、許さない!!」
うわー
やってて、自分で恥ずかしくなってきてしまった。
「おのれ、何処から現れた!?
構わん、やっちまえ!」
あれ? なにげにウケてる感じなのか?
次の瞬間、俺のいた場所に銃弾が雨アラレのように、襲いかかった。
まあ、俺はもう【瞬間移動】で別の場所に居るんだけどね。
「くそう! 消えやがった!」
「ここにいるぞ!」
「うわ!」
俺は、奴等のちょうどど真ん中に出現していた。
「やれ! やっちまえ!!」
え? ちょ、まっ……
激しい銃撃戦の音が止むと、
そこには……
傷つき倒れた……
10人の覆面男たちが。
同士討ちしてんじゃないよ、バカが!
「おのれ!!」
怒り狂った10人の覆面男たちは、
銃を捨て、ナイフで襲いかかってきた。
10人の覆面男と、『ジャパニーズ忍者マン(笑)』が交差する。
銃が効かない相手に、ナイフで勝てるわけ無いじゃん。jk
限界まで手加減した手刀やパンチと、インパクトの瞬間に叩き込んだ電撃によって、
10人の覆面男たちは、同時にぶっ倒れた。
「「わーーーー!!!」」
パチパチパチパチ
それを見ていた、バスの乗客たちから歓声と拍手が巻き起こった。
俺は、覆面男たちの武器を奪い、インベントリにしまってから、
徐ろに、地面に転がっていた石を一つ拾い、
【電気分解】で、石を細かい粉に変化させ、
【風の魔法】を使って、爆発で煙が上がったように、粉を撒き散らした。
そして、その煙に紛れて、
小型トラックの裏に隠れて、素早く着替えをして、
バスの中へ【瞬間移動】で戻った。
よし!
どうやら、乗客は全員、前方に気を取られていて、
気づかれなかったようだ。
俺は、バスの前方に集まる乗客の所へ、何食わぬ顔で近づき。
「一体何があったのですか?」
と、とぼけて質問してみた。
「あなた、見ていなかったの?
『ジャパニーズ忍者マン』だって!
煙が上がって見えないけど、あそこに居るのよ」
「ソウナンデスカ!?
どんな人なんだろうなー」
我ながら素晴らしい演技だ、
これなら、俺とは分かるまい。
しばらくして、煙が収まると、
そこには誰もいなかった。
「「き、消えた!!」」
乗客が混乱する中、俺は運転手に
「今のうちに、ここから離れましょう」
と、提案した。
「そ、そうだな」
運転手は、バスを発車させ、その場を後にした。
なんか変な話になってしまった。
ご感想お待ちしております。




