138.悪影響
アヤを短大に向かわせ、
俺とエレナは、昼過ぎまで仮眠を取った。
仮眠をとってすっかり元気になり、【瞬間移動】でエジプトに戻ると、
エジプトは、朝の7時になっていた。
子供たちは、ちょうど出かける所だった。
話を聞いてみると、近くの石切り場で働いているそうだ。
エジプト、石切り場……
ピラミッドでも作らされているのか?
「セイジ、おはよう」
しばらくしてナンシーは起きてきた。
「おはよう、ナンシー。
サンドイッチを食べるかい?」
「ありがとう、いただく」
俺とエレナとナンシーは、日本で作ってきたサンドイッチと紅茶で、エジプト時間的には朝食、日本時間的には昼食を食べた。
「ナンシー、これからどうするつもりなんだ?」
「まずは、昨日のケチャップ強盗の事を、警察に届け出て、
それから長距離バスでカイロまで戻って、
アメリカ大使館に行ってパスポートの再発行手続きしないと」
「そうか、じゃあ俺達もカイロまで付き合うよ」
「ありがとう、セイジ」
なんと!
ナンシーがハグしてきた。
ちょっと待ってナンシーさん、
30歳のチェリーボーイには、刺激が強すぎます!
ふと見ると、エレナがむくれて、ほっぺをふくらませていた。か、かわええ。
ナンシーも、それに気が付き、
エレナにもハグをしやがった。
ナンシーにハグされて驚き戸惑うエレナ。
これはこれで、かわええ。
ナンシーは、流石アメリカンだな。
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ナンシーと一緒に、現地の警察にやって来ていた。
昨日のケチャップ強盗について報告するためだ。
「それじゃあ、セイジ、行ってくる」
「じゃあ、2時間後にこの場所で待ち合わせだ」
ナンシーは手を振って警察署の中に入っていった。
ナンシーがいなくなると、エレナが急に話しかけてきた
「セイジ様、あの方はなぜ、すぐに抱きついてくるのですか?」
「あれは、ハグと言って、ナンシーの国の挨拶なんだ」
「あれが挨拶なんですか!?」
「ああ、国が違えば文化も変わってくるからね」
エレナは、何やら考え込んでいたが、
急に何かを決心した様子で―
「セ、セイジ様!」
「なんだい?」
エレナは、急に抱きついてきた!!
「エレナ!? 急にどうしたんだ?」
「あ、挨拶です!」
全く、ナンシーのせいで、
エレナが変なことを覚えちゃったじゃないか!
今度、寿司でも奢ってやることにしよう。
俺は、そのままエレナを、人気のない裏路地に連れ込んだ。
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俺達は、裏路地から一路『イタリア』へ飛んだ。
魔法で作った純金の塊を売るためだ。
なぜイタリアかって?
エジプトでは、現地通貨が紙切れ同然になっていて、
米ドル、ユーロ、日本円などの外貨がそのまま使われてるそうなのだ。
日本円を使ってもいいのだが、せっかくだから外貨も手に入れておきたい。
アメリカにはまだ行けないので、
ナンシーが立ち寄っていたイタリアで純金を売って、ユーロを手に入れようと言う作戦なのだ。
「ここは?」
「また別の国で、『イタリア』って言うところだ」
俺は【言語習得】でイタリア語を習得して、
金を買い取ってくれる店を探した。
ついでに、金の塊を【土の魔法】で形を整え、ネックレスに付いている十字架っぽい形にしておいた。
この方が、買い取ってもらいやすいだろうし。
見つけた店は、若干怪しそうな店だったが、
すんなり、3000€で買い取ってもらえた。
若干買い叩かれた感じはするけど、まあいいか。
お金が手に入った俺達は、スペイン広場でジェラートを食べようと思ったのだが―
スペイン広場での飲食は禁止ということらしく、
近くのジェラート屋さんで、広場を眺めながら美味しく頂いた。
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追跡用ビーコンでナンシーを覗いてみたところ、
まだ時間がかかりそうだったので、
俺達は、一旦日本に帰ってきた。
「おかえり、兄ちゃん」
アヤは短大から帰ってきていたが、凄く眠そうだ。
まあ、俺やエレナと違って、仮眠をしてなかったからな。
「これからまたエジプトに飛ぶけど、アヤはどうする? 一緒に来るか?」
「眠いから、やめとく~」
そういって、アヤは部屋に戻って寝てしまった。
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俺とエレナがエジプトに着いてしばらくすると、ナンシーが警察署から出てきた。
「どうだった?」
「とりあえず、届け出たけど。
荷物はまず戻らないと思う。
お金は準備出来た?」
「ユーロだけど、用意出来たよ」
「いいね、ユーロだったら、この先も使えるし。
それで、いくら貸してくれるの?」
「1000ユーロ位あれば足りる?」
「足りる足りる、大助かりだよ。
ありがと、セイジ!」
ナンシーは、お金を受け取ると、ほっぺにチューして来た。
だからDTにその攻撃は、オーバーキルだよ!!
エレナはエレナで、その光景を見て、またほっぺをふくらませている。
また、エレナが変な影響を受けてしまうじゃないか。
挨拶代わりにチューしてきたらどうするんだ!
ナンシーには今度、超高級寿司でも奢ってやることにしよう。
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俺達3人は、バス会社の建物にやって来た。
ここからカイロ行きの長距離バスが出ているそうだ。
俺達は、カイロまでのバスチケットを購入し、長距離バスに乗り込んだ。
「これが、バスですか。電車と同じくらい大きいですね」
「エレナはバスに乗ったことがなかったのか」
「はい、始めてです」
大興奮のエレナを乗せたバスは、予定より30分程遅れてカイロに向けて出発した。
市街地を抜けると、見渡すかぎりの砂漠が広がっていた。
流石エジプト、スケールが違うな。
「セイジ様、こちらの世界にもこんな場所があるんですね」
「ああ、俺も、見るのは始めてだ」
「あ、変な生き物がいます!」
何かと思ってみてみたら、ラクダだった。
「あれは、ラクダと言って、砂漠を旅するときに馬の代わりをするいきものだよ」
「砂漠を旅できる馬ですか、凄いですね!
魔物とかは出ないんですか?」
「流石に魔物は出ないよ」
俺は、笑って答えていたのだが―
まさか、地球で、あんな恐ろしい奴等に出会ってしまうとは、
この時の俺達は、知る由もなかったのだった……
まことにけしからん。
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